腹黒大魔王、歴史オタクになだめられる
「それ、どういう意味っすか!」
先に声を出したのは猫実だった。
いけいけ、もっと言ってやれ
打倒、腹黒会長
「え?君は何を言っているんだい?」
「壊し甲斐があるって言ったじゃないですか!」
「言ったかな?君の空耳じゃなくて?」
強い。めっちゃくちゃ強い。
流石腹黒会長。
笑顔で嘘も簡単ですね、はい。
でもね、会長。
この台詞、ゲームで姉さんに向かって思い切り言ってるからね。
私たちみたいにゲームを網羅してるヤツには通じませんよ。
・・・猫実は微妙だけど。
「絶対に言いました!・・・まさか、虹花に惚れたから、俺達の仲を邪魔しようとしているんですね!?」
「「は?」」
見事にハモりましたね会長。
嬉しくないですけど。
俺達の仲って何?とでも言いたげな顔をして、会長は私を見た。
知りません。つか、知りたくないです。
私たちはそんな仲でもないですからね。
「い、いくら俺達がラブラブだからって・・・」
「ちょ、ちょっと、霧生くん?思い切り勘違いしてないかい?」
「なにがですか!」
なにがじゃねぇよ!!!
お前の一方的な想いだろうが!
「僕は、ただ単に君たちの仲が羨ましかっただけだよ?そんな邪な気持ちはどこにもない」
「それに、猫実。わかってるでしょう?会長は___________」
【攻略対象なのよ?】
その言葉を耳元で囁くと、猫実はビクリと肩を鳴らして俯いた。
猫実の独りよがりな勘違いだよ
それを見て、会長はまた、妖艶な笑みを浮かべた。
「でもまあ・・・虹花ちゃんは可愛いからね。噂になってもいいかも?」
魔王様、降臨。
猫実の顔は引きつり、でも私の言ったことを守ろうと必死になっている。
猫実、今は助けてもらいたいんだけど・・・
・・・無理か。お前名前は猫だけど犬だもんね。
顎をクィッと持たれて上を向かされる。
ああ・・・嫌悪感ハンパない・・・
でも振り払ったら印象終わるよね。
情報収集もできなくなるよね。
・・あ、これ決して姉さんのためじゃないよ?私のため。
失言しないようにするためね。
「ケケケッ!お前ら何してんだ?楽しそうだなァ、修羅場かァ?」
「・・・怜夢、邪魔をしないでくれるかな」
「魔王様降臨かよォ?うげぇ。面倒だなァ、オイ」
神だ。
神が舞い降りたぞ。
この口の悪い男は沖田怜夢。
俺様な副会長だが、その本性は生粋の歴史オタク。
この学園でその歴史に対する姿勢はピカイチらしい。
副会長に邪魔をされ、会長は気が立ったのか私を離した。
それを綺麗に猫実がキャッチしてくれる。
ありがとう猫実。
「んー?それにしても、誰だァ、そのオンナとオトコ!」
「桜月虹花ちゃんと猫実霧生くんだよ」
「オウヅキィ?・・・あー!あのバカオンナの双子の妹とかなんとか!」
なんだと
姉さんは副会長とも面識があったのか。
そしてこの嫌われよう。
また失言したんだな。
ふっ・・・馬鹿な女だ。
「あの、姉さんが何か・・」
「何か~?って可愛いなァ!お前は印象結構いいぜ?姉の方は最悪だけどなァ!」
お、おい、なんか本気で心配になってきたぞ
あの女、ゲームより馬鹿になってないか?
そして猫実。
ぶつぶつと「恋敵・・」とか言うな、怖い
「まァ、なんにせよォ、落ち着けってェカイチョー?」
「・・・はいはい、わかったよ。ばいばい虹花ちゃん。・・・と霧生くん」
「俺はついでか」
否定は出来ないけどね。
ひとまず腹黒会長と歴史オタク副会長のデータはとれたかな
「猫実、ありがと」
「情報収集のことか?」
「うん」
「別にいいって。大丈夫」
猫実は霧生に昇格だな
喜べ少年。
そんな和やかな雰囲気に包まれたのもつかの間
「あれぇ?二人とも、どぉしたの?」
元凶登場ですか。