001 わたしの想い*
一部の国や企業が経済の力任せに、
破綻した国々を買い取った国境無き混沌とした近未来地球。
黒海に造られた都市ウォクトワイスでは、
敵対する民族主義運動ハーレイ・クラファの妨害に悩みながら、
アフリカを始めとする乾燥地帯にG.B.N.(グレートブルーネット)と言う
緑地化計画を進めていた。
安穏とした生活を飛び出し、衝動的に戦いへ身を投じたシャトレイサは、
やがて生々しい人間同士の感情に揉まれて、戦いの理由を見いだす。
その行き先を人は幸せと言うのか、不幸だというのか。
茫洋の感覚の海にあるシャトレイサ(主人公)と、
圧倒的な父権への葛藤にあって戦えずにいるクライン。
周囲は、彼らは出逢ってはいけなかったのだと言う。
しかし、それならば何故、人々はその危険性を排し、
彼らを助けようとしなかったのか――
この物語は、「優しさ」がテーマです。
『貴女は人殺しになったの?』
――必要なら、そうもなりますし、
人がそう思うのなら仕方がありません
『…仕方が無い……。貴女が人の命を手にかけるたび、
貴女の心も少しづつ死んでいくのよ。
でもそれは私のせいかもしれない』
――時代を言い訳にしないのですか
『母親とは、そういうもの。何かにつけて理由は、自分のせいか子供のせい』
――歪みを享受すると言うのですか
『痛みがあるなら、これが人なのよ』
――私は、朝が嫌いだった。
午前十時の若くて青い光は大好きだったし、
禍々しいほどの朝焼けも美しいと思ってた。
でも、空が白けてから日差しが自己主張を確定するまでの時間帯、
この世のあらゆるものが動き始める、
静寂が破られる瞬間の騒々しさが私には辛かった。
夜、一度太陽は死んで、昇ってくるのは再生の証だと言う。
何故、私は命が甦るその喜びを味わえないのだろう。
夜のような孤独な時間が続くなら、
いつまでも闇が留まればいいのに、
朝は確実に必ずやってくる。
どうせ――
どうせ朝が来ない世界を望むなら、
この煩わしい地球を脱出して、
途切れない低音の響きの中、
さんざめく星達の囁きを肌で聴きながら漂流したい。
私が願うのは、それだけだったと思う。
私は………
そう、この星が―――…
もしも
この身この骨が砂に朽ちたら
会いに来て下さい
それでも朝は美しいのだと