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ボーリングアビリティ  作者: 失恋たきこみ
15/20

輪舞曲(ロンド)の始まり2

「いや、行かない」


彼ーーーリク=アイネスはそう答えた。

私は少しリク君に断られたことに少しショックを受けたが同時に「まあ、そうだよね」と納得をしていた。


「奇苺だかなんだか知らないが明らかに怪しすぎる。しかもそんな辺境の地に行く理由も無し、目的も無しじゃ行ったところで無駄足になる可能性が高い。この俺はそんな無駄なことに夏休みという優雅な休暇を取られたくはないからな」


「だよね」


私は昨日あったことをみんなに話そうと家に集めていた。

明らかに異常な体験はどうしても他人に話してみたくなるものなのは何故だろうか。


「レニ、私とリクがいることには別に何も問題ないんだけど……なんでこの二人が今日も居るの?」


訝しげにミノアが指差す方に居たのはこの間知り合ったレダ君とブラフガ君だ。

あの日からよくリク君と家に来るのだがミノアもとうとう耐えきれなくなったらしい。

今日は私がリク君とミノアを呼んだから確かになんでいるのかわからないけど。


「俺が連れてきたんだが悪いか?」


あ、リク君が連れてきたんだ。大体わかってはいたけど。


「別に悪くはないけど、レニに呼ばれたからてっきり3人か2人かと思っただけよ」


「そう思っていたならその質問はおかしいだろう。まるで2人が来ることを拒んでいるようだ」


「まあ、好ましくは思わないわ。約1名」


ミノアは鋭い視線をブラフガ君に向けた。

相変わらずブラフガ君のことは嫌いらしい。この間ちゃんと誤解は解けた筈なんだけど。


ミノアはため息を吐くと気をとり直したように顔を上げて告げた。


「私は行く方がいいと思うわ」


一瞬わけがわからなかったがミノアがアーフヴァイクに行こうと言ったのだというのが理解でき、ハッとすると私より早くリク君がミノアに口出ししていた。


「まて、今まで愚かな奴だとは思ったがここまでとは思わなかったぞ。俺達が行く必要も理由もないことだとあれほど言っただろう」


「あんた、地歴の課題の内容覚えているかしら」


地歴の課題?

私とリク君は顔を合わせあって首を傾げる。

ブラフガ君とレダ君は学校が違うので呑気にバスケ雑誌を読んでいた、ちゃんと順番に戻しといてよね……。


「土地の歴史を調べる」


「む、そういえばそんな内容だったな。それで俺はこの街の歴史について調べようと思っていたのだった」


「自分の住む街以外の街の歴史を」


「む、そうなのか?ならば図書館にでも行って……」


「現地に行って写真を撮ってレポート用紙10枚以上に!」


え。


「「え」」


リク君と声を揃えて驚いた。

現地?写真も撮ってこいって……。


「わかる?これは奇苺から与えられたチャンスなの。アーフヴァイクは歴史も長く唯一古代文明が残された国よ、それに彼女は助言のスペシャリスト、これは何かあるに違いないわ」


一番厄介な課題が片付いてよかった、とミノアは満足気に首を縦に振った。


「じゃあ、いく……?」


私はリク君の方を見ながら首を傾げた。

自分でも優柔不断だとは思うがなんか色々立て続けにありすぎて自分の判断だけでは心もとないというか、不安なのだ。

彼は少し考えるような仕草をしてからミノアの方を見て溜め息を漏らしたあとに私の方をみた。


「……行くか」


「じゃあ決定ね。明日の5:00レニ家、つまりここ集合!んで移動手段は電車とアーフヴァイクまでの馬車だからお金持ってきてね」


なんかもう準備の話してるし……。私は構わないけど家が集合場所になってるし。


ミノアが準備の話をしているとレダ君とブラフガ君がバスケ雑誌を読みながらリク君にいってらっしゃいと手を振った。

ミノアはそれを見ると少し眉をひそめた。


「何言ってんの。あんたらも行くのよ」


「「え」」


ミノアの口からとんでも発言が飛び出すと二人は声を揃えて驚いた。

二人は待て待てとミノアに言及する。


「俺たちは学校が違う。そんな面倒くさい課題出されてないから行く必要がないし、仮にいっても君達に何のメリットがある」


「あんたらの能力便利なんだもん」


「僕達は道具なの!?なんでミノアさんは毎回僕達のそんなに扱いが酷いの!?」


ミノアは少し不機嫌そうな顔をすると何か思いついたように企みを含んだ表情をした。


「あんたら、この間ご飯食べたわよね?ここで。あのご飯の食材とか私のお財布から出てるんだけど」


あれは4日前のことだったが、確かにミノアが食材を持ってご飯食べに来た日があった。


「あんたらの為に食材持って来たわけじゃないのに料理を食べておいて、タダで済むと思ってないわよね」


ミノアの剣幕に二人はゴクリと息を飲んだ。


「確かに断っても断らなくてもタダじゃ済まなそうだ」


「僕はあの日から女の子への憧れが薄まったのは必要以上の対価がいるからだと気付いたよ……」


「で?答えは?」


「「行かせてください」」


ミノアは満足気な表情を浮かべる。

ミノアが最近強情な性格から素直な性格に変貌しつつあるのは少なからずこの二人の影響があるだろうと私は複雑な思いを抱いた。



次もよろしくお願いします

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