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「こんな陽気な日に戦闘が出来るなんて、最高だぜ」

 近くにいたドワーフの管理職員が人間種族の管理職員に語りかけていた。

 これから上陸する海岸は砂埃と煙のために白くくすぶり、何十本の黒煙が立ち上っていた。

 ラインヴァルトは、艇の舷外側上緑につかまって海岸を眺めていた。

「(島の悪魔の群れは殲滅出来たのか?)」

 漠然とした不安をラインヴァルトは感じ取っていた。

 ――――その予感はまたしても恐ろしい確率で的中した。




 艦砲射撃のさなかラインヴァルトがいる第一波上陸軍は機械的な速さで、

 上陸合図の緑色の合図があるまで、沖合で旋回運動をしていた。

上陸用舟艇の第一群は、梯団を組んで海岸線を目指して殺到した。

 魔物カテゴリーレベル3以上に分類する悪魔の群れの抵抗は皆無と思われた。

 海岸まで三百メートルという所で、魔物カテゴリーレベル3以上に分類する悪魔の群れが一斉反撃を開始してきた。

 攻撃魔術や砲弾が無数に落下し、上陸用舟艇に一撃必殺の命中弾を与えてくる。

 打楽器を連打するような速度で、大口径砲弾が落下し攻撃魔術が炸裂し、水柱を

 上げる。




 攻撃魔術か砲撃かはわからないが、ラインヴァルトが乗っかっている舟艇付近に高い水柱が上がり、飛沫が艇内のすし詰めになった乗組員の頭上にかかった。

「(まったく、最悪だぜ)」

 ラインヴァルトはそう思ったが、舟艇に同じようにすし詰めになっている乗組員が、むっつりと黙っているため声には出せなかった。

 前の舟艇に攻撃魔術の直撃を受け炸裂し、舟艇の乗組員が宙に大きく吹き飛ばされ、あるいは海中に跳ね飛ばされる。

 海中に跳ね飛ばされた乗組員は、重い装備に身を取られて暴れる様に溺れている。

 同じような凄惨な光景があちらこちらで出現し、遺留品、散乱する無数の死骸、破壊された舟艇、そのほかもろもろで混沌と化していく。

 頭上を戦艦部隊の大口径砲弾が唸り、攻撃魔術が海岸付近で引っ切り無しに炸裂している。




 上陸用舟艇が砂浜に乗り上げる前に船尾錨を下し、砂浜に乗り上げるとすかさず船首を錨を下した。

 艇が固定すると歩板が倒れた。

「行くぞ!」

 誰かが叫んだ。

 魔物カテゴリーレベル3以上に分類する悪魔の群れが、野砲、速射砲、数多の重火器類と攻撃魔術を自由自在に使用し、暴風の様に浴びせてくる。

 魔物カテゴリーレベル3以上の魔物となれば、戦場で鍛え上げられた精鋭部隊の如く自由自在に、重火器類を使用してくるため摩訶不思議な事ではない。

 悪魔の群れの火線は側射、後射も特殊結界も施せる様に巧妙で正確無比な防衛陣を築いていた。




 後方海上からは観測飛龍による誘導で艦隊が悪魔の群れの砲兵陣地を丹念に猛撃しているが、火力は弱くなる所か、さらに激しく砲撃と攻撃魔術を使ってくる。

 そこらかしこで絶叫と悲鳴が起こり、死傷者が続出する。

母の名を、恋人の名を、妻の名を、信仰している神々の名を叫び命を刈り取られていく。

 なだらかな白い浜が続いているが、百メートル先には重火器類で完全武装した悪魔の群れが陣取り、攻撃魔術を唱え重機関銃を吠えさせている。

「(何が上陸部隊には仕事がないだっ!!、仕事だらけじゃねぇか!?)」

