第6話 とある双子の疑惑
僕はコントローラーのスタートボタンを押したところで、なんとなく横にいる一夜の様子を伺ってみた。
「……」
仏頂面に拍車がかかってる。例の如く機嫌がよろしくないらしい。まあいつものことだから気にすることもないだろう。どうせ付き合ってくれるんだし。
気を取り直して画面に改めて向き合う。まず初めにしなくてはならないことは、初期設定である。
要するに、主人公たちの名前、容姿などを決めるということだ。
「ねぇねぇ、名前はそのまま僕たちのでいいよね?」
「……」
無言で睨まれた。どうやら嫌らしい。
結局僕は、一夜の無言の拒否を無視して僕たちの名前を主人公たちに付けた。ついでに容姿もできるだけ似せて。
「……」
横から不機嫌オーラ全開な気配がするけど気にしない。ていうか、気にしたら負けだと思う。
さてさて、これで全ての準備が整った。開始ボタンを押し、プロローグが流れ始める。……なんだかホラーらしい音楽が流れ始めた。地味に怖いな。
***
「やばいやばいやばい!なんかゾンビみたいなの出てきたよ一夜!」
「……」
なぜかプレイしていくうちに神隠しと関係なくなってきた。なぜだ。
「おかしいなぁ……これってゾンビゲームじゃないよね?何でゾンビが出てくるわけ? どういうことだよ高橋さん」
「誰だそれ」
とうとう一夜が口を開いた。ていうか、今日初めての言葉がそれかよ。
でもまあやっと一夜がしゃべってくれたわけだし、質問には答えてやろう。
「高橋さんは僕たちのクラスメイトだよ。覚えてないかな? ほら、パソコンとゲームが大好きな眼鏡のゲーマーちゃん」
「……知ってる。その高橋がどうした」
なんかさらに一夜の機嫌が急降下してる…。正直に答えないとうるさく(?)なりそうだな。
「高橋さんから買ったんだよ。中古でなんと五百円!遊び終わったからって格安で譲ってくれたんだよ」
「……」
高橋朱希さんは、僕たちのクラスメイトなゲームオタクだ。見た目は普通に眼鏡をかけた真面目そうな子なんだけど、中身は普通に今時の子。
最近やっと僕はクラスの皆に慣れて、普通に会話できるようになった。(一夜は変わらず無口だけど)その過程でできた友達の一人がその高橋さんなのである。
一夜は僕の言葉を聞くと、さらに不機嫌になってしまった。なぜだ。僕は何も悪いことしてないのに…。
「兄貴、そのゲームはおそらく高橋が改造したものだ。騙されたんだな。」
……えー、そんなー。ひどいよ高橋さん。
2013/1/13 少し改稿しました。