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とある双子の非日常  作者: 吹雪
第6章 天敵襲来
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第27話 とある双子の結果発表

「一夜、できた? 僕はもうできたけど」

「俺も終わった」


 芸術コンクールが開催されてから数時間。もうすでに五限目のチャイムが鳴り終わっている。そろそろ作業を終わらせて、美術室に提出しに行かなければならない。


 夕陽に染まった茜色の空を見上げながら、兄貴は軽く背伸びをしている。ずっと座りっぱなしだったから、腰や背中が痛くなったのだろう。俺も少し痛みを感じる。


 それでも俺たちは、すがすがしい気分だった。今日の絵は、今までで一番の渾身の力作だと言えるだろう。


 ――この作品であの綾小路姉妹に負けたりなんかしたら、俺は本気で筆を折ってやる。


 兄貴に言ったらキレるだろうから言わないが、俺は本気でそう思っていた。


「お、できたのかー? 見せてくれよ」

「あれ、父さん……じゃなくて、姫宮先生だ」


 いつの間にか、父さん……ではなく、姫宮先生が俺たちの後ろにニコニコしながら立っていた。兄貴はなんだか嬉しそうな表情ではにかんだ。


「じゃじゃーん! 見よ! 僕たち姫宮兄弟の力作を!!」


 兄貴はおかしな効果音をつけて言った。先生は俺たちの作品を何度も見比べると、唖然とした。


「……えーと……いや、すごいんだけどさ……まさかとは思うがそれって……」

「ふふん、みなまで言っちゃ駄目だよ先生。これはね、僕たちの人生の中では最高の力作なんだからね! ¨種明かし¨は明日まで楽しみにしておいてよ!!」


 兄貴はそう自信満々に言いきった。先生は顔をひきつらせて苦笑いしていた。


「……一夜、それはありなのか」

「……ルール上は有効だ」

「マジか」


 先生が驚くのも無理はないが、俺たちは何もルールには違反していない。


 兄貴は先生の反応に満足すると、道具の片付けに入った。俺も片付け始めると、先生は何を思ったのか、こんなことを言い出した。


「よし、お前たちがその絵で賞を獲ったら、週末は家族四人で寿司パーティーだ!」

「え、本当に!?」

「ああ! もちろんだ!」


 またしても先生は自分で自分の傷を拡げやがった。どうなっても知らねえぞ。


「一夜、一夜! 頑張ろうね!!」

「もう頑張れねえよ馬鹿」


 そんな会話をしたところで、俺たちは今日の渾身の力作を美術室に提出しに行った。


***


『それでは昨日の芸術コンクールの結果発表及び授賞式を行います』


 マイク越しの開催宣言が響いた。


 翌日の放課後。全生徒が体育館に集められて、結果発表と授賞式が始まった。正直言ってかなりめんどうだが、まあ仕方ないだろう。


 まず最初に、一般枠の結果発表と授賞式が行われた。これはまあ、それなりの作品って感じだったな。少なくとも、うちの下手な部員よりは上手いとでも言っておこうか。


 兄貴はと言うと、俺の隣でニコニコしながら拍手をしていた。時折俺にちゃんと拍手しろと小突いてくることもあったが、そんなことはどうでもいい。


 それよりも重要なのは、次の美術部枠だ。


 この体育館に集められる前に、俺たちはクラスの連中から温かい(?)声援をたくさんもらった。


「絶対勝てよー」

「きっと姫宮くんたちが入賞だよ!」

「あの高飛車姉妹に一泡吹かせてやれ!」


 ……などといったものだった。兄貴はかなり嬉しそうにしてたな。というか、やっぱりあの姉妹は人気ないんだな。


「一夜、始まるよ」

「……」


 兄貴はいつも通りの楽しそうな表情で俺に知らせた。俺は無言で頷いて正面をじっと見つめた。


『――それでは次に、美術部枠の結果発表に移りたいと思います。まず優秀賞――』


 それまで少しざわついていた体育館が、一瞬で静まりかえった。辺りに緊張が走る。主に俺たちのクラスに。


『――一年八組、綾小路美咲』


 空気が凍りついた。



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