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DAY1-2

 8時02分、S駅

 リクトとナギは人ごみを駆け抜けた。

 後ろからはまだ何体もの化け物が追いかけてくる。

「ちょっと、こいつらいつまで追いかけてくるのよ?」

「知らねえよ、俺に聞くな!」

 化け物達は人を蹴散らして猛スピードで追いかけてくる。

「ナギ、お前の能力はなんだった?」

「えっ?あんなの信じるの?」

「信じたくねーけどよ、じゃああね化け物はなんなんだよ?」

 その時二人の間に刃のような鋭利なものが割り込んだ。

 刃は風を斬る音をたてながら地面に深く突き刺さる。

「もうこんな所まで…」

 リクトは唖然とした。

 さっきまで自分の後ろを走っていた人々がみんな、そこらに内蔵をぶちまかれて地に伏してる。

 サラリーマンも老人も自分と同じくらいの学生も幼い子供も、みんなみんなピクリとも動こうとせず、ただ無気力な目を見開いてリクト達を見つめている。

 化け物は鎌状の腕を地面から抜き、生臭さと鉄の臭いが混在する独特な臭いを漂わせながら寄ってくる。

 カズキはまだ立てそうにない。

 リクトはカズキの手を握りしめる。

 返り血を浴び赤黒く光る刃がリクトの首を狙う。


 カキン


 鋭い金属音が響く。

「私の能力─」

 2尺ほどの刃が鎌をリクトの首寸前で止めている。

「現存する刃が付いている武器なら何でもすぐに作り出せる能力─」

 ナギは長い柄の反対に付いている石突で相手の鼻を潰す。

 怯んだ相手をナギは容赦無くなぎ払う。

 化け物の腹から大量の血が腸と共に流れ落ちる。

 人間としての原型を留めている左手で傷口を抑えながら怪物は倒れた。


「これが私の能力─創刃」




 8時10分、T高校

 2階はあらかた片付いた。

 次は3階に行こうか、それともそろそろこの学校からも出ようか…

 11月にさしかかり次第に日の入りも早くなりだした空。

 肌寒い廊下をそそくさと歩いた。

 歩いている途中で後ろから足音が近づいてくるのに気づいた。

 振り向くと手足が異様に長い奇妙な生物が2体。着ているYシャツには赤いシミがベッタリと付いている。

「ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛オ゛!」

 奇声を発しながら猿のようなフォームで走ってくる。

「これは逃げたほうがよさそう…」

 全速力で階段に向かうと踊場にも怪物が一匹。

「チッ…」

 反対側に戻り教室に籠もる。

 机を乱雑に寄せてバリケード紛いのもにを組み上げる。

 こんな簡易な作りでは数秒も保たないだろう…

 ゆっくりと息を吐いてから窓を開ける。

 後ろで鳴り続けるドアを叩く音わー極力気にしないようにしながらフレームに足を乗せる。

 もう一度深く深呼吸をして、思いっきり飛び出した。




 8時01分、首相官邸

 朝倉は静かに椅子から立ち上がった。

 電話が鳴っている。

「出なくていいの?」

 出てどうこうなるものではないことを朝倉はわかっていた。

 それでも電話は鳴り続ける。

「総理、車が到着しました。」

 呼び鈴が百数十回か鳴った頃、ようやく秘書が部屋に入ってきた。

 朝倉はコートを羽織って部屋を出た。

「総理の能力は何でしたか?」

 秘書が冗談っぽく尋ねる。

「能力ね…指パッチンで火をおこす能力だよ」

 朝倉の額に穴が空く。

 秘書は拳銃を朝倉の手に握らせる。

「なんか残念な能力ですね」

 秘書が電話に手をかける。

「息子の大好きなキャラクターだ、馬鹿にしないでくれ」

 秘書の後頭部に冷たい銃口が押し付けられる。

「手をあげろ」

 朝倉はグリップを強く握る。

 秘書がゆっくりと手をあげようとしたその時、朝倉は引き金を引いた。

「うわ、ひっどーい」

「別に殺さないとは言っていない」

 朝倉の能力は"不死"、このゲームを見届けなければいけない彼は最初から能力を決められていた。

 駆けつけたSPを朝倉は次々と射殺し、ホルスターを奪い装着する。

「どーこいーくの?」

「ついて来い」

 朝倉はそれだけ言うと部屋をあとにした。




 8時05分、A町

「うっひゃ~、足跡一つないとか…ワロエナイ…」

 ディスプレイを覗き込みながらはブツブツと呟く。

 ミサキはパソコンの電源を切って部屋を出る。

 洗面台で顔を洗い眼鏡をかけ直す。

「お~、ミサキ、はやいな」

「おはおーおひゃいまふはふぁふぇー」

 歯ブラシをくわえたまま返事をする。

 博士と呼ばれる40代前半の男はパンをトースターに入れる。

「博士も聞きましたかー?」

「ん、あれか?あの能力とかなんとか言ってたやつか?」

「そうそう、それですよー。あれハッキングした痕跡すら無いんですよー…」

「へぇ~、ミサキもついに負けたのか~」

「そんな言い方しないでくださいよー!」

 トースターからパンが跳ね上がる。

 博士は2つのグラスに牛乳を入れると一つをミサキに渡した。

「いや、それでですね博士」

 ミサキはバターをトーストに塗ながら喋る。

「博士が前に作ってたあのかっちょいーアレもうできてますか?」

「いーや、あれはダメ。燃料積んだらギリ立てなくなるよ」

「いや~、丁度良かったです~、非常に丁度良かったです~」

 ミサキは満面の笑みを浮かべて博士を見つめる。

「いーですかー?あれ貰っていーですかー?」

「まあ、使わないしな」

 ミサキはバターを塗ったトーストを皿に置きガレージに向かった。




 8時30分、S駅

 5体の化け物に囲まれたリクトとナギはお互いに背を託したまま微塵も動かないでいた。

 この状況のまま10分以上、2人には隙が無い。

「どうすんだよコレ、このままじゃいつまでたっても減らないぞ…」

 ナギは長刀の柄を強く握る。

「いくよ」

「ああ」

 リクトは短く返した。

 息を深く吐き出し、そして吸い込む。

「ヤァァァァァァア!」

 リクトは八相から上段に構え直すと一気に目の前の怪物を斬りにかかる。

 その時、斬ろうとした怪物が右方向に大きく吹き飛ぶ。

 リクトの身長の倍以上の大きさのロボットがゆっくりと立ち上がる。

「ムッ、生存者発見!生存者発見!至急きゅ」

 最後まで言いきる前に怪物がロボットに飛びつく。

「こっ、コラッ、まだ人が喋ってる途中でしょうが!」

 そう言ってロボットが怪物を引き離そうと首を掴んで引っ張ると、綺麗に首から背骨までが剥がれた。

「あっ、やっちった…」

「えっ、何これ…」

 サキは唖然とする。

「はじめまして、こちらジャスティスオーワン、ア…イテッ、いきなり何するんですか博士ー!えっ、4体目?そんなの別にいいじゃないですかー!」

「えっ、女?」

「あっ、はい、そうですよー。って、そんなのどうでもいいですよ!逃げましょ、早く捕まって!」

「おっ、おう…」

 ロボットはナギをを背中にのせ右手にカズキ、最後に左手にカズキを乗せて走り出した。

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