第2話 とある双子の考察(1)
「差出人は、誰なんだ……?」
一夜に送られた差出人不明のラブレター。手掛かりは差出人の名前として書かれた『Y』と、一夜に荷物持ってもらったという真偽不明の話だけ。
なんだかこれって――
「面白いな」
「……」
僕がそう呟くと、一夜はあからさまに嫌そうに顔をしかめた。失礼な奴め。
「差出人の女の子が誰なのか考えようよ。気になるじゃないか」
僕は溢れ出す好奇心を隠せずに言った。一夜はそんな僕を見て、仕方ないな、とでもいうかのように溜め息をついた。
どうやら僕の好奇心を満たすために協力してくれるらしい。なんだかんだ言って(?)も優しい弟である。
「それじゃ、推理開始だね」
「……」
一夜は無言で首を縦に振って頷いた。さて、ここで簡単に問題を整理してみよう。
まず初めに気になることは、差出人『Y』がイニシャルなのか、それとも適当に付けた名なのか。 もしもイニシャルならば、僕たちのクラスの女子は全員候補から除外される。
もう一つ気になることは、その『Y』さんが言うには、あの一夜が彼女の持っていた荷物を持ってくれたという。
非常に残念だけれど、一夜がそんな親切で気のきいたことを女子にしてあげるなんて、にわかに信じがたい。
「……と思うんだけど、何か意見はある?」
とりあえず僕は自分の疑問と意見を一夜に伝えた。僕の意見を聞いている間、一夜は腕を組んで何か思案するかのように目を閉じていた。
しかし、僕の意見を聞き終わると、閉じていた目を開いて今日初めて声を出した。
「ある」
今日の一夜の第一声である。羨ましいぐらいの美声だ。僕は一夜の声を聴くことができる数少ない内の一人だから、実はちょっとだけ優越感に浸っていたりする。
「まず第一に、そもそも差出人『Y』は絶対に生徒なのか?」
「え……?」
確かに。言われてみれば、この学校にいる女子は生徒だけではない。当然女性教師もたくさんいる。でも流石に、先生が生徒にラブレターで告白だなんて……。
「それは流石に無「第二に、」遮るなよ」
無理がある、と言おうとしたら、一夜は無視して話を続けた。……地味に悲しい。
「手紙の中の『姫宮くん』は、本当に俺か?」
「は……?」
ちょっと待った。それは話の根底をくつがえすことなんじゃ?