十、余計な事しないでよ!!
きれいな顔…
向こう側が見えそうなほど澄んだ色を見せる髪。
閉じた瞳、筋の通る鼻、薄い唇。
「ゼン。」
名前を呼んでも瞳の色は見えないまま。
「ちょっと!!私のゼンに触らないで!」
「あ。」
気づいたら無意識にゼンの手を握りしめていた。
「ゼンといた時間が長いからって調子に乗らないでよね?」
トゥール、第一印象はすごく良かったのに。
今はこうしてえらそうにあたしをにらむ。
「あのさ、あたし別にゼンのこと好きじゃないし。」
挑発には乗らないから。
「何言ってんの?倒れたゼンを見て今にも泣き出しそうだったのは誰?」
「倒れたのはあんたが振り回したからでしょ!?毎日毎日毎日毎日!!ゼンがどれだけ疲れたと…」
「そんなに取り乱して、いい加減好きだって認めたら?」
話の途中でっ!!
まだあたしには言いたいことがたくさんあったのに!!
「認めるわよ!!」
あ…。
静寂な時間があたし達を包み込んだ。
「言ったわね。」
もういいや!
「あたしはゼンが好きよ。」
トゥールよりも…誰よりも好き。
「おまえ俺が好きなのか?」
……?
振り向くと呆気にとられている愛しの人。
「あら?ゼンおはよう。」
何?これは夢?
「おはようって…トゥール、おまえが寝たふりしてろって言ったんだろ?」
「は?」
どういうこと?
「あは。」
何で満面の笑み?
「何なんだ?」
「だってあんたたちみててかなりイライラしてさ。特にシーナ。」
今までとはうって変わって、トゥールはまるで初めてあったときのようなあっさりとした表情。
「おまえ、顔赤い。」
にやりと笑う顔はなんだか勝ち誇って見えた。
「見ないで!!」
布団に顔をつっこむ。
あー何で言っちゃったの?
全てトゥールの思うつぼだわ!
「ま、あたしの趣味が恋のキューピットで良かったわね。」
良くない。
よけいなお世話!!
そして変な趣味!