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ボーリングアビリティ  作者: 失恋たきこみ
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始まりの譚詩曲(バラード)2

カリン=クロモンド編です

「今回のターゲットは…うちの学校の生徒なのか」


私は手に持ったタブレットを操作しながら情報を確認する。


2年5組ミノア=クリフレイン。能力を使用した際の無能力者への干渉。


「一学年上なのね、まあとりあえず顔ばれするのはまずいからっと」


私はタブレットをスカートのポケットにしまうと羽織っていたブレザーの内ポケットから一枚の布を取り出すと顔を覆うようにそれを顔に被せた、たちまち布は変形し仮面に変わった。さらに内ポケットからミサンガのような紐を取り出すと喉元に当てた。それは首に巻きつき喉を軽く締め付ける、これはやっぱり慣れないな。


「あー、あー。うん、いつもの私の声じゃない」


声はさっきと変わり少し低さを帯びた若い男性の声のようになった。


私は準備を整えるとそのまま行こうとして立ち止まり自分の格好を見直した。


「忘れてた」


私は廊下に立っていたが踵を返し右手にある奥のドアに向かった。此処、ラークナーのビル内の部屋の位置ももう大体覚えたな。


私は部屋に入ると左にある『カリン=クロモンド』と書かれたロッカーを開けハンガーに掛かった黒いスーツの上下を手に取った。私は服を脱ぐとその手に取った服を着る前に目線を胸にちらりと向ける。


「ばれないのはいいけど。女としては複雑ね…」



(なによ!なによなによ……!)


ミノア=クリフレインは今日の昼休みにあったに腹を立てていた。その怒りの所為なのかミノアは通学路の寮までの道を綺麗な茶色のポニーテールを揺らしながらいつもより少し早く歩いていた。


(私に興味がないからって…!)


女としては下着を見られてもなにも思われないというのは自信を失われプライドを深く傷付くというものだ。しかしミノアはそれではまるで自分の下着を見て何か思ってほしいと思っているようじゃないかと急に恥ずかしくなりそれがさらにミノアの苛々を加速させた。


次第にミノアの歩くペースは上がっていき終いには全力で走っていた。目に涙を浮かべ俯いて走っていたミノアはもうすぐ寮に着くというところで地面に影がおりているのに気付いたが顔を上げた時にはもう遅くその影の主にぶつかった。


「きゃあ!」


どかっとぶつかり尻餅をついたミノアは鈍い痛みに尻を抑えながら自分がぶつかったものを見上げた。それは自分と変わらない身長の黒いスーツを着て不気味な白と黒の仮面をした人だった。


「す、すみません!前見てなくて……」


その人物はミノアが頭を下げているのをじっとだまって見ていた。仮面で顔が見えないから見ているのかわからないが頭を動かさずじっとミノアの方を向いていた。


「あ、あのぅ?」


「 ミノア=クリフレイン、着いてきてもらえる?」


「へ?」


仮面からくぐもった男性の声を出したかと思えばその人物はそう言った。視線を変えず。


その様子がミノアからすれば

機械的で。

奇怪的であった。


何故自分の名前を知っているのかという疑問を忘れてしまうほどに。


「此処では人目に付くし」


「私に何か?」


「そう、貴女に用があるの。出来れば何も聞かずに着いて来て欲しいのだけれど」


「は、はあ」


くるりと後ろを向きその男は歩き出した。ミノアは疑問に思いながらも彼に着いて行く事にした。歩いているうちに頭が冷え冷静になると一つの疑問が湧きだした。


(そういえば彼はなんで私とぶつかったのに転ばなかったのだろう)


彼の後ろ姿の黒いスーツには砂はついていない。転んでいたらコンクリートの上とはいえ砂がついていてもおかしくないのに。


ミノアの背筋に悪寒が走り嫌な汗がブワッと溢れ出た。足音がコツン、コツンという小気味良いものに変わった、しかし今ではその音さえ不気味に感じられた。


「此処でいいかな」


彼がこちらにくるりと振り返る。ミノアは見たりと足を止めた。周りをちらりと見ると廃工場のようだった。使われなくなり錆びた機械に埃が積もっている。


ミノアは足を後ろの引き震える声を絞り出した。


「わ、私に何の用ですか…?」


汗が何時間もかけて顎を伝っているように感じた。


「初めまして。ラークナーの能力者喰いです」


その瞬間ミノアはおどろいたような苦しいような表情をした。


「無能力者への能力干渉は禁止されてますよ。能力者の違反行為はラークナーによって管理されています。よって罰を与えましょう。やり方は野蛮ですが、これが私のやり方で黙認されてるんで」


