巫術の真価
埋め合わせ投稿です。
「居合[猛吹雪一閃]」
この瞬間、僕は勝てるのではと思っていた気がする。気がするというのは
このあたりから僕はあまり記憶に残っていないから。だけどなぜ鬼人化が解けない?
「甘い。」
そう一言言いつつ、グレイブは何も刀に宿さず一刀両断。
そのままこっちに迫ってきた。
「結界[防壁]」
焦っていたため唱えて発動、しかしその透明な壁をいともたやすく両断するグレイブ。
「流星群」
さらに追い打ちをかけてくる、白く発光しながら少しぶれるほどの速度で何回も
斬りかかってくるグレイブの刀は、この薄暗い部屋ではまさに流星群だった。
「桜ノ舞・鬼」
かなり無理やりに体を動かし相殺する。刀を直していないため威力が足りない、だが鬼人化状態なら巫術を即発動できる。
「巫術[剣閃の軌跡]」
落ち着いていない今は失敗しないように名前だけ唱える。
レイの刀が淡く発光しだす。グレイブの攻撃を防ぎつつ、グレイブをその光の軌跡で追い詰めようとする。
しかし、そう思うようには追い込めない、がここは部屋であり動ける範囲が限られている。
それに僕はこの光には当たらない。だから次第に追い詰めていくことができた。
「ふむ、おぬしでもここまで儂を追い詰めたか、それなら儂もそれに応えるとしよう。」
そう言って何か唱えると光の軌跡がすべて消える。さらに目の前にはこの前の大きな火球、
しかも3個。
まずは1個でもと考え[猛吹雪一閃]を使おうとするが、グレイブが急接近、
そして僕の刀を弾き飛ばした。取りに行きたいが、火球に囲まれ取りに行けず
仮に火球をどうにかしても丸腰でグレイブを相手にできない.....。
「さあ、どうする?10秒待ってやろう、此処から反撃できるならな。」
何かないか、この戦況を覆せるものを。
「10」
結界を張っても火球と同時攻撃では防げない、完全に防ぐにはどちらか片方のみだ。
「9」
巫術なら何かあるか?
「8」
強化系統はダメだ、既に神速化を使っている。しかも他全部をかけてもグレイブには届かない。
「7」
刀に宿す類も無理だ。分身しても囲まれている今じゃ....。
「6」
巫術とはなんだ?どうすれば覆せる?
「5」
そういえば確か....。僕が6歳の時....。
「レイ、お母さんが教えた巫術はどうやって発動しているか知ってる?」
「かみさまにお願いする?」
コテンと首をかしげながら答えるレイ。
「そんなところね、でもね、巫術の本当の使い道は誰かに力を借りることなのよ。」
「?。かみさまにお願いするんじゃないの~?」
その問いにはお母さんは少し悩んだ後こう答えた。
「神様にお願いできるのは私みたいにこんな角が生えている人だけね。」
そう言って自分の二本の赤い角を指さすお母さん。
「でも僕は生えていないよ~?」
「え~と、レイは特別なのよ、角がなくても使えるのよ。」
「でも、僕もお母さんみたいなかっこいい角が欲しい!!」
目を輝かせお母さんの角を指さす。
「じゃあ、また今度教えてあげるわね。」
「うん!!」
1年後
ある日、7歳になったレイは散歩に出かけた。
と言っても周りはほとんど雪しかない雪山だが。
「今日はどこへ行こうかな?」
この頃のレイは散歩が好きで、天気がころころと変わる雪山でよく散歩をしていた。
しかし、このことはレイの両親は知らない、なぜなら日が昇る前に家を出るからだ。
ただこの日は運悪く吹雪いて帰り道がわからなくなり近くの洞穴で止むのを待っていた。
暇だったレイは少し洞穴の中を探索していた。
「ん?」
そこで見つけたのは洞穴の奥にあった祭壇ではなくそれの上に横たわる小さな空色の髪の少女だった。
身長は今のレイと同じぐらい、だいたい120いくか行かないかぐらいだった。
その背中にはきらきらと光る羽があったが、その光は弱々しかった。
「どうしたの?」
レイが問いかけると、羽の生えた少女は小さくこう言った。
「帰って。」
