1、このコピペへの疑念
このコピペ、随分と早い時期から「偽物なのではないか?」と取り沙汰されています。
主にF先生のコアなファンの方から出ているのですが、大きくまとめると以下の三つになります。
A,藤子先生の一人称
B,藤子先生が「ハーブ」とか「ロブスター」という言葉を使うか
C、藤子先生が「普通の学校まんが」を批判している?
Aについては、読んだ当初から確かに気になっていました。藤子先生の一人称は講演やコラムの別なく一貫して『ぼく』です。しかし、このコピペの中ではずーっと『私』が用いられています。藤子F先生のファンたちは、この一点だけでも相当怪しんでいます。
Bについてもそうです。藤子先生は児童まんがの世界でずっと活躍されていたこともあり、出来るだけ簡単な言い回しや単語選びをなさっていることが多いのですが、このコピペに関しては、ハーブやロブスターという、1996年までの子供にとっては今一つイメージしづらいものを例に挙げています。「あの親切な文章を書く藤子先生らしからぬ」という意見が出るのも致し方ないところかな、とも思えます。
Cについても相当小首をかしげている人が多いですね。だって、F先生の代表作であるドラえもんやオバQなんかは子供を主人公にした「学校まんが」です。もちろん、その中にファンタジー風味やSFの味を盛り込んだのが藤子F先生ですが、児童まんがの世界をけん引していた「まんがの王様」が、自分の商売を否定するようなことをわざわざ言うだろうか、という疑問が湧いて出ますね。
そして、このコピペの来歴にも怪しいところがあります。
まず、このコピペが出回り始めた年月。インターネットの海にこのコピペが登場し始めたのが2007年ころ。しかし、藤子F先生がお亡くなりになったのは1996年です。つまりこのコピペは藤子F先生の死後十年を経てインターネットに現れたということです。
もちろん、この来歴だけでは、誰かが生前の藤子F先生の著書や発言をインターネットにあげた可能性も否定はできません。
しかし、このコピペについて、いまだに原典が見つかったという報告が出ていないのもおかしな話です。
藤子F先生といえば、いまだにドラえもんの映画が毎年封切られていることからもわかるとおり、よく名前を知られ、最近では全集まで公刊されるほどに今日的な人気を誇っている作者です。そのような大作家さんの発言やコラムが、五年余り経ってもなお見つからないというのは少々不自然です。
と、このように、現状であってもなお、あのコピペを藤子F先生のものであるとしてしまうのは危険な気がするなあ……、という感想を持っていただけるのではないでしょうか。
つまりこのコピペ、
・出典不明
・その作者とされている人物の死後十年余りで世に出た
・その作者らしからぬ点がいくつかある
と、偽書(書いた人物や時期を偽った本や古文書のこと)の典型のような文章なのです。




