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ボーリングアビリティ  作者: 失恋たきこみ
8/20

出逢いまでの奏鳴曲(ソナタ)4

ミノア=クリフレイン過去編です。

私は選択を誤った。

私は燻って黒い煙を出すだけの灰の中に白く煤けたものが飛び出している型のない形をずっと見つめていた。

1時間だろうか。いや、もしかしたら2時間かも知れないと感じるくらいにその空間の時間は遅れていた。

いや、もしかしたら止まっていたのかも知れない。

私が情報を得ることを拒絶したのかも知れない。


誰かが私の肩を軽く叩いたが私はそれを認識できなかった。

私の目。

私の耳。

私の鼻。

私の口、唇。舌。

心臓、肺、脳。

私の全てが認識していたのは。


私の両親が死んだということだけだった。



私ーーーミノア=クリフレインは幸せな家族の中に生まれたと思う。

喧嘩もあるが特にすれ違いもなく、笑いあえる三人家族だった。

幸せという型にはまった優しい家族だった。

だからこそは甘えたこともあったし意地を張ったこともあって、それに泣いたことも笑ったこともある。

父は工事会社の部長を務めていた。

父は何にも熱心だったから仕事も熱心で上司や部下に信頼されていてよく家に会社の人を連れ込んできていた。

母は怒ると怖いけど普段は温厚で人と打ち解けるのがとても早い人だった。

父が会社の人を3日連続して連れてきた時には「あなた、ちょっとはミノアの事も考えてね。」と怖い笑顔をしていて、客が帰った後に父に正座させガミガミと叱っていた時があった。

私は会社の人が来ている時は部屋に戻っていなさいと言われ自分の部屋にいたのだがこっそり下に様子を見に行った時に楽しそうに談話しているのを見てばれてしまったことがあり、その時もやはり母に叱られた。

でも母が私の寂しかった気持ちを察して最後には優しく言葉をかけてくれたことが嬉しかった。

私はそんな優しい母と自慢の父が大好きだった。

この家族が大好きだった。


それはある日のことだった。

その日は空が暗くて小さかった私は少し不安になる天気だった。


私が「ご本が読みたい」といったところ近くの小さな図書館を勧められたがその時私はもうそこにある本には飽きていたので町から離れた図書館に家族で行くことになった。

そこは近くの図書館とは比べものにならないほど大きくて幼い私はそれの大きさに驚きを隠せなかった。


図書館は3階まであるとても大きなもので父が言うにはフォルムント国内でも中々に大きなものらしかった。

私と両親は3階にいて絵本を読んだり、ちょっと難しい本を読んだりしていた。その時はもう危険が迫っているなんて知る由もなかった。



『生中継でお送りします!こちらが先程火事の通報があった現場です!消火活動が行われているようですが一向に炎が収まる様子はありません!離れたところでも炎の激しさが分かるくらいに、熱気が伝わってきます!

近くの住民の話によると、最初に爆発のようなものが起こっていたようです!救助隊が中に入っていきますが中の人は無事なのでしょうか?引き続き中継いたします!』



熱かった。

火はあっという間に3階まで呑み込んでしまい火は獰猛に燃えていた。

スプリンクラーは何故か作動せず電気も消えて辺りは火の赤に包まれていた。

母は爆発の震動により倒れてきた大きな棚の下敷きになってしまっていた。

下敷きになった母の腕だけが棚の下から出ていて弱々しく震えていたのが幼い私の脳を掻き回した。


「ミノア!逃げろ!お父さんはお母さんを助けてすぐに逢いに行く!」


父は棚を一人で持ち上げようとしていた。

私は混乱の中父を手助けするべきか、それとも外にいる大人に助けを求めるからの二択に迫られた。


(いや……お母さん、お父さん!でも、私にあんな大きな棚を持ち上げられるの?お母さん、死んじゃやだよ……。)


私は不安になって父の方を見ると父は


「何をしているんだ!早く行くんだミノア!じゃないと手遅れになってしまう!」


私は父の鋼のように硬い、その炎よりも赤い血に刻まれた意思に背中を押されて


「わ、私!お外に行って大人の人を呼んでくる!」


私はそういって階段を駆け下りていった、私はその時後ろでバキバキと屋根が軋む音を背中に階段をひたすら駆け下りていった。


父は崩れた屋根の下敷きになっていたらしい。

私は心の中で広がる穴と黒い感情に押し潰されてしまっていた。

その後、私は母方の祖母に引き取られる事となった。私は祖母と何度か面識があったし良く喋っていたので祖母の家に居ても家出をしたりはしなかった。

しかし、外にも出ようとしなかった。

黒ずんだシミの目立つ天井がある部屋の隅で私は毎日膝を抱えて座っていた。

祖母は最初心配しつ良く話掛けてきたが、そっとしておいたほうが良いと思ったのかご飯を持ってきてくれるだけで私に心配そうな視線を向け部屋を出て行くようになった。

その時どんな料理が出たとか味だとかは憶えていなかった。


それから一週間ほど経ったある日、私の部屋のドアが勢い良く開けられた。

そこに立っていたのは一人の少年だった。

彼はこちらをじっと見ると


「君はいつも一人なのか?」


と聞いていた。私は答える気力もなかったのですぐに視線を逸らした。

私はそうすれば彼もすぐに帰ると思ったが彼の行動は予想外だった。


「じゃあ名前を聞こう」


と言ってきた。

私はずっと黙っているとそれでも彼は、普段何してるだとか趣味は何かだとか質問ばかりしてきた。

私は何故彼は私にこだわるのだろうとついに口を割った。


「……あなたは……誰?何で私に……こだわるの……」


彼は少し嬉しそうににやけると


「俺の名前はリク=アイネス。何でかって聞かれれば何かと理由もない。そうだな、君が可愛い女の子だったからかな」


私は驚いた。私はあまりそういうことに興味はなかったがいざ言われるととても心がむず痒い感覚だった。それは固く閉ざされた私の心に鍵を差し込むようだった。


「僕は名乗った。さあ、次は君の番だぞ」


すると私の目の前に緑色の光が浮かび上がった。


言わない

言う


とても簡単な選択だった。

私は心に決めて口を開いた。


「私はミノア…。ミノア=クリフレイン」


私はそこに心が温まるのを感じた。

あっ!投稿ペースガバガバマンだ!


ということでミノア=クリフレイン過去編でした。

今回はちょいと悲しいお話でしたね。こういう過去の話なんかでキャラに共感を持って頂けると非常に嬉しいです!


次回はレニー=オイコット過去編です!


次はいつ投稿だって?僕の投稿ペースに法則性を見つけるんだ!そうすれb……


次回もよろしくお願いします!

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