十三、イユ!!
イユがいる。
目の前に。
合うのは八年ぶり。
イユがバテバリーギにとりつかれて以来隔離されて、合うことは許されなかった。
イユのことを忘れたことはないけど…
「人間か。」
声も髪も仕草も、すべてがバテバリーギのもの。
ストレートの長かった髪を乱雑に首の付け根で切り捨ててある。
目の前にいるのはイユじゃない。
「死ね!!」
綺麗に育ったイユは、そのシュリス姉様にも似た綺麗な顔を歪めて、繊細な指をかざしてゼンを倒す為に魔法を使う。
燃えたかる炎に降り注ぐ氷の刃。
「バテバリーギ!目を覚ませ!!」
ゼンはただそれをよけるだけ。
「イユ!!やめて!」
「無駄だ!!娘は私に支配されている!」
イユは見えるし聞こえるし感じることも出来る。
でもバテバリーギとしか話せない。
バテバリーギはなんだかすごく苦しそう。
「イユ!!」
あたしはどうすればいいの!?
「やめて!」
あたしと同じ黄金の瞳で、ゼンをにらむ。
「人間が…ゼンが何をしたって言うの?」
イユの体が動きを止めた。
「……ゼ、ン…?」
「イユ!?」
「シーナ、おまえ…光って…」
「え!何で?」
気がつけばあたしの指先から頭まで黄金の光を纏っていた。
無意識に魔法を使っていた。
「やめろ!!来るな!」
イユの瞳が光を失った。
反対にあたしの体は光を増す。
あたしは段々意識が薄れていく。
「イユ…。」
イユの瞳に明かりが灯った瞬間、あたしはこの八年聞いていなかった声を聞いた。
「シーナちゃん!!」