第7話 とある双子の奮闘
えー、そんなー。ひどいよ高橋さん。
一夜が言うには、僕は高橋さんに騙されたらしい。ということは、ゲームの内容も変わってるということなのだろう。彼女は一体何をしたかったんだか。
……気になるな。
僕は改造されたゲームの中身にものすごく興味を惹かれた。とりあえずさっさと先程まで画面いっぱいに映っていたゾンビを片付ける。
そんな僕を訝しげに――いや、半ば呆れたように、一夜は横目で見ていた。
「このゲーム、クリアしちゃおう」
僕は一夜にそう宣言して、また画面に向き合った。
***
"一夜"はいつまで経っても終わりの見えない薄暗い廊下を、ひたすら一心不乱に走り続けていた。
早くこんな不気味な廃屋から抜け出して、"千夜"を見つけなければ――
"一夜"の兄"千夜"は、村の古い言い伝えである『神隠し』に遭って行方不明となっていた。"一夜"はそんな兄を捜すために、『神隠し』について調べていたのだ。
ところが、徐々に体力も精神も限界に近づいていく。息切れが激しく、心臓は破裂しそうなぐらいだ。
しかし、だからといって、走るのをやめるわけにはいかない。背後から何かが――いや、"何者"かが自分を追って来ているからだ。
その"何者"かは、全くスピードを緩めることもなく、徐々に"一夜"に迫ってくる。
まずい……このままじゃ本気で追い付かれる――
"一夜"は廊下の角を曲がったところで、
どこか隠れられそうな場所がないか辺りを見渡してみたが、そんな場所はどこにもない。
そうこうしている間に、その"何者"かがすぐ後ろまで迫っていた。
もうだめだ――
"一夜"は覚悟を決めて、固く目を閉じた。
『"一夜"!!』