告白=私には迷惑。
「ということだから、虹花!」
「うるさいわねぇ、なに!?」
転入から一週間。
これといったイベントも起きていないし、姉さんも誰とも接触してなさそうだ。
今日は、すでに日課となってしまった、猫実とのランチを楽しんで?いる。
「虹花、付き合ってくれ!」
「だから、それは出来ないって言ってるでしょ!」
そして、毎日のように告白される。
彼にとって、虹花は天使であり、女神であり、初恋の人であるというのだ。
全く、はた迷惑な話である。
「虹花と俺が付き合っちゃえば、俺がアイツに攻略される可能性もなくなるだろ!?」
「なくなるかもしれないけど、私は付き合う気ないから!」
「なんで!?」
私は一応名前も出てくるキャラクターで、
それはものすごいモブかもしれないけど、居なかったら物語に支障が出てくる人だと思う。
それは、猫実も同じで。
というか、猫実の場合、もっと駄目だと思う。
「猫実が私に告白して、仮に私と付き合ったとする。
でもさ、よく考えてよ。
それって姉さんの攻略キャラクターが一人減るってことでしょ?」
「んまぁ・・・そうだな?」
「出歩きイベントとか、三角関係イベントを含めたら、すごく物語に支障がでるでしょう?」
私が言葉を発すると、一瞬ハッとした顔をして
すぐに落ち込んだ。
落ち込みが早すぎる。
彼と私は、絶対に結ばれない位置にいる。
結ばれる必要性もないし、別にいいとは思うけど。
猫実は、それが嫌らしい。
「猫実、いい加減諦めてよ」
「あのさ、いい加減猫実って呼ぶのやめてくれない?」
「猫」
「もっとひどいだろ!」
ただ単に霧生と呼びたくないだけだから。
察してほしい。
もうこの際猫でよくね?と思うのは私だけだろうか。
「猫ちゃん」
「ナイスっっ!いい!超いい!」
「・・・・気持ちが悪い」
猫ちゃんは却下だな、と心の中で誓った。
やっぱり猫実か。
それにしても、猫実は悪い女に騙されそうで怖い。
姉さんとか姉さんとか姉さんとか?
・・・・姉さんばっかりだなぁ。
「随分楽しそうな話をしているね。僕もランチ、一緒させてもらって構わないかな?」
「あ゛?虹花とのラブラブなランチタイムを邪魔すんじゃね・・・」
「え?っていうか、いきなりなんです・・・・」
「「!?!?」」
「あぁ、紹介が遅れたね。僕は伏見昊空。生徒会長だよ」
「・・・お、俺・・・じゃなくて、ボクは猫実霧生・・・デス」
「桜月虹花です。」
いきなり腹黒会長のお出ましか。
でもこんなイベントあった?
静かに猫実に目くばせすると、「会長は俺の虹花ちゃんとかかわらないぜ?」という返答がきた。
俺のはいらねぇよ。俺のは。
「虹花ちゃんと霧生くんか。虹花ちゃんは、お姉さんとは違って常識わかってそうだね」
「え?お姉ちゃんと面識があるんですか?」
「一応ね」
ニコリと微笑む会長からは「あんな女、一生関わりたくない」という気持ちが見え隠れしていた。
というより、姉さんは既に接触していたのか。
危ない危ない。見落とすところだった。
「虹花の姉さんって、どんな人なんすか」
「え、ちょ、猫実・・」
私が焦ると、猫実は「情報収集の手伝い」と言った。
有難い。
姉さんはそういう事も聞いてくるからなおさらだ。
「姫蘭梨さんのことかい?」
あまり好感度は高くないようだ。
"ちゃん"ではなく"さん"と呼んでいるあたり、双子で苗字が同じだから仕方なく、と言ったところか。
「好んで会いたくはないかな。
なんというか、つかれる。肩がこるんだ、彼女と居ると。
自分を着飾っているというか、媚びているというか。
はっきり言うと、嫌いだね」
猫実も私も、声が出なかった。
姉さん、アンタ何をしたんだよ!?
どんだけ嫌われてるんだこれは・・・!
しかも、これは本音らしく、嫌悪感をあらわにしていた。
「だから羨ましいな、二人みたいな関係は。恋人同士かい?」
「え?」
「そうなんです!俺達、超ラブラブなんです!」
「ち、違います!恋人じゃありません!」
「そうかな・・・ふふ」
猫実は言葉に舞い上がっていたし
私も照れくさくて冷静じゃなかった。
だけど、去り際に聞こえた言葉は、ちゃんと耳に入ってますよ
「・・・・壊し甲斐があるなぁ」っていう台詞は。