五、…誰?
強制連行されて、着いた場所はやっぱりそう。
「あら?シーナ?怪我?」
あたしの一番年上のシュリス姉様。
ブロンドの胸あたりまでのばした癖のある髪。
綺麗な顔だち。
その姉様の病院兼、家。
ここら辺では一番腕のいい医者。
「なるほどね。母様も何であんたを選んだのか。」
お茶を淹れる姉さん。
腕がいいから怪我は会って五秒で直った。
やっぱりシュリス姉様はすごい。
そして久しぶりだからお茶でもいかが、って言われて上がってしまった。
でも、久しぶりすぎて気まずい。
「あ、アコンス家は代々修行のために鱗を一つずつ借りる事が出来るのよ。」
「それがなに?」
知ってるよ。
「あたしも持ってるわ。」
当たり前じゃん。
鱗は…
「あ、そっか。初めから姉様達を探せば良かったんだ。」
「気づかなかったの?」
「つまりシーナの姉妹を探せばいいわけか。」
お茶を優雅に口に運ぶゼン。
「じゃ、取ってくるわ。鱗に付けた封印も取らなきゃ。」
姉様が立ち上がった。
「何で気づかなかったんだ?役立たず。」
「何ですって?」
ゼンめ!!カチンと来た!
「そんなこと言ってたらあたしの持ってる鱗あげないんだからね!」
「まあまあ。痴話喧嘩?」
あたしの後ろを姉さんが通り過ぎ、部屋から出ていった。
「あたしサポートしたじゃない!!」
「ただ光るだけ。」
くっ悔しい!!
子どものくせにその勝ち誇った笑いがっ!
しかも魔法を言葉に頼ってしまったからよけいに反論できない!!
「役に立たないなら置いていきなさいよ!あたしあんたと連む気無いから。」
途端に目つきを変えたゼン。
ちょいちょいと一本指であたしを引き寄せる。
「何?」
少年の綺麗な顔。
「そんなもったいないこと出来るか。」
耳元で囁く。
「…えっ?」
「おまえ、本当に面白い。」
にやりと笑ったゼンの顔が、急に大人に見えて顔が熱くなる。
「俺の鱗はお前が持ってろ。」
「お待たせ。鱗持ってきたよ。」
丁度良く扉が開いた。
「鱗なんか使わなくてね。本家に返しに行く手間が省けてよかったわ。ありがとう。」
戻って席に着く。
「やっと出会えた。」
ゼンはそんなことお構いなしで鱗に夢中だし。
「そんなにこの鱗が?」
手渡された鱗を直ぐに口に運ぶ。
「当たり前だ。」
ゼンの体が光る。
今日は二回目だ。
「ん?」
さっきより明らかに強い光を放つゼン。
光が部屋を闇のように包み込む。
「眩しい…。」
あ、光が消えた…?
「…誰?」
目に見えるのは透き通る青い髪の男性。
目鼻立ちの整った顔。
わずかに残る少年の面影。
ゼン?
「お前のその反応が見たかった。」