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ボーリングアビリティ  作者: 失恋たきこみ
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始まりの譚詩曲(バラード)1

リク=アイネス視点です。

この星の大陸「ゾナージュステム地方」。そこは五大国と呼ばれる「フォルムント」「アーフヴァイク王国」「ザン帝国」「シュテイル連合国」「ヴィッセチャフツ」と言う名の5つの国で構成されている。この大陸の年は5期に分けられる。


エーゼテュ期、マルヴォラ期、セルコフ期、ラヴル期、そして現代であるガルフュンツィコ期。計2077年の間に多種族での戦争、交流、貿易、同盟などがあり今の体制を形成している。


今現在この五大国に存在する種族は元々いた者だけでなく大陸の海の向こうから来ている者もいる。


世界最古文化を作ったの人型種族である「ニィーラル」

尻尾や耳を持つ「ブェアーラス」の血が混ざった「ブルスイート」

大きさは種族内最小であり寿命は種族内最長である「ニュファリーン」

「ニィーラル」によく似ているがニィーラルより全体的に小柄で種族内で寿命が最も短く見た目の老いが最も遅い「リジンヅ」


この4つの人型種族だけでなく非人型である種族もいる。


見た目は獣のようだが二足歩行で言語を理解する獣族と呼ばれる「ブェアーラス」

見た目は「ニィーラル」や「リジンヅ」によく似ているが一時的に大きな羽根が生えたり鋭い牙が生えたり見た目が著しく変化する「ディフェール」


この様に多くの種族が移り住み形成しているのがゾナージュステム地方である……か。


「ふっ……」


思わず軽い笑いが出てきてしまった。授業で聞くと全くもってつまらない話が自分が興味をもって調べるとこんなにも面白いのか。この俺に教養などはいらんとは思っていたが趣きというものは中々面白いな。


「まあ、この俺に必要でないものには変わりないな」


持っていた本を閉じもとあった場所に戻した。歴史というのは感慨深いが終わったこと故に単純かつ簡単だ。


「この俺を満足させる難題がどこかにないものかな」


「それは次の期末テストだ、アイネス」


不意に話掛けられ後ろを振り返るとそこにはびっちりとスーツを着こなし眼鏡を掛けたいかにも厳格そうな女性が立っていた。この女性の名はステラ=ゴルガモデッチ。俺のクラスの担任教師だ。


「ステラ先生貴女が図書室なんて珍しいですね、今日は何の御用で?」


「それはこちらの台詞だ。貴様のような不真面目かつ問題児である生徒が何故図書室にいる。また女子のパンツでも覗く気か」


「図書室で女子のパンツとか言わないで下さいよ、恥ずかしい人だなぁ。それに俺は貴様ではなくリク=アイネスという名前を持っているんですよ。しかもこの俺のことを不真面目で問題児だなんて失礼ですね」


「パンツを覗くことを否定してないがそれは肯定しているとみていいのか?」


「パンツって……この間のアレでしょう?アレは別にパンツ見ようと地面を這っていたわけじゃありませんと何回言えばわかるんですか」


「まず地面を這うことがないからな、理解は出来ん。故にアイネスの意図を汲み取ることが出来ん」


まあ、俺の天才的な発想や意図を凡人が理解することが不可能だろうから最初から期待はしてないさ。


「まあ、この間のアレに関しては少しだけ俺に非があったことは認めますよ」


「また珍しいな自分の非を認めるなんて。だが彼女に関してだが、まだ学校に来てないらしい。幼馴染みなんだろう?家に行ってみたらどうだ」


「あいつは寮生でしょう。女子寮には流石に俺もはいれませんよ」


「実家は……居ないといっていたな。もしや……いや、まさかな」


ん?今なんか言ったようだが。俺に聞こえるように喋って欲しいものだな。


「何か言いました?」


「お前もだが、あいつもユークだろう。最近噂されている能力者喰いに襲われているんじゃないかと心配になってな…」


能力者喰い。


この五大国に特殊能力者が大量発生した際に突如として対特殊能力者組織として世の中に出てきた「ラークナー」という組織の中でも一番有名な組員である。


能力者喰い本人は無能力者であり無能力者にユークの能力が干渉した際に能力者を暴力で裁くという。都市伝説のように噂され、男説や女説だけでなく本当は能力持ちだとか能力を無効化する何かを持っているだとか、挙げたらキリがないほどの噂をされている人物である。