「帰れないよ。だって風がビュービューふいてて雪もいっぱい。帰り道もわからないもん。」
少女の呼吸は荒く苦しそうだ。レイが近づいてよく見ると、以前にレイが罹った口内凍結だった。
口内凍結とはその名の通り口の中がゆっくりと凍るのだが、この雪山特有の病気であり、
次第に息ができず死に至る。しかし、この山に住んでいれば2~3年で耐性がつき
ほぼかからなくなる。何らかの黴菌が口から入り耐性がなければ口だけでなくいろいろなところ
を凍らすという物で対処法は、この山にしか生えない薬草をそのまま食べさせる。
その後、温かいところにいるか食べれるなら何か暖かいものを食べさせるかだ。
「ちょっと待ってて。」
そう言ってレイは洞穴を飛び出し今までの散歩の経験によるもので、薬草を見つける。
ここまで3分、そしてスターラビットの巣の場所を探し見つける。これも散歩によるものかもしれない。
スターラビットを仕留め、最短ルートで洞穴に戻り、薬草を無理やり銜えさせる。
少女が薬草を食べ終わるまでの間にいつも念のために持ってきている炎の魔石で火をつける。
そのままだといずれ消えるのでそのあたりの木の枝を持って来る。
10分後
無事に少女は元気を取り戻した。
「どうして私を助けたの?」
「だって苦しそうだったから。」
即答で返すと少女は少し驚く、その後。
「あなたはいい人ね。」
「当たり前じゃないの?」
「見てわからない?私は氷精霊、人間たちがそれを知ると一斉に襲ってきたのよ。」
「ひょ、ひょうせいれい、だからどうしたの?」
また少し驚いた少女。
「あなたはほかの人間と違うのね、私を命がけで助けてくれた。ありがとう。」
「別にいいよ、でもどうしてここにいたの?」
「人間たちに追われてここに来たのよ。でも段々苦しくなって寝込んでいたの。」
「そうなんだ。あ!そういえば君の名前は?僕はレイ!」
少女は少し目を伏せた後こう言った。
「私は精霊、しかも下級。珍しい属性だけど強くはないから名前はないの。
精霊の名前は契約した人がつけるぐらいしかこのレベルの精霊ではそれしかないの。」
「じゃあ、僕とそのけいやく?ってやつをすればいいの?」
「!?....無理ねあなた魔法使えないでしょ?」
「......そうだけど。」
魔法が使えないことが当時のコンプレックスだったレイは少し機嫌を悪くする。
「魔法は使えなくてもいいけど、その属性、つまり今の場合だと、
氷属性の適性がないといけないの。失敗すればあなたは私が見えなくなるし、
魔法をずっと使えなくなる。それでもいいの?」
それを聞いてレイは考える。
「...........べつにいいや、一度でいいからやってみようよ!」
結果、契約は成功し、名前はメディにした。しかしその時はレイでは力不足のため
いつか会おうと約束し別れた。
「4」
そうだ、僕には頼もしい友達がいた。
「3」
今こそその力を借りるとき。
「2」
「友よ、我は願う、」
「1」
「契約に従い、その力を借りて、我もその姿になることを願う」
「0!」
「大巫術![精霊開放・氷精霊化]!!」
火球がレイへと飛んでいく。
しかしその大きな3個の火球は一瞬で凍って、地面に落ちて砕けた。
「な!?」
驚くグレイブ。
「久しぶりだねメディ、元気にしてた?」
『もちろんよ、本当に呼ぶのが遅いわよ!』
「ごめん、だけど君に釣り合う力はつけたよ?」
『私もちゃんと上級精霊まで登ったからね!で、凍らしたいのはあいつ?』
メディの声は僕と今合体というより僕が力の大部分を借りて、メディの本体は僕の横に
半透明になって表れている。そのため脳内に響くなんてことはなく、今もメディは
グレイブを指さしレイに問いかけている。
「うん、そうだよ、じゃあ始めよう爺さん。行くよ!メディ!」
「ええ!」
「居合『桜吹雪ノ舞』」
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