 ラインヴァルトは罵った。

 連日の飛龍による上空爆撃と戦艦による艦砲射撃でも生存している悪魔の群れがしっかりといたのだ。

「進めっ!!、進めっ!」

 誰かが吼える様に命じている声が、激しい音と共に聞こえた。

 重火器類で完全武装した悪魔の群れは、海岸近くを走る大通りの手前に陣取り、猛烈な攻撃を加えてくる。




 ラインヴァルトは十メートルほど走り、砂地に身体を伏せるが、頭上を銃弾が唸り、迫撃砲が後方で炸裂する。

 第一上陸軍に無数の榴弾が攻撃魔術が炸裂し、吹き飛ばし砂浜や海水を鮮血に

 染める。

 上空を旋回している飛龍「コスモドラゴン」、「ブラックドラゴン」、

「ホワイトドラゴン」、「レッドドラゴン」

 四種類の地上軍上陸支援機と、沖の支援艦船が悪魔の群れが陣取る場所に猛攻撃

 を加えた。

 体感的に少し、魔物の群れによる砲撃などば弱くなった。

 ラインヴァルトがいる上陸軍は波打ち際から七十メートルほど前進し、手を伸ばせば届く様な距離から、悪魔の群れは迫撃砲、軽機関銃、重機関銃、自動小銃、攻撃魔術を思う存分使ってくる。

上陸軍は、その悪魔の群れと凄まじい戦闘を経て大通りまでの橋頭保を確保した。







 最初のポートリシャス大陸東部湾岸諸国連合の上陸から十時間後、上陸軍は数か所で悪魔の群れの全線を粉砕し、大通りに達した。

 大通りの悪魔の群れの最後の一体に止めを刺し終えると、ラインヴァルトのいる

 上陸部隊は市内に向けて進撃した。

 市中は、飛龍による爆撃と艦砲射撃、または悪魔の群れの攻撃で、建物という建物はすっかり破壊され、今なお黒煙を上げて燃えている。

 路上には、悪魔の群れに食い殺された住民の死骸や車両の残骸、悪魔の死骸が至る所に転がっている。

 それらに構ってられない上陸軍は、まず目標の連合警備隊冒険者管理局支部が置かれている場所まで進撃を開始したが――――。



上陸軍は、大地を埋め尽くし雲霞の如く湧いている魔物カテゴリーレベル3以上の悪魔の群れを視界に捉えて、絶望のどん底に叩き込まれた。

あれほどの飛龍や戦艦群の猛攻撃を受けても生き残っていた魔物の群れを確認すれば、常人なら大きな壁にぶち当たったような絶望感に包まれる。

ただ、何人かの上陸軍将校は笑い声を上げていた。

余りにも絶望的な光景に狂ったとかではない。

その笑い声を上げている者達の中にラインヴァルトも入っているが、彼の場合は、

込み上げてくる意味の分からない笑いを噛み殺している様だった。

「(あれだな、もうこれほどの数の光景を見せられたら、冒険者管理局に所属している身としては、もう笑う事しか出来ない)」

無数に群がり襲いかかってくる悪魔の群れを睥睨しながら、ラインヴァルトはそう

思った。

――――――笑い声を上げているのは、この騒動が起こる前から、遺跡や地下迷宮の奥で冒険者パーティの遺品回収を行いながら、魔物カテゴリーレベル3以上の悪魔との交戦を何度も何度も繰り返してきた冒険者管理局職員達だ。

そんな彼彼女らにとっては、絶望して神に祈るより笑い声を上げ、手に持っている

重火器類の安全装置を外し、照準を向け交戦を開始する。

冒険者管理局職員達は、タダで死ぬつもりは毛頭もない。

死ぬ時は一体でも多く道連れにする覚悟だ。


 