能力者喰いは淡々と言葉を紡ぎ少しだけ足を開いた。ミノアは能力者喰いが目の前にいるということに動揺しそれが動いたことに気がつかなかった。はっとした時にはもうそれは彼女の懐にいた。



「あぐっ!」

鳩尾に深く拳を叩き込まれ宙に浮き意識が朦朧とする。少しづつ意識がはっきりしてきて殴られた痛みが分かり始めたが私の中の疑問がそんな痛みも忘れさせた。


(私いつまで宙に浮いてるの?)


気付けばさっきまでいた廃工場の全体が見えるほど上空にいる。


私は焦り能力を発動させる。


(ここから無事に落下する方法!)


私の前に文字が浮かび上がる。


1.工場の屋根の鉄骨を蹴る。

2.何もしない。

3工場内の鉄柱を蹴る。


(何よこれ?!ええと…もう3でいいや!)


私は意識を工場内に集中し自分の落下点の右側に微妙に鉄柱が見えた。真下にはあの能力者喰いがいる。


私は工場内に入る前に膝を曲げ工場内に入って瞬間に右側に蹴りを繰り出した。


ごいんという鈍い音がして私は左に逸れて飛んだ。飛んだ先に破れた砂袋の束があり吹き飛ぶ私の身体を砂煙りを巻き上げクッションとなり受け止めた。


「凄い判断力だわあー…ははは」


彼は驚きの中に何か焦り含んだ乾いた笑いをした。


痛む身体を起き上がらせ能力者喰いに向き合った。


「げほっげほ、危なかったわ…」


能力者喰い。噂通り…いや、以上にやばい男だ。


瞬時に懐に飛び込む移動速度。

鳩尾を一寸違えず狙う動体視力。

私の身体を遥か上空まで打ち上げるパワー。


私と変わらないはずのその身体が大きく見える。それほどまでに実力の差を感じる。


「今の判断力は能力によるものかな。次に何をすればいいかわかる能力、とか?」


彼は探るようにそう口にした。


(私の能力を知らない?)


私の能力を知らないのにどうやって能力の干渉を見つけたのか……。そんな疑問を吹き飛ばすようにザリッという音をたてて彼は構えていた。


(ただ避けるだけじゃダメ、彼の攻撃から避ける方法!)


1.壁を蹴り跳ぶ。

2.砂を巻き上げる。

3.逆に向かっていく。


(これだ!)


私は膝を曲げ構えた。

一瞬彼の身体がぶれた瞬間に砂に埋めた手を身体を使って振り上げた。そのまま立ち上がり私は背中側の壁に向かって跳び壁を蹴って宙に舞った。飛び込んできた能力者喰いは私の姿を見失いぴたりと立ち止まる。


私は一矢報いようと身体を捻り真下に入る彼の頭にむかって回し蹴りを叩き込む。


しかし、気付けば私は投げられていた。

見切られた、超人的な動体視力によって。そして脚を掴まれ投げ飛ばされた。


「あがっ!」


私は投げられた先の不気味にひしゃげた鉄パイプに激突し重低音を響かせた。


地面にぼとりと倒れこみ身体が思うように動かない。


(逃げなきゃ。これはまずいわ。)


逆に冷静になれるほどのピンチだ、両手を使って起き上がろうと前を向いた時にはもう私の目の前に影が降りていた。顔を上げようとすると顎を蹴り上げられ私の身体がふわりと浮いた。私の足が地面に着くまでに3度ほど拳を打ち込まれ地面に足がつく瞬間に私のこめかみに踵が振り抜かれ脳味噌を揺らす。


(あ…もう、意識が……。)


私は吹き飛び壁にぶつかる瞬間に仮面を取った彼の顔を見ることができなかった。



「…ばれたかな」


ちょっと心配になったがもう開き直ってラークナーに帰ることにした。


私は布と紐を内ポケットにしまう際にスーツが汚れているのに気づいた。


「クリーニング代だけでも貰いたかったな」


私は廃工場を後にした。

色々立て込んでいて書けませんでした(苦し紛れの言い訳)

次回もよろしくお願いします。

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