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ドラゴンさんは友達が欲しい  作者: 道草家守
精霊喰い編

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第3話 ドラゴンさん、びっくりする

 


 薬の生成に追われるネクターをよそにアールとたっぷり過ごしたその翌朝、私はギルドに行くための仕度をしていた。


 体を基本形(女子大生)から、男性体(ノクト)に変えると同時に、ハンター活動用にリグリラに仕立ててもらった魔装衣一式を身に着ける。

 仕上げにぱんと両手を合わせ、身の内の魔力を意識して手を広げれば、放出された炎の魔力がみるみるうちに剣の形をとって手のひらに収まった。

 これで、一時的に炎の魔力が分離されたから、髪の赤い色は消えているはずである。


 ちょっと前に、昔の人相の誤魔化し方がバレバレだったと知ってから、研究を重ねた魔術である。

 髪の色を変えるという習慣がないここなら、これで十分他人のはず、だ。 

 ここヒベルニアではそうでもないが、バロウ国ではいまだに“黒火焔竜”の話はメジャーなのである。

 用心にこしたことはない。

 ちなみに、アールもネクターも街に出るときはこれと同じ術式で、髪の色を亜麻色だけにしていた。


「ふあ、やっぱり男の人のかあさまはかっこいいね」


 すると、隣で見ていたアールがキラキラとした眼差しで、そんなことをつぶやくのが聞こえた。

 むむ、毎度のことながらちょっと照れる。


「どう、ちゃんと髪の赤い所は消えてるかい?」

「うん、ばっちり!」


 照れをごまかすようにいそいそと私の炎の魔力を封じ込めた“焔ノ剣”を腰に下げつつ、脇で眺めていたアールに訊くと、ぐっと親指を立てて肯定してくれた。


「アールじゃあ、行ってくる。ネクターをよろしくな」

「うん、行ってらっしゃーい!!」


 そうして、アールに見送られて男性体(ノクト)で家を出た私は、さくさくとヒベルニアにあるハンターギルド支部へ向かった。


 ここ、ヒベルニアは例の魔物災害から約百年がたった今は、シグノス魔導学園が設立されたことから、多くの学者や魔術師が流入し、学術都市として周辺国家に名を知られるまでになった。

