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ボーリングアビリティ  作者: 失恋たきこみ
17/20

輪舞曲(ロンド)の始まり4

早いでしょう?(ドヤッ

儂らはアーフヴァイクパキシームが盗まれたことにより一時的に国への出入りを禁止した。儂はまだこの国の中に犯人がいると考えとるからの。ただし盗まれたことは公表しなかった。

まあ、ここで公表してしまうと混乱が起きてそれに乗じて犯人が逃げる可能性があった。また、異国から来た者が協力者かもわからんから入国も禁止した。


報道関連には既に裏から手を回してあるからの、入国が禁止されたとてそれを公表されんようにしてある。

ただ、今までアーフヴァイクパキシームを盗もうとするやつなど居らんかったからの、そこまで大胆な奴らとなると強行突破してくるかとそれぞれ四方に戦闘員を置いた。

お前さん達が逢ったのは西の護りに当たっておるダゴラとラウズ。他にも北にリリーグレー、南にファズー東にデルデとダルダが居る。

それが5日前。


そして昨日じゃが、儂は可愛い可愛い孫にも能力による犯人捜索を頼んでおった。儂の孫は植物と会話する能力。怪しい者の話などを聞いてもらってたんだが。


「お爺様!お爺様!」


「どうしたマリリンよ、お爺様と遊びたいのか?なら駆けっこしよう!お爺様は負けないぞ!」


「お爺様瞬間移動使うから駆けっこヤダ!違うの!誰か入ってきた……キャアッ!」


マリリンは何者かに後ろから抱き上げられておった。


「やぁ、ウォル爺。相変わらず長いお髭だね」


赤い。

紅い。

赤よりも紅い女じゃった。

入り口から差し込む夕陽に溶けるような紅さを持っておったその女を儂は知っておった。


「……何しにきたリーナ」


リーナ=ラットフラムガはよっこらせと座り、マリリンを自分の膝の上に乗せると何か含みのある笑顔を浮かべた。


「まだ夕方何なのに酒臭いね、あれだけ止めとけって言ったのに」


「ふん、はよう用件を言わんか」


儂が瓢箪の中身を呑むと木の器を取り出して「私も一杯頂こうかな」といって器を前に出してきた。

渋々器に酒を注ぐとグイッと飲み干した。


「アーフヴァイクパキシーム盗まれたんだって?」


「愚問だとは思うがの、何故それを?」


「たまたま耳に入っただけさ」


そう言って含みのある笑顔を崩さずマリリンの髪を撫でるとリーナは続けた。


「にしても入国拒否なんて大胆だね。結局気付かれちゃうし、誰かに遺跡を勝手に調べられちゃうかもよ」


「お前が入る時に誰かおっただろう」


「さあ?私は見てないね」


「あやつらは何をしとるんだ」


思わずため息が溢れたがよく考えればこの女にそんなものが通用するとは思えんかった。

リーナはクツクツと笑うと大きなリボンのついたハットをとってマリリンに被せ「よく似合ってる」と笑う。


「この問題を解決するのに相応しい子達を私が紹介してあげようか?というかもうここに招待したんだけどね」


「何?それは誰じゃ、バンガンか?ゾィーガイか?」


「いや、全然違うよ、一介の高校生だ」


儂はその言葉に疑問を抱く。

この女が儂に間違ったアドバイスや意見を出したことが無かったが、ただの高校生にこの問題が解決できるものなかのかと。


「なんだと?」


「明日来るよ、それも早い時間にね。5人組で可愛い女の子が二人居るからすぐに分かると思う。マリーちゃんの能力でも使って場所に向かうといい。断言しようか、彼らは確実にこの問題を解決するのに必要なピースを持っている。そして彼らはこの問題に挑まなければならなくなる」


そう確信するようにリーナは口角を不気味にあげる。いつの間にか陽が落ちていて真っ暗な中でもそれと紅く輝く瞳だけがはっきり見えた。


「まあ、きっとウォル爺も気に入ると思うよ。約1名」


そう言うと「私は帰るよ、お酒美味しかったわ」と言って帽子を被ると闇の中に消えていった。そこには酒と果実のような甘い香りが残っていた。



「ちょっと待って下さい」


ウォルフの話を聞いていたレニーが何か信じられないような驚きの隠せない表情を見せた。


「私も、昨日の夕方に逢っているんです。彼女と」


「ほう、それで奴は招待したと言っておったのか」


確かに信じられない話だ。そんな短時間にこの場所まで来れる筈がないのだから。


「儂の話が嘘だと?そう言いたいのか?アイネス」


「まあ、信じろというのがまず無理であろうな」


バタバタと何かが駆け上がってくる音が聞こえた。

するとウォルフと同じくらいの身長の黄緑色の髪をサイドで結った女の子が入ってきた。


「お爺様!お爺様!誰か来てる?」


「おお、マリリン。こちらはお客さんだよ、ご挨拶を」


「いらっしゃいませお客様、私はウォルフ=アグノメリーの孫。マリリン=アグノメリーです」


マリリンと名乗る小さな少女は丁寧にお辞儀するとウォルフの側にちょこんと座った。


「流石儂の孫じゃ!立派に挨拶出来たのお!」


よしよしとウォルフはマリリンの頭を乱暴に撫でる。

マリリンは少し照れ臭そうにしてから「お客様のお名前は?」と問いかけた。


「俺はリク=アイネス」


「私はミノア=クリフレイン。挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」


「レニー=オイコットです。ご丁寧にどうも」


「レダ=マイガスです」


「ブラフガ=ラブラントです。自己紹介が遅れてすみませんでした」


よいよい、とウォルフは手を振った。

それから瓢箪の中身が無いことに気付くと少し物寂しそうな表情をして俺に向き合った。


「で?答えを聞かせて貰おうか」


「俺たちは……」


そう言いかけてガタッ!とマリリンが立ち上がり背中の小さな羽がピンとはった。


「お爺様、誰かきたよ……!今度はリーナお姉さんでもお客様でもない……」


そしてマリリンはその幼い顔に恐怖の表情をはりつけてカタカタと震え始めた。


「女の人が四人……、グレーちゃんが……!」


「マリリン……!?」


そう言ってふっと身体から力が抜けその場にばたりと倒れた。

咄嗟にウォルフが抱えてそこに寝かせると静かに寝息を立て始めたためにほぅと安堵の溜め息をついた。


「儂は北に向かう」


そう言ってその場から一瞬にして姿を消した。


全く何がなんだかわからない。目の前に寝ている少女がこの空間に違和感と涼しさを運んでいるような感覚がより気持ち悪かった。みんな慌てたような表情にどうしたらいいのか分からないという困惑を含んでいた。


夏の暑さと慣れない浮遊感がべっとりと肌に張り付くような嫌な予感を引き込んでいる様な気がして俺は汗を拭った。

リーナの帽子、あれってボーラーハットって言うんですね(無知の晒し)


次もよろしくお願いします

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