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5.琴の一日目 後編

 Q.RPGで効率よく稼ぐといえば?

 A.クエストを熟していくこと!


 [急募! 酒屋の配膳係募集 詳しくは酒の王様まで] [料理屋はざま 夜間の配膳・料理補助の求人 九の鐘~ 日給鉄貨四枚~七枚 まかないあります] [魔光草 十本一束鉄貨一枚 薬師ギルド] [屋台販売の求人 エリア2-2-1まで] [資料整理を手伝ってくださる方 エリア2-3-3 ランタナ] [雑貨屋 早朝店番を手伝ってくれる人募集 一の鐘前~三の鐘 日給鉄貨三枚]


 「うーん……」

 依頼が貼られている掲示板の前、連合支部のロビーにに琴はいた。

 この掲示板は、誰でも依頼を貼ることができる。そのため紙の材質、大きさ、書式、文字が一枚一枚バラバラで、さらに皆好きなところに貼っていくためごちゃごちゃした印象を受ける。

 琴はそんな掲示板に真剣な目を向けている。

 継続して働くのは時間の関係上難しい。さらに欲をいえばRPGっぽく冒険がしたい。

 あちこち彷徨わせていた視線が一枚で止まった。


 [魔物の素材買い取ります 連合支部]


 右下に貼られたそれを心の中で反芻した琴は受付カウンターへと体を向ける。

 「……もっと早く気付けばよかった」




 連合支部にて話を聞き終えた琴は街の外にいた。

 街へと伸びる道から外れ、時折振り返りながら駆け足で進む。

 受付の人いわく、街の周辺にも魔物は出るが、強いものは少ないので初めてならおすすめ。魔物は実体があるようでないらしく、倒すと消える。強い魔力を帯びた部分だけ残ることがあり、それを魔物の素材と呼んでいる。

 これを連合支部へ持ち込めばいいらしい。

 「この辺りでいいかな」

 門を視認しにくくなった場所で止まる。と、早速魔物らしきものを発見した。

 「なんだあいつ……」

 琴の両手程あるプルプルした物体から、手のような、触覚のような突起が二つ生えている。スライムだろうか。

 スライムは地面に這いつくばるようにして震えてその場から動かない。

 「……女は度胸!」

 琴はとりあえずスライムを右足で踏んづけた。ぐにゅっとした感覚が足の裏からせり上がる。

 「……おぅ」

 スライムに堪えた様子はない。

 でーろんと広がったと思うと、またプルプルと震えだしたので、ぐりぐりと力いっぱい踏み潰してみる。

 さらに平べったくなったが相変わらずプルプル震えている。ダメージを与えているとは言い難い状況だ。

 琴は一度息スライムから離れる。

 「はぁー……せいっ」

 取った距離を一気に詰め、スライムの上に飛び乗り、力強く跳ねる。

 しかし、ぐちゃぐちゃと音を立てるだけで、先程よりダメージは少なそうだ。

 もう一度距離を取って考える。

 「どうするかな……」

 こちらは素手……素手…………引っ張ってみるか?

 伸びるにも限度があるはず。幸いスライムの体積もそれ程あるようには見えない。

 勇気がいるが……。

 捕まえようと手を伸ばす。

 するとスライムは左右に綺麗に裂けて琴の手を避け……それから手を包み込むように動き出した。

 「ひぃっ」

 慌てて手を引く。

 今のは捕食されそうになったのだろう。

 「お前……そこが口かよ……」

 精神的ダメージを喰らい、琴はスライムを狩るのを諦めた。





 なんとか持ち直した琴は別の魔物を倒すべく、奥へ奥へと歩みを進めていた……先程の平原にはスライムしかいなかったのである。

 「とり、だ?」

 やっと見つけた魔物は鳥だった。鳥であったが……飛んでいるというか、浮いていた。それも琴の腰くらいの低い場所に。さらにアホ面。でかい目に大きなくちばしが見事にアホっぽい鳥だ。

 「……」

 「……」

 相手の鳥からも琴が見えているはずなのに、ぼんやりしたまま動かない。

 近づいて無言で手を伸ばす。

 ぼーっとあらぬ方向を見つめていた鳥はスィっと琴の手を避けた。

 「…………」

 「…………」

 足を振り上げる。

 鳥は後ろに下がった。

 どこを見ているのか判らないが琴は視界に入っているらしい。気合を入れ直す。

 ぐっと踏み込んで飛びつく。

 「!」

 捕まえた、と思った瞬間大量の羽根に視界が覆われた。

 琴の周りを強い風と共に渦巻く。

 風が去り、目を開けるとそこに鳥はいなかった。大量に巻き上がった羽根も、捕まえそこなって手に掴んでいた数枚以外は残っていなかった。

 「なんなんだ……」


 【 琴 Lv.1】【〈生命力〉■■■■13】【〈魔力〉■■8】▽


 左上を確認するも特にダメージもない。あの鳥は何だったのだろうか。

 どっと疲れ、琴の初日は終わった。

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