 シグノス学園を中心に、さまざまな学び舎が次々と設立されたため、学生や教師が多い街になったが、周辺地域にはいまだ、魔力の流入が多い。

 魔物の発生は少ないものの、街から一歩外に出れば強力な幻獣が多く跋扈する危険地帯となっていた。

 まあ、その分、高濃度の魔力がないと生育しない薬草など、貴重な資材を手に入れられる。

 だから、人手は常に募集中で、ハンター協会も規模の大きい支部を置き、この街を拠点にして仕事をするハンターも多かったりするのだ。





 学生街と呼ばれる、学校の寮が沢山ある区域とは正反対の場所、外門に近い位置にあるギルド支部のスイングドアを開けると、午前中の少々弛緩した空気が漂っていた。


 日帰りでもなんでも、仕事があるハンターはたいてい早朝から動き出す。

 日も高く上った今の時分にいると言えば、依頼人や、自主休暇中のハンター位なものだった。


 ぐっと足を踏み入れたとたん、待合兼酒場になっているテーブルから飛んできた値踏みの視線を受け流して、奥に据えられている受付カウンターに近づいた。


「ようこそ、ヒベルニア支部へ。ご用件をどうぞ」


 カウンターの内側で事務仕事をしていた女の人が顔を上げて訊くのに、男口調を意識しながら答えた。


「短期の依頼を受けたい。最高でも2、3日程度で終わるものをいくつか紹介してくれるか」

「承りました、ハンタータグの提示をお願いします」


 彼女の要求に、私は胸元からハンタータグをひっぱり出して渡した。

 栗髪をひっ詰めた職員さんは、慣れた手つきで受けとったタグを専用の読み取り機にかけたが、機器を操作したとたん、今まで揺らさなかった表情をこわばらせた。

 でも、有能な職員さんらしく驚愕に目を見開いたのも一瞬で、すぐに職員の顔に戻ったが、丁寧に頭を下げられた。


「“炎閃(えんせん)”ノクト様でしたか。糸繰魔樹(マリオネットツリー)討伐の噂はこちらにも届いております。ようこそおいで下さいました」

「ああうん、どうも」


 うっかりハンターランクが上がってしまう原因となった魔物討伐の話を持ち出され、思わず苦笑いする私をよそに、職員さんは早速依頼表のファイルを繰りはじめたが、表情を曇らせた。


「申し訳ありません、只今、あなたの階級に見合う依頼は現在登録されておりません」

「いや、今日は顔つなぎのつもりできただけだから、ランクは低くて構わない。ここを拠点にしている、ハンターたちの手がまわらないもので十分だ」

「そう、ですか?」

「ああ。ただ、できれば採集系でたのむ」

「了解いたしました、少々お待ちください」


 不安げな職員さんに要求を伝えると、彼女は少し考える風で手元の資料を繰り始めた。

 あくまで事務的に素早く処理してくれる職員さんに、内心ほっと息をついていると、いくらもせずに職員さんが顔を上げた。


「その条件でただいまご案内できる採集依頼は、定期のランク2のみですね」

ランク2(ダブル)か……」


 自分と同じ階級の依頼を受けるのが基本だけど、別に低い階級の依頼を受けるのも問題ない。

 ただ、あんまり下の依頼を受けると駆け出し(ルーキー)の仕事を奪ってしまうことになるのだ。

 さらに階級の低い定期の採集系は、駆け出しハンターたちの安全で貴重な収入源になっていたりするので、階級が高い私が受けるのはあんまり褒められたことじゃない。

 ちょっと悩む私に職員さんは申し訳なさそうな顔をしながら、依頼表をめくる。


「ランク3にも採集依頼はありますが、そちらは片道2日程度の遠征が必要です。討伐依頼でしたら、ランク3、ランク4のものをご案内できるのですが」

「それはちょっとなあ」


 空間転移を使えばできないことはないが、怪しまれるのは困るし、かといって、レイラインにかかわるもの以外で幻獣の駆除をする気にもなれない。


「もう少し早く来てくだされば、条件に見合う依頼をご紹介できたのですが」


 親身になってくれる職員さんに、私は笑みを浮かべて首を横に振った。


「私がハンターにあるまじきのんびりさで来てしまったせいだからね。君が気に病むことはないよ」

「この街をしばらく拠点になさるおつもりでしたら、宿を教えていただければ真っ先にお知らせいたします」

「いや、いいよ。ありがとう」


 礼を言うと、職員はちょっと驚いたように目を見張った。

 いつも不思議なんだが、丁寧に応対してくれた職員さん礼を言うハンターが少ないらしく、礼を言うと意外そうな顔をされるんだよね。

 そんなに横柄そうに見えるかな。


 ともかく、ほんのりと頬を染めた彼女からハンタータグを受け取った私は、顔には出さないものの若干意気消沈しながら、カウンターを離れた。

 ううむ、まあ、受付でハンター証の読み取りをしたことで、生存確認にはなっているから、それでよしとするかなあ。

 と、そんな風に自分を慰めつつドアを開けようとしたのだが、即座に体を捻った。


「まったく、話になんねえ!」


 瞬間、スイングドアが乱暴に押し開けられ、縦も横もでっかいハンター姿のおっさん2人がいらだたし気にどかどか入ってきた。

 どうやらトラブルのようだ。

 片割れの角刈りの男が代表してカウンターへ足早に近づくと、ついさっきまで私がお世話になっていた女性職員のカウンターを乱暴叩いた。


「だまされたぜ、おい、職員どういうこった!?」


 一般の女性ならそれだけで泣いてしまいそうな剣幕にもかかわらず、女性職員さんは片眉を上げただけで、受注済みのファイルらしきものを手に取ってめくった。


「へスタさんにグクルさん。ランク3で登録されている採集任務でしたね。ただ、シグノス平原奥にある「静かの森」間際が群生地のため、案内人の紹介を希望されましたので派遣いたしましたが何か問題がございましたか」

