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姉さんと私と、○○。

一人攻略キャラ出ます。

「お姉ちゃん!今日からだね、新しい学校!」

「そうね、楽しみ♪」


あ、うん、そうですか。

心の中で冷たく返答しながらも、私は笑顔を張り付けていた。

私は桜月おうづき 虹花いろは

姉を敬愛し、誇りに思っている・・という設定の平凡少女だ。

あえて設定という理由は、ここが乙女ゲームの世界であり

私がその虹花に転生したため、虹花本人ではないからである。

それがわかったのは、つい最近なのだが。


「どうしたの?虹花ちゃん?」

「なんでもないよ、お姉ちゃん」

「そお?辛くなったら言ってね?」


傍から見れば優しい姉。

仲の良い姉妹。

・・傍から見れば、だが。

正直私は、姉を快く思っていない。

理由を言えば妬みに聞こえるかもしれないが、そうではない。

だが、こう言っても、体験しないとわからないと思う。


一つは空気の読めなささ。

もう一つは、姉が完璧すぎると、よく比べられる。

お陰様で、最近では「姫蘭梨ひらりちゃんより虹花ちゃんは可愛くないね」、とまで言われる。

なんて迷惑なんだ。

私は決して不細工な方ではないと思う。

綺麗に整った方でもないのだが、姉と比べられたらおしまいだ。

二卵性だからしょうがないのかもしれない

だが、私と姉は違いすぎるのだ。


女の子の魅力を、これでもかという程詰め込んだ姉。

地味で、これといった魅力もない私。


わざわざ比べるなんて酷だ。

あんまりだ。


「虹花ちゃーん!はやくー!」

「あ、うんっ」


だから私は、ゲームでの虹花の思考を理解できなかった。

どうして彼女を尊敬できたのか。

どうして彼女を誇りに思えたのか。

虹花は、ルート次第ではライバルキャラにもなる。

だが虹花は他のライバルと違い、自分から身を引くのだ。


【お姉ちゃんは可愛い。あの人だって、私なんかよりお姉ちゃんがいいに決まってる】


そしてエンディングでは、涙をこらえながら姉を祝福する。

良く言えば良い子。悪く言えば可哀想な子。

自分の幸せより姉を優先する。

理解できなかった。

虹花のスチルは、見ていてとても胸が痛い。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん」

「なあに?」


猫なで声。

なんか、腹立つ・・・


「私、お姉ちゃんの力になれるように頑張るね!」

「ありがとぉ!」


・・・本音を言ってしまえば、したくない。

何故こんな姉のために、私は情報集めに勤しまなければならない?

解せない・・・まったく解せない!

だがそれが私の役割なんだ。

腹をくくろう。


「・・・虹花ちゃん・・」

「え、なに?お姉ちゃん」

「私たち、クラス離れちゃったね」


クラス表を見て、あからさまにショボンとする姉を横目に

私もクラス表に目を通す。

2-C。

ちなみに姉は2-Aだ。

2-Cには、なんと猫実ねこざね 霧生きりゅうが居た。


「そうだね、お姉ちゃん・・」


私もあからさまにショボンとすると、姉は満足そうだった。

くそ、むかつく。


「・・・見えねぇんだけど。どけよ」


低温ボイス。

聞きなれた声優さんの声。


「ね、猫実霧生・・?」

「・・・なんでお前俺の名前知ってんだ」


一瞬驚いたのか、猫実は肩をならした。

だがすぐに、いつもの仏頂面に変わり、クラス表を見つめる。

そして、彼はまた驚いたように私を見ると、いそいそと帰っていった。


(なんだ、アイツ)


明らかに動揺していた。

アイツも姉の可愛さに惚れたか。

だったら、ちょっと軽蔑する。


いや、まて。

彼ははじめ、姉にいい印象を抱いていないはず。

むしろ虹花と仲が良かった。

猫実のルートだった気がする。

虹花が酷く可哀想な運命を迎えるのは・・。


「虹花ちゃん?・・・さっきの人、失礼だったわね。野蛮だわ」

「駄目だよ、そんなこと言っちゃ」


未来の彼氏候補なんだから。


「うー・・・じゃあ行こ?遅れちゃうよ?」

「そうだね、お姉ちゃん」


そう言われてつながれた手。

嫌悪感しか湧かなかった自分が憎い。




「・・・・虹花、ちゃん」


猫実がそう呟いていたのは、聞こえなかった。

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