一、何なのこいつ?
あたしは子どもが嫌いだ。
うるさいし、すぐ泣くし、生意気だし…。
挙げだしたら切りがない。
そんなあたしが今、目にしているもの。
それは魔物を退治する子ども。
まあ、魔物を倒すことは問題じゃない。
一年間慣れ親しんだ我が家が、突然壁から入ってきた魔物と、引き続きやってきた少年によって半壊しているこの状況が問題。
招待した覚えはない。
あちこちにあいた穴から時々見える魔物と少年。
あたしにとってはどっちも魔物。
小さな家だけど、結構気に入ってた。
もっと頑丈に作ればよかった?
「おまえ、もしかして鱗もってる?」
魔物をやつけたのか、家から出てきた少年。
初め見たときは、透き通るような青い髪に驚いた。
その髪は今やクシャクシャで木くずをつけ、息も衣服も乱している。
そんなにがんばってまで魔物が倒したったの?
「偉そうに…人の家壊しといて何!?」
まず謝って!!
あたしの肩にも満たないような背格好でなによ?
「また魔法でも使って直せばいいだろ?その瞳、魔力を持つ者の瞳だ。」
確かにあたしの瞳は黄金だ。
でも、それは関係ない!
「あのねぇ、いくら魔法で直せても前と同じようには出来ないの!!簡単に言わないで!君、思い入れって知ってる?」
少年はあたしの顔を見て明らかに馬鹿にして笑った。
もう絶対許さない!!
「あんた、あたしをなめてるでしょ?」
腹の底から出た声。
「全然?」
これだから餓鬼はっ!!
なによ!その勝ち誇った顔!!
その時、よろよろとあたしの家から這い出た魔物。
何で倒してないの?
でも、さっきより小さい。
…小さい?
何で小さくなるわけ?
「シーナ!無事か?」
突然、地面に無数に転がっている粒の一つ一つが、煙のように、あたしが一番見たくない人を象る。
「父様!」
この一年連絡なんてしてこなかったのに。
やっと解放されたと思ったら、やっぱり何か仕掛けてたんだ。
今連絡してくるなんて。
「説明は後だ。召還する。」
結局これだ。
「はい。」
足下に現れたおなじみの魔法陣。
上級者にならないと魔法陣なんて作れない。
その父様の魔法陣が少年の足下にもあるとは気づかなかった。