十二、あたしはヨルス姉様があんなに機敏に動くのを見たことがない。
次に送られたのは、あたしが一番会いたくなかったヨルス姉様。
何と言ってもこのマイペースがあたしの波長とイマイチ合わない。
茶色い髪にイユのように真っ直ぐな髪。
前髪も長くのばした後ろ髪も規則正しく並んでいる。
この人がゼンと同じ年だなんて信じられない。
「シーナちゃん。」
とりあえずあたし達をテーブルに座らせて一言。
「あのね…」
このいつも眠そうな顔もついていけない。
「何?」
「このままだとイユちゃんが危険よ。」
「イユが!?」
私の片割れ!!
「どう危険なの?」
あたしはこんなに焦ってるのに、となりのゼンは落ち着いてる。
まあ、ゼンには興味の無いことだろうけど。
「覚醒出来ないかもしれないわ。」
「覚醒なんて…」
しなくていい。
覚醒したらバテバリーギに体を与えたも同然。
「覚醒しなかったら人間を見る度におそうのよ?ゼンさんが落ち着いて話せないわよ?」
それじゃ、呪いが…
「構わない。シーナが傷つくよりましだ。」
あたしはゼンの過去かイユの未来かなんて決められない。
「そう?じゃあ話は早いわね。あたしが借りた鱗を返すから、二人でイユを覚醒させなさい。」
ヨルス姉様は機敏に!
それはもう機敏に!!
ゼンに鱗を渡してあたし達に魔法をかけた。
イユの元へ。