旅の幕開け
ようやく忙しい時期を終えたので、のんびり投稿できそうです。もちろんペースは遅れたりしませんので
ご安心を。
なんだかんだでオレングスへ入った僕は目的が別な為モルトさん達とは別れた。
お金は少しなら持っているが、いろいろと準備しないと置けないので
宿屋に行くことを考えるとどうにかして稼ぎたいところだ。グリーンウルフの時に返り血を
かなり浴びているので、着替えてはいるが少し気持ち悪いというのもある。
とりあえず荷物を(特にないが)置きに行こうと宿屋の場所でも聞こうと歩き回っていたら、
天と地の峡谷が封鎖されている話を聞いた。
しばらく封鎖は解除されないらしい、一応封鎖の件は知っているが問題はいつまで封鎖されているか、
これが少なくとも1カ月はかかるという。
その間どうしようかと悩むうちに一軒の宿屋を見つけた。
「神隠しの宿?」
僕が呟いたのは看板に書いてあったこの宿屋の名前。
変な名前だなと思いつつそれに惹かれた僕は入ってみることにした。
チリリーン
ドアについてあった小さなベルが鳴る。
「あ!いらっしゃいませ~。」
周りにところどころに置いてある机を拭いていた少女がこちらを振り向く。
「....いらっしゃいませ。」
遅れてこちらも同じように机を拭いていた僕より少し小さい少年がこちらを振り向き、
少し戸惑ってからぼそりとそう呟いた。
「こら!レン!ちゃんとあいさつしないと!」
「ごめん姉ちゃん。」
この二人は姉弟ようだ。
「えーと、部屋を取りに来たんですけど。」
少し切り出しにくかった。
「はい!1名様ですか?」
僕のだいたいの年齢を察してのことだろうか確認してくる。
それに対して首を縦に振る。
「わ、分かりました。少々お待ちください。」
そう言うと、少女はカウンターの奥へ行き、しばらくすると
鍵を一つ持ってきた。
「えーと、1、0、2。102号室ですね。あの角を曲がった先の突き当りより1つ手前の
部屋です。」
番号を読み上げた後道順を言ってから手渡してくる鍵をもらう。
一礼した後部屋へ行こうとすると少年が。
「アンタ、冒険者か?」
「こら!レン!」
「冒険者だったら?」
好奇心で聞いてみた。
「依頼を出す。」
恐らく契約依頼だろう。
契約依頼は、ギルドに置いてある一つ1000ローアする専用の依頼書を依頼者が買って、
内容を記入、その後、依頼を受けてほしい相手に(もちろん冒険者に)渡す。
ただ、これはあくまで口約束レベルともいえる。報酬は依頼人が渡すため場合によっては
増減したりもめ事が起きたりするときもあるが、ギルドは一切関与しない。
これを使うのは、ちょうど今で言う冒険者が緊急依頼などでほかの依頼を受けれないときに
依頼を頼むときに使うのが一般的だ。
「ふ~ん。でも僕は冒険者じゃないんだ、ごめんね。」
そう言い残して部屋へ向かった。
あれから5時間程。
少し返り血を浴びてしまった僕はオレングスに戻っている。
冒険者ギルドはギルドに登録してなくても一応素材の買取はしてくれる。
通常の7、8割ぐらいでだが。
それでも登録はしたくない。
今起きている緊急依頼のように半強制徴収は困る。
僕は帰りたいだけなんだから。
町に入った後、僕はギルドで買取してもらった。
まだ解体などは教えてもらってないのでこの辺りで一番強いはずの
ブラックパンサーの上位種、ブラッドパンサーを引きずって持って帰ってきた。
確か、マジックバックってやつだっけ?