 群がり襲いかかってくる悪魔の群れに、味方の砲撃が降り注ぎ、攻撃魔術が炸裂

 する。

 悪魔の群れは将棋倒しのように倒ればたばたと倒れる。

 しかし、群れはその死骸を踏み越え、奇声を上げながら向かって来る。

「進めーーっ、人間種族と異種族の底力を見せてやれ!!」

 軍刀を振りかざした人間種族の指揮官が、吼えながら悪魔の群れに突進する。

 悪魔の群れの砲撃か、味方の攻撃魔術かわからないが、周囲一帯に突然砲撃と攻撃魔術が降り注ぐ。

 おそらく双方の撃ち合いだろう。

 道路の脇には無数の悪魔の群れの死骸と住民の死骸が散乱している。

 それでも、一体何処から湧いてくるのか悪魔の群れは次から次へと奇声を上げながら向かって来る。

 ―――――生き物全てを根絶やしにしてやる

 ラインヴァルトは、悪魔の群れからそんな気迫を感じ取った



 その壮絶な戦闘は、日の出まで繰り返し展開したが、上陸軍はアレトリア島連合警備隊冒険者管理局支部1キロまで進撃した。

 空と海からの支援、海岸に布陣する上陸軍の砲兵隊からの支援を受けながらだが、しかし、悪魔の群れは塹壕やバリケード、無数の地下陣地からの数と火力と

攻撃魔術を組み合わせた反撃を繰り返してきた。

それらは、アレトリア島連合警備隊冒険者管理局支部に進めば進むほど、激烈な

反撃を繰り返してきた。

ある冒険者管理職員が重火器を吼えさせながら叫んだ。

「夜が明けるまで殲滅してやる!!」




夜明けと共に、上陸軍の総攻撃が開始する。

 100機以上の飛龍が飛来し、悪魔の群れの頭上に攻撃を浴びせ、沖に停泊中の艦船は、艦砲射撃と攻撃魔術を組み合わせて放った。




 約4時間後、上陸部隊の先頭がアレトリア島連合警備隊冒険者管理局支部に

 辿り着いた。

一体何十体何百体の悪魔を葬ったのか、ラインヴァルトはわからない。

ただ、もう、悪魔との闘いは当分闘いたくも観たいとも思わなかった。




 その小さな支部は、付近の住民と冒険者管理職員によって護られていた。

 疲れ果てたラインヴァルトがいる上陸軍の2個大隊と共に、冒険者管理局支部に入ると、何処からともなく幽鬼の様な姿の生存者が群がり集まってきた。

 その彼らの中には、上陸軍の将兵などに抱きついて泣き出すものもいた。

 ラインヴァルトは、その場の惨状を見て、如何に生存者が辛苦を味わって生き残ってきたのか考えさせられた。

 かつては冒険者管理局支部とだったものが、完全に叩き潰され、柱一つ、

 植木一本無い。

 あるのは無数の砲弾穴、潰れた支部の後だった。

 彼等の武器らしい武器は剣や火炎瓶で、それらで悪魔を数十体倒していた。

 その光景をじっと見ていたラインヴァルトに、同じ冒険者管理局員らしい

 リザートマンが近づいてきた




「類のない最大激戦だったな、戦友」

 呟く様に告げてくる。

「よう、戦友、だが、これからもこんな激戦が続くんじゃないのか。

 この島での闘いは終わっちゃいない」

 ラインヴァルトは、困った様な表情を浮かべながら応えた。

「いずれにしても、闘いは続くと言う事だな」

 リザートマンは、何処かうんざりとする様な表情を浮かべながら告げる。

 ラインヴァルトは水筒の蓋を開け、温くなっている水を乾いた喉に流し込む。

 そのラインヴァルトの貌が、暗く沈んでいるのに気付いたリザートマンは

 尋ねてきた。

「おい、どうしたんだ?、貌色が悪いぞ。まぁ、激戦だったから疲れているのもわかるが・・・」

 そのラインヴァルトの貌が、暗く沈んでいるのに気付いたリザートマンは尋ねてきた。

「いや、何でもない、ただ、この騒動はいつまで続くのか・・・と思っただけだ。

 この騒動で何処まで必要な闘いを繰り広げるのか、それが気になっただけさ」

 ラインヴァルトはそう応えながら、上空を旋回している飛龍に視線を向けた。





とりあえず、これで何とか〆ました

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