鬼人の末裔
今週はいけました。なるべく日曜の0時投稿を目指しています。
いけたら土曜?
「.....鬼人族の先祖返りさ。」
「ふ~ん。」
「え!驚かないの!つまんないな~。」
「だって、一時的にならなれるから。」
一応、レイの使える巫術の中に鬼人族になれるものがある。
全く制御できないので、使ってないが。あれになると破壊衝動を抑えきれない為、
レッサードラゴンには使えなかった。エインたちを殺しかねないからだ。
「まあいいや。それなら話が早いや~。君にはこれに修業してもらうよ~。」
「え!?これに!?」
レイが驚くのは無理はない、いったい誰がこんなふわふわ浮いているだけの
炎みたいなものに修業をつけてもらうと想像できるだろうか。
『誰がこれじゃ!』
「うわ!しゃべった!?」
「あはは!驚かせれたから満足だ。僕は用があるから抜けるね~。」
そんなことを言ってガロはあっという間に地下から抜けていった。
『さて、レイと言ったか?』
「あ、はい...。」
返事が弱々しくなったレイ。
『おぬしにはまずその力制御してもらわないといけない。』
「む、無理だよ。お父さんや、巫術を教えてくれたお母さんでも
無理だったのに。」
レイの両親が教えれなかったのは理由としてはいろいろあるが、
大きな理由は二人が鬼人族ですらなったことだ。
『儂は今ではこんな姿じゃが、以前はれっきとした鬼人族の元長じゃったからのう。』
「そうなの?」
『とにかく、おぬしにはまず鬼人化してもらう。』
そういって、炎が揺らめいたかと思うと、僕は不思議な異空間にいた。
瞬きするよりも早かったこの変化にまだついていけていないレイ。
『どうした?早くならんか。』
「だ、だって『いいからやれい!!』は、はいいいいいい!!」
渋るレイだったが、自称鬼人族の元長に怒鳴られ、詠唱を開始する。
「神よ、我は願う、祈りの対価に今は滅びし、古の一族、我の鬼人の血と魂を
呼び起せ!大巫術![鬼人化]」
巫術とは比にならない神気を要求される大巫術。それを
唱えたレイは、体の奥から湧き上がってくるような力を抑えきれず意識を失った。
レイが目を覚ましたのは1時間半が経った頃だった。
「ん....はっ!ここは、同じ場所?」
『やっと起きたか、早く起きんか、この戯けが。』
「う、うん。」
そう返事を返したレイが感じた感覚は頭に違和感を感じた事。
「ん?なんだこれ?」
頭に猛獣の牙のような尖ったものが二つ...。
大巫術[鬼人化]による一時的変化...。
そこから導き出せる答えは...。
「角!?どうして!?」
とっくに鬼人化は解けているはずなのに、[鬼人化]は
10分しかもたないのに。
『ここは大昔に鬼人族が使っていた儀式の間。その効果は、
鬼人族が使う巫術の大幅な増幅。だからおぬしは鬼人化を保っていられるんじゃ。』
鬼人族は巫術が使えた。理由は神への信仰心がこの世界に存在する種族の中で
総じて信仰心が大きかったから。ここでは神への祈りの場としても使われた。
祈りの力を高めようと色々やってみた結果がこれなのだが、それは気にしていないようだ。
『おぬしは今まで暴れまわっていたからの、そのせいで時間を無駄にしたが、
その分余剰な力が省かれたはずじゃ。』
「ほんとだ....。あまりにも大きかった力が嘘のように静かだ。でも、
僕の体にはまだ力が恐ろしいほど余っているけど、大丈夫なの?」
恐らく、今レイが全力で動いたらまた暴走してしまうだろう。
『何を言っておる。それをおぬしが操るための修業をやるんじゃ。』
と言って、炎は揺らめきだした。そしてボウォと大きく燃え上がった
と思えば、レイの13~16フラット程先に二つの赤い角が生えている
以外は普通の白髪のおじいさんが姿を現した。
「さて、この姿になるのも久方ぶりじゃな。ほれ、ぼうっとしてないで
始めるぞ。」
「え?え?」
まだ状況が呑み込めていないレイ。しかし、それに対し老人は。
「本気で動かんと死んでしまうぞ?」
と言い、どこからともなく取り出した刀で斬りかかってきた。
「っ!!!!」
ほとんど反射的だった。吹雪で[一閃]を繰り出して防ぐ。
此処に吹雪があるのは、ガロが言うには一緒に浮かんでいたとか。
そんな話はおいて置き、反射的な[一閃]じゃ防ぎきれないのは明白。
ましてや、自分よりはるかに強いものに対してなら尚更だ。
「ほれほれ、どうした?鬼人化してもこんなもんか?
まだまだやれるじゃろう?」
そういって次々と刀を振るってくる。
結界を張る暇さえくれない。ほとんど自分の勘で動き続ける。
何とか猛攻をしのいで作り上げた、ほんの小さな時間。ただその一瞬で
刀をしまい...。
「居合[桜ノ舞・鬼]」
レイが使い慣れている連撃技。[桜ノ舞]本来、抜刀術は一撃のみ。
当たり前だ。しかし、魔力によるアシストで速度を落とさず連撃を加えれる
ようにした技。
それを鬼人化用に変えた技だ。鬼人による上昇した力を使い、
アシストの分をさらなる速度上昇につぎ込んだ技なのだ。
赤き剣閃が走る。しかし、常人の目には映るどころか、気づいたら
細切れにされる程の速さ。それが四連撃、しかし、相手も鬼人。
あんなひょろひょろのように見える老人、だが、元長と自称する
彼の動きは伊達ではなかった。すべて軽くあしらうと、反撃もしてきた。
連続技は発動後の隙が大きい、たとえそれがコンマ1秒でも、
戦いの場においてそれは致命的と言える。
「つ、強い。」
予想外だった。どんな攻撃も防がれ、おまけに反撃も食らう。
鬼人化をまだ制御できないのもあり、攻撃が大振りとなって
回避も紙一重なのもつらい。そんなこんなで剣で...ではなく刀で
斬り結ぶうちに、あっという間に僕はボロボロになっていた。
せめて、巫術か結界が使えれば....。
「うむ、とりあえずはこれで大丈夫じゃな。初めてじゃ、こんなもんかの~。
さて、そろそろ終わりにするかの~。受け止めれんと死ぬぞ?」
そういって、老人は刀をしまい、詠唱を開始した。
邪魔したいところだが、生憎、僕は吹き飛ばされていたので不可能だ。
なので、結界を発動させようとする。しかし、老人が言った。
「結界はダメじゃぞ。本来結界は自分ではなく、仲間を守るもんじゃ。
絶対に使うんじゃないぞ。」
これから下手をすれば死ぬかもしれないのになんてことを、
と思うがある意味正論。鬼人化を制御しないと修業の意味がない。
諦めて納刀して、居合の構えをとる。相棒である吹雪の調子は
どうだろうか、そもそも刀に調子なんてあるのか、レイにしては
こんな時に考えるのは珍しい。しかし、まるでこれに答えたかのように
刀にほられた吹雪の文字がが淡い光を放っていた。
それを見た瞬間、頭に電撃が走った、もう魔法は放たれているが、
受け止めれると確信していた。そして、体が勝手に動いていた。
「居合[猛吹雪一閃・鬼]」
来週の方が投稿できるかわからないかも。