「おおありだ! 案内人が餓鬼だって聞いてねえぞ!?ただのお荷物じゃねえか!!」


 目を血走らせて詰め寄るもう一人の男はどう見ても頭に血が上っている。

 ほかにいたハンターは面倒事を避けてか、男達が入ってきたとたん支部から出ていっていた。

 こりゃ不味いかな、と私が足を一歩踏み出そうとした矢先に、また、スイングドアが勢いよく開く。

 私が驚いている間に駆け込んできたリュックサック背負った少年は、男達に向けて怒鳴るように言った。


「俺は、ギルドでちゃんと資格も持ってるし、自分の身くらい自分で守れますっ! トリプルのハンターなら最後まで話をきいてください!!」

「餓鬼は黙ってろ!!!」


 こげ茶色の髪のちょっと鋭い目つきで睨んでいるようにも見える少年に、男達は苛立たし気に振り返り怒鳴り返した。


 その剣幕に押されたかぐっと息を飲む少年を、女性職員さんは驚いたように見つめていたかと思うと、素早く手元の資料をさらってはっきり眉をしかめる。

 だが、即座に男達に毅然とした調子で言った。


「私どもでご紹介した案内人は、確かにシグノス学園の生徒ですが、ダブルハンター資格を有し正式な講習も受けて適格と判断されております。それに、案内人を護衛し、安全を確保するのも契約の一つに入っておりますが」

「シグノスでもまさか魔術が使えねえとは思わねえだろ!? 魔術科だと思ったから我慢したのによっ! しかも、報酬は採集後、案内人の採集の護衛をすることとはどういうこった!!」


 男がまくしたてた言葉に私は大体の状況を把握した。

 ハンターギルドでは、採集や討伐任務になると群生地点や、生息域までの案内を地元の人間に頼めるサービスがある。

 その街に拠点を置くハンターならともかく、方々を旅してまわっている流れのハンターなどは、土地勘がないせいで採集や討伐に手惑うことが多いため、よく利用するサービスだった。

