八、違う違う!!意識なんてしてない!ただちょっと混乱してるって言うか…
突然目の前に現れた木の群生に一件の山小屋。
「おや?何じゃ?」
「こんにちは。」
花の手入れをしていたおばあさんが振り向いた。
「鱗を返してもらいたい。」
「ゼンそれは会って直ぐ言うせりふじゃない。」
でも目は真剣だし。
綺麗な瞳。
「はて鱗?………あ!あぁ、トピシーちゃんのプレゼントかい?あれは孫にやっちまったよ。」
「えぇっ?」
またなの?
「きらきらして綺麗ねって喜ぶもんだからねぇ。」
そういいながら、花の周りの雑草を引っこ抜く。
「ばあさん、孫はどこにいる?名前は?」
低くなったゼンの声…
って!!あんなこと言われたからって、いちいち反応しないの!あたし!!
「名前はのトゥールじゃよ。トゥールはカフレイ山のふもとの繁華街に住んどっての。自慢の孫でねぇ…あの子は踊り子をやっとるんじゃ。ちょっと踊れば人が山のように集まっての、なにより忙しゅうてもわしに会いに来よる。ええ子じゃ。」
孫自慢…。
「トゥールね。」
「直ぐに山を降りるぞ。」
「えぇ?」
今から?
疲れたんだけど。
「あれ?おばあちゃん。お客さま?」
突然目の前に現れた巻き毛の女の子。
「トゥール!!また来てくれたのかい。その人達はお前に用があるんじゃと。」
後ろからうれしそうなおばあさんの声。
やっぱり孫か。
「トゥール。」
ゼンのきれいな声が響く。
あたしの名前を呼んでいるわけじゃないのにドキドキする。
「何ですか?」
可愛らしく顔を横に傾けると染められたピンクの髪が揺らめく。
「お前の鱗をくれ。あれはもともと俺の物だ。」
トゥールに差し出された手は大きくて細長くて男らしい角張った手。
「ただでは譲りませんよ?」
いたずらそうに微笑む顔はあたしを不安にさせた。