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竜の少年  作者: 津田花
3/16

三、どもるなあたし!!

「ありがとうございました。また是非私共の宿をご利用ください。」

 

こうも豪華な接待だと調子が狂う。

 

「は、はぁ。」

 

原因はもちろんお金。

父様が旅費として無理矢理少年に渡したお金。

でも実際は養育費だと思う。

他人の手助けを嫌う彼は、それをこの宿の主人に全部渡してしまった。

…もったいない。

あたしでもあれほど高額なお小遣いもらったことない。

 

「あ、待ってゼン!」

 

突然少年はあたしをおいて駆け出す。

…何か追ってる?

 

「ゼン!!」

 

何見てるの?

振り返った少年は、ため息の出そうな顔。

 

「今、鱗の気配がした。」

 

「え?そんなの分かるの?」

 

「強い能力がある鱗ほど分かる。…見失った。」

 

悔しそう。

 

「ゼン…」

 

「何だ?」

 

「バテバリーギを今でも恨んでる?」

 

「当たり前だ!!」

 

少年には似つかわしくないその表情にあたしは恐怖を覚えた。

 

「…そうだよね。」

 

そのくらい分かってる。

あたしも奴が憎い。

あたしから妹を奪った。

イユを…。

でもゼンは計り知れない量の時間を奪われた。

目覚めれば家族も友達も知り合いも誰一人いない。

 

「あのさ、なんて言えばいいのか分かんないんだけど…」

 

ごめんは変だし、がんばれって何を?

 

「えっと…」

 

言葉が出ない。

 

「おまえが気に病むな。」

 

「え?」

 

さっきとは全く違う、優しい顔。

でも先祖が悪いことをしたのに見て見ぬ振りはできないし…。

 

「おまえみたいな魔法も使えないし人間に気を使ってる奴が、バテバリーギの血を引いてるなんて面白いな。」

 

少年の無邪気な笑顔。

 

「なっ!!何よそれ!」

 

魔法は使えます!

子どものくせに勝手に決めないでよ。

 

「ほめたんだよ。」

 

それはどうかな?

 

「今回の獲物は、北炉の洞窟の白狐。」

 

ゼンがポケットから取り出した紙。

小さくてかわいい魔物が描かれてる。

 

「ほくろ?」

 

「北炉。賞金は二万パシー」

 

「安っ!!他のにしようよ。」

 

そんなんじゃ生活できない!!

 

「それ以外に鱗を持っていそうな奴はいない。」

 

「それより生活が!!」

 

「大丈夫だ。行くぞ。」

 

今まで敵を倒した賞金を合計しても、ぎりぎりの生活なのに。

父様からの教育費だけが頼りだったのに。

 

「がんばろう…。」



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