聴こえ始める接続曲(メドレー)1
新章です!
決闘とはこの星最古の文明であるエーゼテュ期の約600年、正確には586年に渡る種族抗争が終わり平和が訪れた後に幾千の有力者達によって行われた娯楽である。
娯楽と言っても遊びではなく、金や価値ある物を賭けた命がけの戦いである。
その頃、特別な力を持つユークは種族としての権利を持たず、兵としてだけ扱われた駒であった。
しかし、戦がなくなり盤の上に乗るはずの駒達は皆、盤を奪われ存在を邪魔者扱いされた。
そして、雇い主の有力者達は金の無駄でしかないユークの使い道を考え、模索し、決闘という名のギャンブルを思い付いた。
それはたちまち広まり、娯楽として楽しまれ、決闘の為のフィールドも作られた。
しかし、17年後マルヴォラ期8年。
ユーク達による反乱、各国家で内戦が起こり、マルヴォラ期24年にその時一番力を持った国家であるザン帝国18代目帝であるダリア=アイグネイヴがユークの種族である権利を認め、それに他の国も便乗して次々とユークの種族である権利を認めていった。
そして決闘や内戦により多くの有力者が減ると貧富の差が開き、多くの国民が苦しい生活を送られる。
しかし、ダリア=アイグネイヴはその問題を解決するため、有力者の土地を国で一度回収して国民に分配、有力者には元々の土地の7割を返し、その内の3割の土地を畑や果樹園にするように法律を発布、収穫の2割を国に、2割をレギナブルと呼ばれる元々職がなかった者達の運搬業者に預け、他国に売りに行くという所謂貿易が始まった。
運搬業者達はアイと呼ばれるユークの監視者と共に他国に向かった。その際に河やデーグルと呼ばれる獣を引いて移動手段としていたとされる。
この頃のユーク達は命を賭けた戦いでなく、娯楽として決闘を楽しんでいた。
そして時が経ち現代。
今から6年前、ラヴル期481年。
アグノバードというユークの過激派組織が出てくる。
「ユークは今差別をされている、これでは昔犯したことの二の舞になるだろう」という内容を理由に中心都市であるクレスモントを中心に活動。それに便乗した若者のユーク達は都市での権力を手に入れるため抗争、その際の実力者達による決闘が発生した。
しかし、たった一年でその事件も収まった。
ラヴル期482年。突如出現した「ラークナー」と呼ばれる組織によってアグノバードは壊滅。それに便乗した若者達の多くが捕まった。
☆
「…………だから、エーゼテュ期に和睦して643年で終了。そこからはマルヴォラ期とされているわ……って。リク!寝ないでよ!私とレニがあんたのために勉強会開いっていうのに!」
という、無駄にでかい声に目を覚ます。
「んむ?何だ、話は終わったのか?」
俺はだらだらと長ったらしい話を続けていたミノアにそう確認を取った。
前の席の金髪のよく目立つレニーがあははと苦笑いしながらこちらを覗きこみ
「リク君おはよー」
とちょっと恥ずかしいそうに小声で言った。
ミノアがでかい声を出すから近くの住民の方のことを気にしているんだろう。まあ、自分の家だからな。
そう、ここはレニー=オイコットの家である。実家は別にあるらしく、両親はおらず一人暮らしだそうだ。
寮で暮らさないのか?と聞いたこともあったが
「リク君、暑さや寒さを耐えしのげばここの方が安いんだよっ」
と腕をブンブンと振りながら少し叱られたことがあった。(何故叱られたのかはわからん)
部屋には特に何もなく、清潔に使われている様子が伺える。
よくある女の子の部屋といった雰囲気ではなく、ベッドと今まで使ってきたのであろうバスケットシューズ、バスケットボールにバスケットの雑誌が本棚にずらりとあり、あとは今利用している机と台所に調理器具が置いてあるぐらいだった。
レニーの部屋を少し見渡していると、
「女の子の部屋をジロジロみて…この変態野郎」
などと心外極まりない言葉が聞こえてきた。
俺が変態とは本当に失礼な女である、ミノア=クリフレイン。
「ふっ、俺が変態だと?ミノア=クリフレインよ、分かっていないな。本当の変態を今から呼んでやろう」
そういって俺は携帯を取り出すとある所に連絡をした。
「呼ぶって誰を……?」
「あー、もしもしブラフガ。貴様今暇か?今ならもれなく女の子の部屋にこれるぞ」
『はい、もしもし……って、えっ!?あの、何処に行けば?』
「ちょっ!ちょっと!あんた何勝手に!」
「流石に私も、変態さんは困るかなぁ……」
「うむ、クレスモント第1区総合公園東口にて待っているぞ。今すぐな」
『ちょっ!待って!レダ君も』