「しかし、能力者喰いが居たとして学校での出来事までは把握していないんじゃ?」


もし把握していたとしたらそれはもうストーカーとかそういうレベルだからな。


「まあ、あの子は強いから大丈夫だと信じたいが」


「強い?」


「強いだろう。少なくともお前よりはな」


「この間のアレについては俺が女の子には本気出さないという自分のルールがあったからであ……って……」


不意に窓を見た俺は言葉を失った。

絶句。

ただ絶句。


窓の外には俺の幼馴染みであるミノア=クリフレインが遠くからでもわかる位にボロボロの状態で校門の前にへたり込んでいた。


「ん?どうし……た……ってクリフレイン?」


先生も気づいた様で目を見開きミノアの状態を確認すると図書室から飛び出し一目散にかけて行った。俺は何か重い物を背負った様な感覚を受けその場から動けなかった。



ミノアが言うにこの間のアレの次の日の登校中に襲われたらしい。例の能力者喰いに。その日から次の日まで気を失っていて今日気が付いたようだ。


「髪が短くて顔は仮面の様な物で隠していたからわからなかったけど多分あれは男だと思うわ」


「根拠はなんだ」


「身体能力がとんでもないのよ。私と能力者喰いとのアレは戦闘というより一方的な奴の暴力だった。あれが女性の身体能力だとは思えない。それに黒いスーツみたいなのを着ていたし。それに声を聞いたんだけど私達と同年代かそれより下くらいのかなり幼さが残る声だった」


「クリフレインが狙われたのはやはりこの間のアレで?」


先生が消毒液を脱脂綿に付け、ミノアの頬に当てがいながら聞いた。


「いたた…。はい、奴はそう言ってました」

「じゃあもしかしたらアイネスも狙われる可能性があるかもしれないということか」


その言葉を聞いた瞬間、俺の身体から血の気が引いた。馬鹿な、この俺が恐れをなしているというのか…?ありえない。俺は絶対的強さを持っているはずだ、ミノアがやられたからと言って俺が敗れる筈がない。


「それはちょっと考えにくいかと思います。あの時奴は私に『無能力者に対する能力での干渉』と言っていました。この間のアレの時リクは他の生徒に能力による干渉をしていなかったとおもいます」


