第4話 -ほし-
きっと、俺は前世で大量殺人でも犯したんだろう。
じゃなかったらこんな理解不能な人生を送るはずがない。
目の前の紙芝居にそんなことを思いながら
勝手に流れていくそれを傍観者のように眺めた。
そんな俺に、彼が視線を向ける。
「急で悪いが、荷物をまとめて来てくれるか?」
彼の言葉に、傍観者ではないんだと改めて気付かされる。
「おい!!!聞いてんのかよ!クソが!
さっさと消えろ!!!」
先生も、俺の事をさっさと遠ざけたいらしく俺の動きを促す。
俺は、無駄に冷静で自分の部屋へと行き、持っている中で一番大きな鞄を取り出し
荷物を詰めた。
とは言え、特に荷物もない俺の鞄の中身はスカスカだった。
住み慣れた部屋を出るとき、名残惜しさを感じるかと思っていたが何も感じることはなかった。
そんなものを感じられるほど、状況が飲み込めていないらしい。
「先生。」
荷物を抱え先生の前に立つ。
「なんだ、最後に泣かせる言葉でも伝えるか?」
ニタニタと笑いながらこちらを見る先生。
「そうじゃなくて。
ここにいる他の子たちの事は、もう少しいい環境にしてあげてください。」
俺の言葉に、先生の顔から表情が消え拳が握り上げられた。
きっとこれが最後だろう。
そう思いながらいると、突然頭上から声がする。
「申し訳ないが、もうお前の所有物ではなくなった彼に勝手な事をしないでくれるか?」
先生の腕を止める彼の眼は、冷静に獲物を見るような眼をしていた。
先生も、その表情から察したのだろうすぐに腕を下げると、舌打ちをし建物の中へと戻った。
「どうする?」
この場には俺と彼しかいない。
なら、この問いは俺にだろう。
「何が?」
「終わるか、進むか。お前に選ばせてやる。」
選ばせてやる?
ふざけたことを言う。
「随分優しいんだね。でもそれ、俺に選択肢ある?」
「死にたいんなら、俺が殺してるぞ?
息を止めるのが苦しいから死にたくないんだろ?
そんな苦しめずに、殺してやるさ。」
随分有り難い提案だ。
「わかった、自分で選ぶよ。答えはどちらでもない。」
俺の答えに、彼はこちらを見る瞳に、少しだけ力が入る。
「俺を連れ出してよ。こんな無意味な世界から。行った先で死にたくなったら殺して。」
俺が言い終わると、彼は少し口角を上げて小さく何度も頷きながら言う。
「わかった。いい答えだな。」
「…でもさ、もともと俺の事連れて行くつもりだったでしょ?
なに?そんなにあの”落とし物”は、危険なものだったの?」
「……ああ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「なんだ、聞いておいてその反応は」
「別に。そんな物だったんならすぐに渡さないで、それを返すことを条件にそれを狙う悪い奴らから守ってもらえばよかったなと思って。」
彼の内ポケットのあたりに視線を向ける。
「この状況からして、お前には俺も悪者じゃないのか?」
彼は、俺から一切視線を外すことなく言葉を投げる。
「そうだね。多分悪者になるんだと思うけど、この世界から連れ出してくれるなら俺にとっては、救済者だよ。」
「はぁー、疲れた。」
ため息をつきながら空を見上げると、さっきまでは真っ暗だった空に
無数の星が輝いていた。
いつもその光にさえ鬱陶しさを感じていたが、なぜだか今日は綺麗に感じた。
「ねぇ。」
俺は言葉だけ彼に投げる。
恐らく、彼はこちらに視線を向けているだろう。
「星って、綺麗なんだね。」
呟く俺に、彼は少し笑ったように感じた。