俺はコートを羽織り携帯をしまった。
「ちょっと行ってくるぞ」
すると二人が頭を横に振り
「いやいや!勝手に連れてきちゃ駄目よ!?ちゃんとレニーに確認取らないと!」
「いやいや、ミノア!何その万が一私が変態をOKしちゃった時の確認みたいのは!しないから!万が一でも億が一でもしないから!」
俺は二人を無視して家を出た。
☆
公園に行くと一人の大男と小柄な男がいた。
「ブラフガ、それにレダではないか!」
「こんにちはリク君……じゃないよ!何で僕が呼ばれたのさ!確かに女の子の部屋に入れることは嬉しいよ?色んな妄想をしてしまうよ……って何言ってるんだ僕は!」
こいつはブラフガ=ラブラント。通称変態、ブラジャーブラジャーを略してブラブラだ。
「おう、リクも元気そうじゃないか」
こっちのはレダ=マイガス。顔がとにかく老けていてとても同年代には見えない。目が鋭いことを気にして前髪を伸ばしている。
二人もユークであり、2年前に学校でひょんなことで決闘したことで仲良くなった。今は違う学校だが二人は同じ学校なのでたまに遊ぶらしい。
「それでは向かうか」
俺はコートを翻し
「えぇ……本当に行くの?まだ心の準備が……」
「何処に向かうのか聞いてないんだが……」
という声を背に俺は来た道を歩き始めた。
☆
「困ったな……」
俺達はレニーの部屋の前で止まっていた。
「鍵を閉められてしまった」
すると中から声が聞こえた。
「絶対に開けないから!早く帰りなさい」
「ひぇっ!やっぱり許可取ってなかったんじゃないか!」
「で、どうするんだ?」
ふむ、それならば。
「ブラフガ、今日能力使ったか?」
「え、いや、まだ一回も使ってないけど……って、まさかリク君!」
「そのまさかだ」
「なるほど。それならば入れるな」
そう。入る方法はあるのだ。
ブラフガの能力は一日数回しか使えない。
その数3回。
そしてその能力とは。
「お前、女の子の部屋に入りたくないのか」
「うっ……!ご、ごめんなさい!部屋の鍵がたまたま開いてしまう幸運!」
そう、一日に3回だけ願った幸運が叶う能力。
これは物の消滅は叶わないがそれ以外ならば叶うという優れものである。しかし、その反動なのか、ブラフガ自身は物凄い不幸体質である。
ガチャッと音がなり、俺がドアノブを捻り引くとドアが開いた。
するとリビングからガタッと慌てる音が聞こえ
「ちょっ!えっ!?なんで!?」
とミノアが驚愕に目を見開いて飛び出してきた。
するとレダが
「リク、そこにいる子に俺は見えてるか?」
と聞いてきた。
俺はニヤリとして
「ああ、見えてる」
と答えた。
するとミノアは
「?あれ、なんでここにいるんだっけ?」
と、まるで元々鍵がかかっていなかったかのような態度をとった。
「では、入るぞ」
「お邪魔しまーす……」
「お邪魔します」
俺達三人はするりとミノアの横を通り家に入った。
「って、ちょっ待ちなさい!」
レダの能力は物体や現象を凡庸な物に変える能力。
レダは違和感の無いものにすると言っていたがそんなレベルではない。
その能力の影響を受けたものはそこにあることが普通で日常的にそういうものだと認識してしまうのだ。
「俺も女の子の部屋に入ったことがなかったからな、男の性だ。許してくれお嬢さん」
部屋に入るとレニーが部屋の隅でこちらを見ながらガタガタと震えていた。
「ミノアァァ!助けっ!変態は!変態だけは駄目!」
「なんで二人共僕の方を見るのさ!!あれぇ!?二人じゃない!?三人!?」
「いや、四人だな」
俺は後ろで俺の首に腕を回すミノアを指差す。
「いや!それは明らかにリク君見てるよね!?あれっ?墓穴掘った、なんかターゲットが僕に変わった気がする!」
ミノアがもう片方の腕でブラフガを捕まえ締め上げた。
女の癖に無駄に強い腕力を持っているな、本当に。
展開が早いですって?投稿が早いの間違いでしょう。
ということでリクの友達登場回でした。
リクにだって友達はいますよ。妄想癖が強いのと凄く老けた友達が、ね。
次回はこのまま話を続けていきます。
最初にした長ったらしい話はなんだったかですって?世界を知ってもらおうと……(1話でやれ)
でも、後々大事になっていくかも……。
ちなみに〜期と言うのは日本で言う平成とか昭和とかそういう元号とか年号とかそういうものだと思って下さい。
次回はいつになるでしょうね……。
感想や質問、アドバイス等どんどんしてって下さいね!(特にアドバイス)
ではここまで読んでいただきありがとうございました!次回もよろしくお願いします!