 大抵は地元民がお小遣い稼ぎにやる仕事なので、その条件に、案内の代わりに群生地が被っている植物の採集をさせてもらう、というのはままあるのだ。

 大抵はギルドに手数料を支払ってあっせんしてもらうのだが、恐らく、こいつらはその案内人の条件をよく読まなかったんだろう。


 更にこいつらは、あんまり強そうに見えないから、案内人の経歴でシグノス魔導学園所属と言う所だけを見て、パーティの頭数に数えて楽にしようという算段をしたのだろう。

 たとえ学生とはいえ、15歳と言えばもう大人と同然に扱われるし、こういう活動に参加できる子供はそこら辺の駆け出しよりずっと戦力になるからね。


「そちらも依頼要項に入っており、契約時に当職員が文書と口頭にて確認することが義務付けられております。もちろん、トリプルの御二方でしたらご存知のことと思いますが」


 私が考えたことを一瞬で把握したのだろう、女性職員さんがきりこむと、案の定男達はぐっと言葉を詰まらせた。

 だが、片方のおっさんは乱暴に吐き捨てた。


「うるせえ!ガキとなんか仕事できるか!! 別の案内人をよこせ!!」

「残念ながらただいまシグノス平原を案内できるのは彼一人です」

「くそ、なら依頼は取り消しだ! てめえらの過失なんだから違約金は支払わねえからな!!!」

「ちょっと待てよおっさんたち! それでもハンターかよ!?」

「うるせえっ!」


 男達が踵を返して去っていこうとするのに血相を変えて追いすがる少年に、角刈りの男は乱暴に腕を振るう。


 その腕をよけきれなかった少年は吹き飛ばされて私の方に飛んできたので、ひょいと片腕で受け止めてみた。

 基本形よりも体が大きいから楽だわー。


「ごめん! 兄さん」

「かまわないよ」


 受け止められた少年が私に律儀に礼を言う間に、男達はギルド支部から姿を消していた。


 悔し気に揺れる扉を睨み付ける少年を、私もじっくり眺めた。

 年は15歳くらいか。

 体つきは細いが、受け止めた時の感触で結構真面目に鍛えているのがわかる。

 鋭い目つきはかなり我が強そうにも取れ、大人には受けが悪いだろうが、なかなかいい面構えをしている少年だった。


 緊張の後の妙に弛緩した空気の中、ふうとため息をついた女性職員さんが立ち上がり、カウンターから出てきた。


「エル君。仮にもお客さんのハンターに「おっさん」はいけません」

「ごめん、ティルダさん」


 さっきの負けん気の強そうな感じとは一転し素直に謝る少年に、女性職員――ティルダさんは表情を緩めて言った。


「いいえ、あのイエローリストに入っている二人組の案内役を君に任せたのは明らかにこっちの過失だわ。おおかたローマンがあいつらを追い出すために仕組んだのでしょう? あなたへの暴言に、理由のない依頼放棄、これで、あの二人組のハンター証は失効、更にブラックリスト入りで、ハンターギルドからは追い出されるけど」


 図星を差された風で少年は表情をこわばらせたが、それでも否定するように首を横に振る。


「いや、俺のほうが急ぎだったので、“外”に行けるようローマンさんに頼んだんです。足りない資材を採集に行きたくて」

「それにしてもこれは悪質よ。ギルドの問題を解決するために研修で受け入れている学生を利用するなんてとんでもないわ。後でローマンにはお仕置きしておく」


 この場には居ない誰かに怒りを向けるティルダさんだったが、一転してまたため息をもらす。


「でも困ったわね、この依頼、あの野郎どもが延滞したせいで期限が明日に迫っているのよ。個人からの依頼だから、ギルドの信用にかかわるし……」

「俺も金欠なんで、数日中には生活費が入らないと飢え死にするというか。ローマンさん前払いしてくれねえし。しかもイエーオリの野郎、材料全部そろってねえのに制作始めやがるし!!」

「ちょっとエルくん、また生活費を研究につぎ込んだのね? あれだけ、ご飯はきちんと食べなさいって言ってるのに……」

「すみません、でも、生活費はともかく資材は揃えねえと今まで積み上げてたやつが全部ぱあになるんで、ティルダさん、何とかなりませんか?

