輪舞曲(ロンド)の始まり3
話の始まりです。
「夏だ!」
「森だ!」
「古代文明だー!」
レダとブラフガとミノアはバタバタとはしゃいでいる。
この3人は時折一致してハイテンションになる点では実は仲が良いのではないかと思う。いや、実際仲が良いのであろう。
最初テンションが低かったレダとブラフガも今では目を輝かしている。
「こんなにテンション上がるのは久しぶりだな!」
「私もなんかこの森と遠くに見える遺跡っぽいの見てたらテンション上がってきたわ」
レダは黒い半袖のTシャツに薄茶色の長ズボンという実にラフな格好で、ミノアは白の半袖Tシャツの上に腕まくりした白の長袖シャツと紺のタイトスカートという格好でずんずんと森に向かって進んでいく。
黄色の半袖Tシャツにデニムショートに身を包んだブラフガも二人を追いかけていく。
「テンション高いねぇ。みんなお洒落だし……」
そうぼやくのは白のTシャツとチノパンを着て黒いキャップを扇ぐレニーだ。いや、少なくともレダはそんなことないと思うが……。
「早く行かないと置いてかれるぞ」
「うん、そうだね」
そう言って他の3人を追いかけるように俺とレニーは歩き出した。
この時の好奇心なのか、求知心なのかわからないような感情を後に後悔するようになるとは思いもしなかった。
☆
森に入って道らしき場所を歩いている途中、ガサリと音がしたかと思えばいつの間にか俺達の目の前に牛面の大男が二人立っていた。
「ここからは立ち入り禁止だ」
「引き返せ、異国の者共」
ブェアーラス、獣の見た目をした人種である。
何があったか知らないがこの先に断固として行かせないという表情をしている。
「ここから先はアーフヴァイク王国?だとしても立ち入り禁止なんて聞いたことないわよ」
ミノアは無視して通り過ぎようとするが二人の牛面はミノアの前に立ちはだかる。
「無理に行こうとするならこちらにも考えたがある」
一人の牛面がギラリと殺意を込めた視線をミノアに送る。
その眼光にミノアは少し怯むがすぐに立ち直す。
「能力を持たないブェアーラスが私達ユークに勝てるとでも?」
「試すか小娘」
ブェアーラスにはユークが存在しない。何故だかはわからないがそれは全てのブェアーラスに言えることだった。
ミノアに挑発された牛面は怒りを含んだ口調でそう言ってミノアと対峙する。
今にも一触即発だったが、何者かが牛面とミノアの間に割り込む。
「まあ待てダゴラよ、この少女らは儂が案内しよう」
そう言った人物は非常に小さく、ミノアの半分位しか身長がなかった。
ダゴラと呼ばれた牛面は驚いた様に跪いた。
「ウォ、ウォルフ様が何故この様な所に?」
「この者達は来客じゃ」
「そ、そうでありましたか。お客人、粗相をしてしまい誠に失礼致しました」
「へ?あ、はぁ」
急に現れたウォルフと呼ばれる小さな老人は俺達のことを客だと言った。
ミノアも突然のことに驚き目を丸くしていたが、俺の袖の端をグイグイと引っ張りレニーが話掛けてきた。
(もしかしてウォルフって、あのウォルフ=アグノメリーじゃないかな)
(ウォルフ=アグノメリー?)
聞いたことある様なない様な。
「ダゴラ、ラウズ、下がれ」
そう言われ跪いていた二人の牛面が姿をけす。
そしてこちらに振り返るとがははと笑った。
(あれだよ、アーフヴァイク王国の……)
「儂はアーフヴァイク王国の長をやっておるウォルフ=アグノメリーだ。待っておったぞお客人」
(国王様)
「「「え?うえええぇぇぇ!?」」」
その言葉を聞いてからレダとブラフガとミノアは驚きの声を上げた。
なるほど、あの二人が跪くわけだ。
☆
「まあ、くつろげ若造達よ」
俺達はあそこから連れてかれ、ウォルフが利用しているというツリーハウスに連れて行かれた。
「く、くつろげと言われましても。私はアグノメリー様に招待された覚えがないのですが」
「ウォルフで良い。それについては後で話す」
ウォルフは瓢箪を取り出すと木の器に何かを注いだ。
それを俺達一人一人の前に置いてウォルフはグイッと瓢箪の中身を口に運んだ。
「そう固くなるな、それでも呑んで力を抜け」
妙に酒臭いそれに俺は顔をしかめる。
「おい爺さん、俺達はまだ未成年だぞ。それより俺達をここに連れてきたのがどうゆう訳か聞かせろ」
みんなが俺の顔を驚いた顔で見つめた。
爺さんは最初驚いた様な顔をしてからがははと笑って俺を見た。
「お前さんは大分肝が据わっている様だなぁ」
「あんた何してんの!相手は国王なのよ!?」
「リク君早く謝った方がいいよ!能力使うからさ!」
ミノアとブラフガが何故か慌てた様子だが俺は二人を一瞥すると再びウォルフを見た。
「この国に立ち入り禁止とはどういう訳だ?今までそういうこともなかったし何か問題があったという話もない。何か公表出来ないことが起こったのか」
「うぅむ、鋭いな若造。名前は」
「リク=アイネスだ」
「アイネスか、覚えたぞ。その予想は当たっとるとしか言いようがないの、恥ずかしいことだが」
ウォルフはポリポリと頭を掻くと深刻な顔をして話を続けた。
「アーフヴァイク・ショルシュティーンの最奥にある祭壇の秘宝。アーフヴァイクパキシームが何者かに奪われた」
アーフヴァイクパキシーム……。
「ってなんだそれは」
聞いたことがない単語に疑問を抱くとウォルフは拍子抜けたように気を緩くした。
「なんじゃ、知らんのか」
「アーフヴァイク王国最古の遺跡にある秘宝で、ユークが最初に誕生したアーフヴァイク王国に深く関連性がある為にユーク誕生の秘密があると言われるものですね」
ミノアが少し前のめりになってそう言うとウォルフは軽く頷く。
「あれは相当強固な仕掛けで護られているはずなんだが、丁度一週間前に儂が遺跡に入った時そこにアーフヴァイクパキシームはなかった」
「それが俺達となんの関係があるんだ?俺達は犯人じゃないぞ、学校の教師に確認すればわかることだ」
ウォルフは軽く首を横に振る。
「別に主らが犯人だと言うためにここまで連れきた訳ではない」
「じゃあ何故だ」
ウォルフはグイッと瓢箪を再び口に運ぶと「あれは昨日のことだ」と話し始めた。
投稿ペースがガバガバなのは許して下さい。
文章力ガバガバなのは申し訳ありません。