第29話 -たいよう-
気が付けば俺は、見慣れた天井を見ていた。
あれ、これ、デジャブ?
初めてここに来た時もこんな風景見た気がするけど。
ゆっくりと起き上がると、俺の布団の隣に布団を引いて眠る風斗の姿あった。
どういう状況だろう。
辺りを見渡すけど、変わった様子はなくてまるで昨日までのことが嘘みたいに感じる。
その時襖が開く音が聞こえそちらを向くと、海晴さんの姿が。
俺の姿を見るなり少し驚いてその後は、一瞬風斗に視線をやり少し眉をハの字のして笑った。
「起きたか。悪いな、こいつ起きるまでここにいるって聞かなくて…寝ちまってんなら意味ないけどな。」
少し小声で話す海晴さん。
「そうなんだ…。昨日は風斗は来なかったんだね。
俺、怒らせたかな。」
そう言う俺に海晴さんが少し間をおいて言葉を続ける。
「もし、蒼空が本当に裏切っていたら、俺たちはお前を殺さないといけなかった。
だから、そのことを伝えたら酷く取り乱したんだ。
嫌だとも、わかったとも言わずその事実を受け入れられないように、その場に崩れ落ちて。
そんな状況のやつ連れていけるはずもなくてな。」
「そうだよね。
でも、そんな風になってくれるなんて思わなかった。申し訳ないな、俺なんかの為に
そんなに…。」
朝の空気の中、風斗の寝息だけが聞こえてくる。
「なぁ、蒼空」
「なに?」
「お前は、何でそんなに自分の存在価値を下に見る。
ここ数カ月一緒に過ごしてそんなに卑下するような人間じゃないことくらい俺でもわかるぞ」
真っ直ぐこちらを見ながら問う海晴さんに少しいたたまれない気持ちになる。
「んー。俺、誰からも必要とされたことも、愛されたこともないんだよね。
実の親にも捨てられた俺は、誰が俺を必要として愛してくれる?
そんな事思っていた時期もあったけど、結論が出てさ。
俺、自分のこと嫌いなんだよね。
誰からも必要とされない、愛されない自分が。
そして、自分ですら好きになれない自分を誰が必要とし、愛してくれる。
そんなことはあり得ない。」
そう、あり得るはずがない。
「期待しないんだ。
自分にも、他人にも、この世の中にも。
何も、望まない。望んだところで、満たされない。
そう思って生きて来ているのに、ここに来て誰かに名前を呼ばれて、誰かにありがとうって言って貰えて、そんなことを知ったらどう生きていけばいいのかわからなくなる。
今までの俺って何だったんだろうって、何もない俺って何なんだろうって
俺は、誰かの世界に入っちゃいけない人間なんだよ。
それに〈ドン―――っ〉うわっ!」
俺が言い終わる前に、俺は何らかの力によって布団の上に戻っていた。
見ると目の前に、風斗の姿。
俺の上にまたがりこちらを見下ろしている。
「俺はお前が好きだよ。」
「っ、そう。」
「俺は、俺が好きだから自分を嫌いっていうお前の気持ち、理解できねぇし
誰かしらに必要とされてきたし、誰かしらに愛された経験もあるから理解できねぇ。」
「うん」
「理解は出来ねぇけど、そのどちらも経験させてやるよ。」
「は?」
「お前がお前を嫌いとか、俺にとって正直どうでもいい。
俺はお前が好きだし必要だから、死ぬな。」
ド直球な言葉。
やっぱり眩しいな。太陽みたいだ。




