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とある双子の非日常  作者: 吹雪
第3章 まさかの補習授業
10/55

第10話 とある双子の夏休み

 突然だが、僕たちの父親である姫宮冬夜ひめみやとうやは、我らがK高校の社会教諭である。特に専門としているのは、世界史だそうだ。


 そんな父さんの教育理念は"個性は大事に"である。なぜそんなことを言っているのかというと、人と同じであることは大切ではない、ということを高校時代に学んだかららしい。


 なんでも、父さんは高校時代に僕たちの母さんに出会い、その異質な個性に魅せられたとのことだ。


 こんなことを言っていると、僕たちの母さんは一体何者なんだ、という疑問が出てくるが、母さんのことは置いておこう。


 さて、そろそろ本題に入ろう。僕たちの父さんがなぜ話題にのぼるのか。それを説明するには、一学期終了間近に迫った七月半ばのことを話さなければならないだろう。




「お前ら、夏休み補習な」

「え」


 時期は七月半ば。ギラギラ照りつける太陽が、いい加減うっとおしく感じてくる季節に突入した。見よ、この眩しいぐらいに青い空を! 真っ白な綿あめのような入道雲が浮かんでいて、ああ……夏なんだなぁなんて思い始めてきた。


 正直言って夏はあまり好きじゃないから、最近ちょっと憂鬱だったりする。


 ……まぁ、そんなことはどうだっていいんだよ。それよりも重要なのは、たった今僕と一夜が受けた宣告だ。ちなみにここは、生徒指導室である。


「……えーっと、僕たち、学年次席と主席なはずですけど?」

「ふざけんなこのエセ優等生ども」


 ヒドイ暴言だな。流石の僕も傷つくよ。


 先生は眉間に皺を寄せて若干ひきつった笑いを浮かべている。


 どうやら僕と一夜は、学年次席と学年首席でありながら、夏休み補習を受けなければならないらしい。……何でだろ。一夜だけならともかく。


「……めんどくせぇから断る」


 おっ一夜がしゃべった! 今日は喋り出すの早いな!


 一夜は心底めんどくさそうに顔をしかめている。先生相手にもお構い無しの態度だ。そんなんだから先生たちに目をつけられるんだよ。


「めんどくせぇじゃねえよ。お前ら成績だけは優秀だけどな、授業サボり過ぎなんだよ」

「え、ちょっと待って先生。僕はちゃんと出てますって!」

「先月まる一日サボっただろ」

「それだけで!?」


 ああなんてことだ……先月のゲーム騒動の報いを今さら受けることになるなんて……! 恨むよ高橋さん!!


***


「ねー、父さーん勘弁してよ~」

「だーめーだ」


 その日の夜。僕は自宅にて、必死の説得を続けていた。


 先ほど僕たちに非情にも補習宣告をした先生。つまりは僕たちの父さん姫宮冬夜は、僕の説得(というかお願い?)に全く応じないでいた。


 ……なんか泣きそうだ。それでも僕はめげないぞ。土下座でもしてやろうかな……。


「千夜、何でお前そんなに補習がいやなんだ? 俺なんか、高校時代はいっつも補習だったぞ?」

「……父さんよく教師になれたね」

「凄いだろ」

「褒めてないって!」


 父さんのボケに、僕は思わず突っ込んだ。何でちょっとドヤ顔なんだよ。


「大体さ、先月のサボりは許してくれたんじゃなかったの?」

「……それは、まぁ、そうなんだけどさ……」


 父さんはなぜか僕から目をそらして言い淀んだ。若干冷や汗をかいている。


「母さんが、なあ……」

「母さんの差し金か!!」


 どうやら母さんの差し金らしい。尻に敷かれすぎだろ父さん。


 ちなみに母さんは偶然にも今夜は仕事で家にはいない。


 ――母さんが言うなら仕方ないのかな……。


 僕は結局説得を断念した。母さんには逆らえません。


「一夜、諦めて一緒に頑張ろう!」

「……」


 一夜は心底呆れた様子で、空元気の僕の頭を軽く叩いた。……地味に痛いよ。


2013/1/13 一部改稿しました。

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