十四、えええぇぇっ…!?あたし?
イユ!!
…声が出ない。
イユ!
…何で?
「イユ…」
出た!!
「とこの女が言っているが?」
あたしの意志を無視して言葉が次々と出る。
「おまえがイユか。」
あたしの目がイユを捉えた。
「…シーナちゃん?」
「シーナ。」
「お前は…!!」
あたしのゼンを見る目が険しくなる。
"まさか…ゼンか?"
誰かの声!?
「イユよ、覚醒前の私が失礼した。」
目を見張るゼンに涙目のシーナ。
でもこの動きはあたしの意志じゃない。
もしかして…バテバリーギ!!
私が選ばれた?
なんで?
「あいつは私の若い頃の記憶しか持ち合わせていないからな。」
「何でシーナちゃんを選んだのよ!?…シーナちゃんが…シーナちゃんが…」
イユ…。
「仕方のないことだ。イユの体が、覚醒前の私と竜との戦いに耐えられなかったんだろう。」
そう。
もう二度と見たくない。
「バテバリーギ…貴様二度も…」
ゼンはあたしから顔を背ける。
「お前には本当に申し訳ないことをした。」
「それがシーナに取り付いて吐く言葉かっ!!」
あたしが今まで見たこともない顔で…あのときよりも怒りに満ちた顔で、あたしを見るゼン。
その瞳からは綺麗な涙がこぼれていた。
「ゼン。」
あたしの声が出た。
「なかなかやるなこの娘は。」
また違う言葉、勝手に笑う顔。
「貴様!!」
「私はお前を呪いから解き放とう。忌々しき過去の過ちを許せとは言わない。だが私はこの為だけに、子孫を犠牲にし、自らの精神力を削り、存在を保っていた。」
あたしの頬を伝う涙。
"悔やんでも悔やみきれなかった。どんな謝罪の言葉も足りない。"
バテバリーギ…。
「"今解き放とう。我が過ち、この魂と共に消し去らん!!"」