四、きっとこんな旅に出たからこんな目に遭うんだわ…。
北の森の北炉の洞窟、暗闇にわずかに差し込む光、小さな体に可愛い顔…の魔物。
白い体に三つ叉の長い尾はまるで槍。
「わぁっ!」
こっちに来たっ!!
「危ない!!」
他の尾につきまとわれた少年はあたしを助けようと、必死だった。
けど遅かった。
あたしの右肩から血がこぼれ落ちた。
「痛っ!」
じわじわと痛みが押し寄せる。
「くそっ!!」
槍を剣でかわす少年。
この前拾った錆だらけのやつだ。
あたしも戦いたい。
役立たずは嫌!!
魔族の名門に生まれて魔物に傷を負わされるなんて恥!
無意識にあたしの真ん中に集まる力。
初めは微か…そして次第に強くなる。
今だ!!
「光れ!」
あたしの真ん中から一気に解き放たれる力が体中を輝かせた。
「ギュゥゥ!」
ただ光るだけで戦闘にはあまり使われないけど目眩ましにはなる。
でも…また言葉に頼ってしまった。
魔族の恥…。
ゼンは、動きの鈍くなった魔物小さな体を一突きした。
魔物は悲鳴も上げず動きを止めた。
ゼンは一際長い尾にめり込んだ鱗を引き剥がした。
「バカ!!下がってろって言っただろ!?」
ゼンが私の左手を引き光の方へ駆け出した。
本家にあった鱗のせいか、少年は強くなった。
でもあたしは今だ解放されず…。
しばらくの間少年と旅して分かったこと。
少年は大人だ…。
認めたくないけど!!
なんか話し方も落ち着いてるし、妙に色気がある…って言ったらあたしがまるで変態じゃない!!
ゼンは外に出るとすぐに自分の服の腕の部分を引きちぎってあたしの右肩に結びつけた。
「あ、ありがとう。」
「もっと周りをよく見ろ。」
なに?そのため息?
「見てたわよ!」
「じゃあ避けれなかったんだな。」
「うるさい。」
確かに今まで足手まといにしかなってなかったけど…。
奴は捨てぜりふを吐くと取り返した鱗を飲み込んだ。
少年の華奢な体が少し光って見えた。
「やっぱり。これも違う。」
自分の手のひらを見て、かなりの不満顔。
「何が違うの?」
あんたの鱗でしょ?
「…まだ教えない。」
「なっ!」
何よそれ?
しかもその企みのあるような笑顔は何?
その手には乗らないんだから!!
「別に?知りたくなんかないわ?」
すごく知りたいけど…。
「どっちにしろ教えない。」
楽しそうに、ニヤリと笑った顔。
こんな皮肉な奴見たことない!
「それよりその傷、早くふさがないとな。」
「大丈夫よ。」
そんなに申し訳なさそうにしなくても、ゼンは悪くないのに。
「痛いだろ?」
するりと少年の手があたしの手を掴む。
「い、痛くない!」
…痛いけど。
っていうか、その上目遣いはなしだよ!!
「それに魔族の血は魔物の好物だ。大量に寄ってこられるのは困る。」
「まあね。」
ん?
ちょっと、いつまで手つないでいる気?
「近くの医者に行くぞ。」
え?
近くの医者…
ちょっと待って!!
それは困る!