この間のアレ。そう、あれは三日前のことだーーー。


「俺はミノアの幼馴染みであって他には別になんでもない」


「そ、そうよ!私達は唯の幼馴染みなんだから!全くレニは……」


顔を赤らめごにょごにょとミノアが何か言っているが聞き取れない。ふっ、この俺に惚れるのは当たり前だが恥ずかしがるとは、意外と可愛いところもあるじゃないか。


「ミノアも意外と可愛いところもあるじゃないか」


「心の声が漏れてるよリク君」


ニコニコ笑いながらこちらを向く彼女はミノアからレニと呼ばれている。本名はレニー=オイコット。セミロングの金髪が良く似合う中々上玉な女の子だ。

ミノアとは親友らしく良く話をしているのを見かけるが、今日はミノアと俺が親しげに話しているのをよく見かけるので二人はどういう関係なのか訊かれたのだ。


「まあ、強いていうならば俺がミノアの主人のような関係だろう。本当に世話のかかる奴だからなこいつは」


「はあ?どちらかと言えば私が面倒見てあげてるでしょ。どの口が私の面倒見てるって?言ってみなさい、リク=アイネス」


挑発的だな。それにこの俺に意見を言うなど本当に失礼な奴だ。


「ほう、俺に歯向かうのか、ミノア=クリフレイン」


「はいはい、やめなやめな。私達ユークに対立があったらあれでしょ。決闘だ決闘。丁度お昼休みだし時間もあるからね」


レニーが俺達の間に割って入る。


「ふん、それもそうね。一回あんたにはギャフンと言わせたかったのよ。丁度いい機会だわ」


「ふっ、それは負けフラグという奴だぞ、ミノア=クリフレイン」


「じゃあ場所は校庭ね。早くしないと時間きちゃうぞ」


俺達はレニーの後に続き校庭に出た。その馬鹿でかい校庭はこの学校の財力をそれだけで理解させるものだ。俺はその校庭ど真ん中の校舎寄りに立ちミノアと対峙した。


「時間がきたら私が知らせるからそしたら終了ね。では、お二方全力を尽くしてね」


レニーは面白可笑しそうに俺達から離れていった。

静寂。

俺達の間には静寂があった。しかしそこに入った最初の音は何か何かと俺達のことを覆う様に取り囲んだ野次馬達の声だった。刹那ミノアが周りに気を取られていた俺に飛び込んでくる。しかしミノア、それは悪手だ。俺は能力を最大限まで引き出す使い方をさせてもらうぞ。


「なっ……!」


瞬間、ミノアが止まった。周りも驚きと困惑の表情をしている。それは何故なら俺が地面に這いつくばっていたからだ。


「俺の能力はお前も知っての通り上から下へいくものの影響を無くす能力。つまりこうして這いつくばればお前の上からの攻撃は俺には届かん!」


決まった、筈なのに何故周りの人間やミノアは哀れみや軽蔑の表情をしているのだ。わからない、優秀たる俺には劣悪たる奴らの考えがわからない。ふん、今に見るがいい。この俺の偉大さを思い知らせてやろう!


「ミノアどうした、腰が引けているぞ。お前から来ないなら俺からいこうか!」


俺はミノアからの攻撃を警戒しながら這いつくばってミノアに接近するそしてその格好は自然とミノアのスカートの中のを覗いてしまう形になる。む、ピンクか。


「ピンクか」


思わず口に出してしまった俺の一言を聞くとミノアは耳まで真っ赤に染め涙目で眉を吊り上げ俺を睨んだ。


「っ!!こんっっの!変態!!」


ミノアが足を俺の頭に振り下ろし踵落としをかまそうとするがミノアの踵落としはまるで俺の頭に元々乗っていたかのようになんの衝撃も起きなかった。


「無駄だと言ったろう」


俺は頭の上のミノアの足を掴むと体制を変えミノアのもう片方の足を払いに行く。しかしミノアはまるで何をどうすればいいか分かっている様に足をうまく振りほどきつつ足払いを避けた、これがミノアの能力。


「複数の行動選択肢が脳内に浮かぶ能力か」


「ご明察。便利に見えるけど私の能力は選択肢を間違えると望まぬ結果になるから使いづらいけどね、あんたレベルなら充分よ!」


俺は体制を整えまた地面に這いつくばる姿勢に戻った。厄介だな、ミノアが選択肢を間違えるのを待つしかないのか。


「どうしたの、もう一度来なさいよ。そっちから来ないならこっちからいくけど?」


そう言うとミノアは迷いなく俺に飛び込んでくる。多分能力を使い選択肢を選んだのだろう、ならば此方は頭を使わせて貰おう。俺は息を思い切り吸って


「ミノアのパンツの色はーーー。」


と大きな声で叫んだ、当然ミノアは赤面し動きにブレが生まれる。


「「い、色は!?」」


周りの男共が次の発言を期待してくるが無視だ。

俺はミノアの隙を見計らいミノアに接近する。あ、誤解されているかもしれんから言っておくか。


「別にパンツを見たところでこっちは何も感じないからな、誤解しないでくれ」


その瞬間にミノアの顔の赤面が羞恥心から憤怒に変わったのが分かった。


「死ねっ!!変態屑男っっ!!!」


ミノアが身体を大きく捻り踵を蹴り上げた。


俺の能力は上から下へいくものの影響を無くす能力。下から上のものの影響を無くすことは出来ないのだ。俺は野次馬の方にうちあげられた、ミノアは迷いなく野次馬の男共を踏み台にし俺の身体を下から追撃してきた。

ミノアの一撃を背中に受けた俺はその後の記憶がない。

次回はカリン=クロモンド視点です。

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