ニ、もうあたしの運命どうなってんの!?
ばかでかい家。
中にはあたしのいた部屋に、姉様や妹のいた部屋。
父様の仕事部屋に母様の占い部屋。
メイドさんの部屋に使ってない部屋。
慌ただしく行き交う人々。
ここにいたのがすごく前の事みたい。
その懐かしの本家、父様の仕事部屋であたしは衝撃の事実を知る。
「この少年が伝説の人間?あの昔話のですか?」
どう見ても人間には見えない。
透き通る青い髪に同じ瞳。
色素の薄い肌。
それに人間はもっと醜いと教えられた。
本人は話の内容をつかめずきょとんとしてるし。
「そうだ。バテバリーギ様と戦い、石にされた元人間の竜、君だゼン。」
何で名前知ってるの?
そんな有名な話だったっけ?
「でも五百年も前の話でしょ?」
今更そんな…。
「古き話だが事実だ。」
「俺は五百年も眠っていたのか…。」
暗い横顔…。
五百年も眠ってしまうなんてどんな気持ちだろう?
一晩で世界が変わる。
「ようやく封印が解けたのだ。ゼンと共に鱗を探せ。」
は?
何を突然?
「少年と共に旅をせよと?」
「そうだ。母様の占いに出た。バテバリーギ様も、そう望んでおられる。」
バテバリーギ…か。
「…でも、そもそもはバテバリーギ様と戦おうとした少年が悪いんです。断ります。」
なんであたしがこんな餓鬼と二人旅?
いくらかわいそうだからってそれとこれは話は別。
ちらっと隣を盗み見るとひざまづいていた。
なにしてんの?
「僭越ながら申し上げます。鱗は私にとって力の結晶。共に探して下さるというお気持ちは有り難いです。ですが、我が身の為に他人の手を借りるなど、もっての他。お断り願います。」
うわっ!!
こんな堅苦しい言葉、どこで覚えたのよ少年?
「そうか。ならば私も願おう。」
このおやじ、ゼンがひざまづいたりなんかするから調子に乗ってるよ。
「我らアコンス家はバテバリーギ様の血に恥じぬよう、十六で一人立ちし、己を磨くのだが、我が娘は自分の住む場すら守ることが出来ないようだ。旅で鍛えてやってくれ。」
「しかし…」
行け少年!!
父様をやつけろ!!
「魔物一匹倒すだけでその様子ではこれから大変だ。せめて無傷で倒せるようになるまで娘を側に置いておけば良い。不必要と判断すれば捨ててかまわん。」
やっぱり父様は家の繁栄しか考えてない。
「ですが…」
「足手まといにはなるまい。なあシーナ?」
なによその言い方!
「当たり前です。魔物一匹など大したことはありません。」
本当は魔物と戦ったことないけど!
「それならばよい。」
…しまった!!
乗せられた…。
口のうまいおやじ!
「ゼン、我が家にある鱗を渡そうか。」
「はい。是非。」
そうやって物で釣る。
はぁ。
何でこんな餓鬼と。