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空を飼い慣らす星の鎖ーステラドックスー  作者: Liar.


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第5話 -すくい- 

俺は、救われてしまったのだろうか。


どこに向かっているのかわからない車内でそんな事を思っていた。

あの施設には、本来なら保育園や幼稚園に通うくらいの幼い子供もいて、あの先生が

義務でもないそこに通わせるわけもなく、劣悪な環境で生きている。


それでも、あの子たちは俺の事をお兄ちゃんと呼び僅かに生きる理由をくれていた。

そんな子たちを置いて、俺は、俺だけあの場から逃げてきた。


「…ねぇ。」


俺が彼の方に視線を向けながら呟くと、ん?と小さく答えながらこちらを見てくれた。

今まで、俺の話を目を見て聞いてくれた人はいただろうか。


「俺の命って、貴方にひとつお願い事をできるくらいの価値はある?」


俺の言葉に彼は少し、怪訝そうな顔をする。


「そのお願い事の相場にもよるんじゃないか?」

「そうだよね。言うだけ言ってみてもいい?」

「ああ。」

「…先生に指示されて体を売って金を稼いでいたことがあった。あの施設には、下は保育園児、

上は小学高学年の子たちがいる。遅かれ早かれ俺がいなくなったしわ寄せが彼らに行く。

あんな思いは他の子たちにさせたくない。

死ねと言われれば死ぬし、殺せと言われればあなたの代わりに誰かを殺して見せるっ。

だから、こんな命いらないかもだけど、どうにか皆を助けることは出来ませんか…?」


俺は彼に、精一杯頭を下げる。

こんな無責任なお願い聞き入れてくれる訳が無い。

そんなことはわかっているけど、今俺にはここですがる以外、方法がない。


「ああ、俺だ。」


頭を下げる俺をよそに彼はどこかに電話をかけている。

…無理か。

どうしよう。警察?でも、証拠も何もない。取り合ってくれるか?

そもそも、俺ってこの状況で自由に動けるタイミングあるのか?


どんなに思考を巡らせても、何も案が浮かばない。


「証拠はあるだろ?そのまま渡せ。その後の処理も任せる。」


どうやら通話は終わったようだ。


俺は目の前が真っ暗になる感覚を味わいながら頭を上げる。

すると、こちらを見る彼と目が合う。


「あいつの行動は元々目に余っていた。

お前には特に言うつもりもなかったが、あの施設の情報は繋がりのある警察に

渡す予定だったんだ。金と子供たちの将来に責任を持つことを条件に、な。

お前の思う助けるになっているかは知らないが、お前の思う最悪な未来にはならないと思うぞ」


じっとこちらを見ながら話す彼。


「そ、うなんだ…。あの、ありがとう、ございます。」


状況が把握しきれない俺はたどたどしくお礼を言う。


「…ふっ。」


彼は小さく笑うだけだった。


「あと、お前の命の価値だが、今のところあの”落とし物”を狙う奴らには価値があるかもしれないが俺には、ペットを拾ったくらいの価値だな。」

「…ペット?」

「ああ。玩具と言おうか迷ったが、玩具は流石に失礼かと思ってな。」

「…はぁーっ。どっちも失礼だと思うけど?

あぁ、もういいや。ペットになったついでに言うけど、俺、お前じゃなくてそらっていう名前があるから。」

「…そら。どう書くんだ?」

「…草冠に倉と普通に空。あんたは?」

「あやせ。綺麗の綺に星だ。」

綺星あやせ、さん」

「ああ。」

綺星あやせさん」

「…なんだ?」

「いや、なんか誰かの名前を呼んだのが久しぶりでなんだか嬉しくて。」

「ふっ、そうか。蒼空そら?」

「っな、に?」

「やはりな。その様子じゃあ名前を呼ばれるのも久しぶりなんだろ?」

「うん。」


なんだか、凄い落ち着かない。


「ねぇ!なんかお腹空いたんだけど!」


耐えきれなくなった俺は、思い出した空腹を武器に話題を変えた。

その様子に、綺星あやせさんは笑った。


「わかった。ペットの世話はしないとな。」

「はぁー。あ、そうだ。綺星あやせさん。

あの、俺を連れ出してくれて、施設のみんなを救ってくれて。本当にどうもありがとうございます。」


綺星あやせさんに頭を下げ感謝を伝えると、また、少しだけ笑った声が聞こえた。


気恥ずかしくなった俺は、座席に座り直しまた窓の外の移ろう景色に目を向けることが精一杯だった。




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