鬼人と精霊
もうすぐ2章前編は終わりぐらい?
「居合『桜吹雪ノ舞』」
レイとメディの合同技、声も重なっている。
グレイブに見るものを魅了し凍てつかせる桜吹雪と化した刀が迫る。
「爆炎燕返し!」
まるでその桜吹雪に相対するかのように、
桜吹雪に見るものを恐怖させ、燃やし尽くす炎と化した刀を振るう。
だが、攻撃回数が違うため不利に見えるグレイブは何もしないわけではない。
「陽炎燕返し」
揺らめく炎はその攻撃回数の違いをカバーする。
「メディ!」
『了解、氷柱!』
レイの声にわかっていたかのように手を上から下に振り下ろす。
すると突然グレイブの頭上付近にいくつかの氷柱が生成される。
しかしグレイブは無言で自らの頭上に自分を覆いつくすほどの火球を作り、
まるで傘のようにして防いだ。
「爆炎流星」
信じられないほどの速度で白く光る刀を斬りつけてくるグレイブ。
「っ!氷華!」
反射的に繰り出される刀。
刀同士ははぶつかり合う、グレイブの刀が一瞬凍る、が、グレイブの刀を中心に爆発し
大きく吹き飛ばされるレイ、しかしグレイブはその爆発で回りが燃え盛っている場所で
無傷で立っている。
「火ノ鳥」
グレイブが呟いたかと思えば、鳥の形をした炎がいくつも生み出されレイに向かう。
『氷壁!』
レイの前に分厚い氷の壁が生成される。
炎の鳥たちはそこへ迷いなくぶつかる、が、氷と一緒に蒸発していった。
「(防げたのはいいけど相性が悪いな。)」
炎と氷有利なのは炎なのは明白で苦戦するレイ、[桜ノ舞・鬼]のような鬼技は、
精霊化している現状だと消耗がきつい、だから使うことができない現状では
何をしても焼け石に水であり、これを打開するにはグレイブ爺さんにすら反応できない
ほど速い攻撃、又は、最初の火球を凍てつかせるほどの技ぐらいだろう。
『(今のアンタじゃ、私の力を完全には引き出せない、でも私を予備だせるぐらいの
ことをできるものがあるんじゃないの?)』
小声で話すメディ、するとレイは手をポンと叩きメディにこう言った。
「5秒ほど時間稼ぎしてくれない?」
『何を考えているか知らないど了解したわ。』
そう返すとメディは突然動いた。
『吹雪!』
そういうと視界が一気に悪くなるほどの吹雪が発生しグレイブを阻む。
「神よ、」
「やらせるわけにはいかんぞ。爆炎燕返し・飛」
『アンタの相手は私よ!氷花!」
「我が友の力を借り受け、」
二つの炎の斬撃は氷の花の花粉に凍り付いてしまう。
「厄介な、陽炎」
揺らめく炎はグレイブの場所を誤魔化す。
「丸見えよ!氷針!」
結局は炎、この吹雪のの中ではバレバレだ。氷の針はグレイブの所へ吸い込まれるように向かう。
「すべてを凍てつかせ、」
レイの詠唱は黙々と進む。
「流星群」
グレイブは意表をつくのをあきらめ、正面から堂々と行くことにしたようだ。
「無駄よ、氷壁」
「死を振りまく吹雪を願う。」
レイの巫術が発動一歩手前で、それを邪魔しようとするグレイブを阻む氷壁は
グレイブの火球で溶かされた。
そのままグレイブは白く光る刀をレイへと振るう....。
「巫術[死ノ猛吹雪]」
グレイブの刀を[防壁]で受け止めながら巫術を完成させたレイがそこにいた。
ゴオオオォォ!
レイを中心とした猛吹雪は一番近くにいたグレイブを凍らせ壁まで吹き飛ばす。
氷の壁を溶かし、遅れつつもレイに向かった火球も瞬く間に氷塊に変わった。
そして部屋の壁をも凍てつかせようとする吹雪はレイが止めさせた。
「メディ、出してあげて。」
レイがグレイブを指さしながら言う。
『はーい、っと、はい。」
レイに斬りかかろうとしてそのままのポーズで凍らされていたグレイブは氷を解かされ、力なく倒れた。
その後、レイがいつも持っている火の魔石でグレイブの体を温め、
ある程度回復するまでにメディには帰ってもらった。精霊を呼び出すのは
消耗が激しすぎた。そのため、レイも大幅に疲労していたのだ。
グレイブ爺さんが中々回復しないので僕のベットに寝かすことにした。
服とかも乾いていたからね。
外に出るとすっかり夜になっていた。周りが全然見えないからだ。
昼間は、電気を消した部屋レベル程度なら見える。しかし今は完全に目隠しされた
というほど暗く、本当に何も見えない。
「寝よ。」
なぜか突然眠たくなったので寝ることにしたが、僕のベットにはグレイブ爺さんがいるからどうしようと
思いながら寝室へ行くと、そこには初めて出会ったときのグレイブ爺さんの姿。
つまりふわふわ漂う炎がそこにいた。
「あれ?どうしたの?」
「あまりにも体力を奪われたからな。この姿に戻ったのじゃ。」
「ふーん、とりあえず今日は寝たいから帰って。」
本当に眠たいレイは手を追いやるように振る。
「儂も疲れたからな、お暇するとしようかのう。」
そういううと炎はふわふわと地下室へと向かった。
それを見て少し棒立ちになると、ベットに倒れ込みそのまま倒れ込んで目を閉じれば
意識は闇へと落ちていった。
あれから1週間
グレイブ爺さんとの修業はあれで終わりとなり、それからは自主練習になった。
正直やることが無くなったので、外で久しぶりの狩りをしたりしたが、
ほとんど[疾風一閃]で真っ二つにできるのであまり手ごたえがなかった。
なので、家にいた頃のように、メディにナイフに見立てた氷を作ってもらい
それで隠れてそれを投げて的当てにしたりした。
氷にはここでしか採れなさそうな毒草を使って毒を塗っておいた。
一応、神気を使った抜刀術も完成し。準備は割と万全だったりする。
後、グレイブ爺さんの昔話を聞いたりとかかな~。
「レイ~、準備はできた~?」
「万全だよ。」
「じゃ、行くよ~」
と意気込んではいるが、僕はビュルンデル方面の方で落ちて川に流されここにいき着いた。
つまりオレングスはそう遠くはないのだ。
さて、早く帰ろう皆の元へ。
後2~3話で2章前編は終わりかも。