あれは高いので今の僕にはこれを引きずってくるしかなかった。
ちなみにブラックパンサー、ブラックってついているけどほかに似たような色が違うだけの
パンサー系はいない。
ギルドから出てきた僕はため息をついた。
買取の受付でそれを渡して換金してもらうところまではまだよかった。
しかし、いきなり受付の人がギルドへの登録をしつこく迫ってきた。
こういう状況だからだろうか?しかし、こちらも拘束されるのは面倒なので
よそ見をした隙に全力で逃げたのだ。
今は疲れたのでゆっくりと宿屋へ向かっている。
「まあ、かなりの金額がもらえたしいいかな?」
僕が握る袋には10000ローア銀貨が80個ほど。
お金は銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨、金板。
銅貨は100ローアそこから位が増えるたびに一つ上のものになる。
だいたい1週間で大人一人当たり銅板5~7枚ほど使う。
「後は後ろをつけてくる輩がいなければなぁ。」
お金をジャラジャラ鳴らしながら小さく呟く。
だけど、[防壁]を展開しているので警戒はそれほどしていない。
「止まれ!」
前から小汚い服装を纏った男が二人。
勿論気づいていた。
後ろをつけてきた奴らも出てくる。
「痛い目に遭いたくなきゃ金をだ....って止まれって言ってるだろうこのガキ!!」
あんな奴らに[防壁]を破れるはずがない。
何もなかったかのように男たちを素通りして歩き続ける僕、だけどこのまま追いかけられるのも困るので、
逃げ出す準備はしている。
「くそっ!待ちやがれ!お前らも行くぞ!」
遂にはさびた剣を取り出し追いかけてくる。
僕は歩いているので勿論追いつかれてしまう。
リーダー格が一番最初にたどり着き剣を振り下ろす、が、剣は見えない何かに当たりはじかれた。
そう見えたはずだ。その光景に男たちは立ち止まり、
その隙に僕は駆け出し男たちを撒いた。
男たちを撒いた僕は神隠しの宿につく。
扉を開けると、まるで時間を遡ったかのように、最初に来た時と同じ場所で
少女とその弟のレンが机を拭いていた。
「あれ?」
「何かありますか?」
「いや、ずっと机をふいてるな~って。」
来た時にも思ったのだが、もう、拭く意味が無いんじゃないかってぐらい
机がきれいなのだ。つけに限らずカウンターも含めて。
「お客さんが少ないんでやることもないんですよ...。」
「悪いこと聞いちゃったな、ごめん。」
「あ!いいんですよ!」
「そういえば言ってなかったな、僕はレイ。よろしく。」
「レイさんですか...。あ!私はミナって言います。」
ミナとレンか。そういえばなぜレンはさっきあんなことを聞いてきたのだろう。
「それは色々ありまして、大したことじゃないので大丈夫です。」
あっ聞こえてた。
「あれ?そういえばレンは?」
「え!?」
慌てて周りを探し出した。
するとカウンターの奥からレンが来た。心なしか焦っている?
「大変だ姉ちゃん!父ちゃんが!父ちゃんが!」
「分かったすぐ行く!えっと、部屋に戻っていてください。では。」
そういうと、レンとミナはカウンターの奥へと走っていった。
気になるな.....。ついて行ってみようかな。
そう思い僕は忍び足でカウンターの奥へと向かった。
そこには、一人の男が横たわっていて、顔色も悪く苦しそうだ。
隠れて覗いていると、不意にレンが振り返った。
「あ。」
「♪~」
何事もなかったかのように口笛を吹いて逃げようとする。
「待て!」
捕まえられたけどね。
「はあ~その人は?」
かかわったことに公開しつつ聞いてみる。
「私たちのお父さん。」
「ふむふむ。何か病気にでもかかってるのか?」
「確か、ポイズンスパイダーの毒と、デットーリービーの猛毒にもかかってる。」
今度はレンが答えた。でも、どっちもただの毒なら。
「ただの解毒薬じゃ無理だった。たぶんポイズンスパイダーの毒には効きにくいからだと思う。」
「手はあるのか?」
「ハンターパンサーの毒爪の毒と、イージ洞窟の奥に咲く白桃花で解毒できるはず。」
「私達で毒爪の方は手に入ったけど、白桃花は....。」
「奥の方で咲くから危険すぎて依頼を受けてくれる人がいなかったんだ。」
イージ洞窟のうわさなら聞いた事がある。強力な毒も解毒できるのに、
毒を持つ魔物が住まう場所らしい、と。
「そこまで聞いたからにはやるしかないかな。
腕試しもしたいし。」
「アンタ強いのか?」
「さあ、どうかなぁ?」
「レン、今は頼むしかないよ、せっかくやってくれるんだから。」
「報酬は任せた。とりあえず明日ということで、じゃあ。」
と行きかけた僕だったけど。
「ごめん、お湯ってどこ?」
返り血が、まだ少し残っていることに気づき、体や服を洗うために
場所を聞きに戻ってきたけど、締まらないなあ。
締まらない感じではあったが、レイの新たな旅への幕が今上がり始まったのだ。
固有名詞紹介
鬼人
今では古の一族ともいわれて、レイの母は鬼人族の血だけを引いているという意味では、
最後の生き残りと言える。一応まだハーフならレイも含めた数十人程存在する。
滅んだ理由は、神術(巫術)を恐れたほかの種族からの総攻撃が原因。
当時は誰でも[神速化]などが使えたため、一人で数百人の活躍ができる兵ともいえた。
そのため、他のいくつかの鬼人を恐れる種族同士がこれ以上増えると困ると判断され。
数の暴力には叶わず、その数を大きく減らした。しかし、鬼人族もただやられたわけではなく、
およそ100万近くの連合軍を600人程でその9割も倒したのは、
とある鬼人が鬼人の掟を破ったこと
によって起きた出来事だと古い本には書かれている。その鬼人は鬼の人の身を持つ存在でありながら
神でもあり刀を一振りすれば大軍が吹き飛び、その鬼人の神術は詠唱なしで隕石を落とすとも
書かれている。