「そうねえ、もうこれは急募をかけてみるしかないわ。料金の割り増し分はギルドでかぶるつもりで。でも、場所も場所だし、請け負ってくれる人がいるかしら」

「請け負ってくれる人がいたとしても、学生の俺を雇ってくれる奇特な人がいるか、ですよね」

「その……」


 深刻に考え込むティルダさんと少年に、私はそっと声をかけてみた。

 どうやら気配を消すのは完璧だったらしい。

 驚いたように振り返られた私は、心の中でそっと涙をぬぐいつつ、言ってみた。


「その採集依頼、私が受けようか」


 あのハンターたちのやり取りを聞く限りでは、まさに私が探していた条件にぴったりだ。


 ティルダさんは私の言葉にはっと息を飲み、職員として様々な思考を巡らせている様子で沈黙していたが、ギルドの信用失墜より私への借りを作るほうが良いと判断したらしい。


「よろしいのですか」

「ついでに私は『静かの森』を知らないから、その少年を案内人に雇いたい」


 今ならむしろその方が嬉しい。

 ティルダさんは目を丸くしたあと、覚悟を決めたようだ。


「彼は若い学生ですし、魔術師でもありませんが、駆け出しのハンターよりは役に立つことはギルドが保証しますので、よろしくお願いします」

「構わないよ。魔術が使えないハンターなんていくらでもいる。じゃあ、決まりだ。詳しい依頼内容を教えてくれるかい?」

「はい、ではカウンターへ」

「ちょっと待ってくれよティルダさん!」


 私とティルダさんの間で決められた話をあっけにとられて聞いていた少年はそこで慌てて割って入った。


「『静かの森』は、最低でも二人一組で行動することが推奨されている区域じゃないか! こんな細くて綺麗な兄ちゃん一人じゃまずいだろ!?」


 あはは……容貌を弄るのがめんどくさくて本質をそのまま写したら、妙にイケメンになったんだよなあ。

 女子大生顔のまま男にならなかったのは不思議だったが、おかげで、ハンターギルドで目立たない様に男性体にしたというのに、別の意味で悪目立ちしているという体たらくである。

 しかもあんまり強く見えないし。


「確かにちょっとうらやましいくらいきれいな方だけど、大丈夫よ。むしろ、こんなトラブル処理を頼んでしまったのがばれたら私が懲戒処分かも、って戦々恐々としているんだから」


 ティルダさんもさらっと言いましたね。

 まあ、かまわないけど。


「ティルダさんがそこまで言うなんて、何者なんですか」


 案の定意味深な言葉に訝しそうにする少年に、ティルダさんはちらりと私をうかがった。

 一応本人に許可なく個人情報を漏らすつもりはないらしいけど、ティルダさん、むちゃくちゃ言いたいって顔してるよ。

 話をスムーズにするために必要だろうと了承の意味を込めて肩をすくめると、ティルダさんはふふんと得意げな顔で言った。


「この方は、ギルドランク、最高位(クインティプル)の“炎閃”ノクトさんです」

「……は?」


 少年は二三度瞬きした後、間抜けな声を出した。


「一応、本当だからな。これが私のタグだ」


 なんだか理解できてない風なので、私は首から下げていたタグをとって、少年の手に落としてやる。

 盾の下に剣と杖それぞれ2本ずつ、計“4本”が交差した紋章が見えた少年は、今度こそあんぐりと口を開けて驚きを示した。


「第一級の危険種をたった3人で倒した、あのノクト・ナーセですか!?」


 おおう、まさか少年にまで知られているとは。照れ臭い。


「まあ、あの時は仲間に恵まれたんだ」


 これは本当。

 私が、本気を出さずにあの魔物討伐を達成できたのは、理解ある仲間に恵まれたからだ。

 おかげで階級はうなぎのぼりに上がったものの、こうして人里に顔を出せる。


「それでも、たった一年でクインティプルまで昇進したのはそれだけの実力があってのことでしょう!? その時の仲間と共に高難度の魔物討伐を何度も成功させてるって聞きました。なんで、おひとりでこんなところに」

「常設でパーティ組んでるわけじゃないから、基本はソロで活動してるんだよ。それとも、私ひとりじゃあ不足かい?」

「いえ、そんなことは!!」


 その討伐の後、どんどんめんどくさい討伐をギルド側から押し付けられたから魔物討伐専門みたいに言われ出しちゃったけど、基本はあくまで採集なのだ。

 大慌てで否定した少年は、大きく深呼吸をした後、確認するように言った。


「俺、自分の身は守れますけど、それだけですよ。足手まといになりませんか」

「問題ない。案内以外のことはこっちに任せてくれていいから。じゃあ、よろしく」


 私が右手を差し出すと、少年は緊張の顔で握り返してくれた。


「俺は、エルヴィー・マノトンです。じゃあ、よろしくお願いします」


 “エルヴィー”という名前に、この少年がアールの言っていた世話になっている“先輩”だということに気付いて再度驚き、それよりも何よりも、喜びとなつかしさに綻びかける表情を平静に保つことに全力を尽くす。


 苗字は違うが、その掌から伝わってきた魔力波で確信する。

 このこげ茶色の髪と鳶色の瞳の少年は、間違いなく、カイルの子孫だった。




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