第9話 -ひかり-
「殺すか。」
その言葉を投げかけられたのを最後に、俺は闇へと消えた。
微かに意識があったのが、温かい何かに包まれながらふわふわとした感覚に
居心地の良さを感じたことくらいだ。
「……っ!!!!」
俺は、意識の輪郭がはっきりすると昨夜のことを思い出だし勢いよく体を起こした。
そこで初めて自分が寝ていたことに気づいた。
記憶をどんなに辿っても俺は、綺星さんに命の手綱をいきなり切られそうになっていた時を最後に思い出せない。
ましてや、無防備に眠るなんて。
そんなことでぐるぐるとしていると、いきなり襖が開く。
部屋に入るなり殴られていたあの頃の記憶は蘇り無意識に、部屋の角へと逃げた。
そして、襖の方を見るとその俺の様子に驚いた表情を見せる桜夜さんの姿があった。
「ごめんねぇ驚かせて。蒼空おはよぉ」
相変わらずしゃぼん玉のような話し方をする桜夜さん。
「そんな隅っこにいないでこっちおいでぇ。朝ご飯あるし着替えもあるよ」
そう言いながら手に洋服を持ちながら部屋へと入って来た。
そもそも、この部屋が誰の部屋なのかもわからないが。
「あの。桜夜さん。その、綺星さん、は?」
「えぇ?蒼空、僕じゃなくて綺星に会いたかったのぉ?悲しいな」
「え!?えっと、そういうことじゃなくて!そのっ」
「あはははは、嘘だよ。本当に、蒼空は、からかいがいがあるよねぇ。
綺星なら、蒼空を運んでからどっかに出かけたよ。」
「俺を、運ぶ?」
想像もしていなかった言葉に思わず固まる俺。
「あぁ、そっか。覚えているわけが無いよね。
蒼空はね、綺星と話している最中に意識飛ばして、ここに連れてこられたんだよぉ。なんか、施設の先生のことについて話してたらしいけど?」
「先生の?」
え?でも、あの時はっきり。
「「殺すかって」聞かれたでしょ?」
俺の声と合わさりながら桜夜さんの言葉が聞こえた。
「あの後ね、繋がりのある警察に蒼空がいた施設の情報を売るために
うちの奴等がもう少しあの施設のことを探ってたら、子供たちが寝ている時に撮ったんだろうけど裸の写真だったり、小さい子たちがプールに入る時の動画を売っていたことがわかってね。
それを、聞いて改めてあいつが生きている必要がないと思って、蒼空に実際、殺すことも出来るよって聞いたんだと思うよぉ。」
「あ、え。そういうこと、?」
戸惑う俺の前に、桜夜さんが微笑みながら座る。
「綺星、顔怖いからねぇ自分が殺されると思ったでしょ」
「…う、ん。実は。それで多分、疲れとか色々が重なって気絶したのかな」
俺の言葉にケラケラと笑う桜夜さん。
「まぁまぁまぁ、安心しなよ。最初は、色々あっていつでも殺せるように近付いたんだろうけどほんの数時間で、新しい玩具でも見つけたような顔してたからさ。」
「玩具…。」
「そうそう、それに僕はねぇ蒼空のことを気に入っているんだよ。
僕は僕で、楽しい玩具を見つけたからさ。それを僕の許可なく壊すんなら…
”俺”が、綺星を壊すしかないよね。」
空から朝を知らせる光が、部屋一面を照らしているのに、そこにはいつまでも夜が置き去りにされているような。
気が付けば俺は
星にも
夜にも
支配される空となっていた。




