第28話 -こども-
綺星side
疲れ果てたように眠る子供が隣に座る。
蒼空を連れて帰ることが出来た俺は、その眠る子供をただ見つめた。
17の子供が、ここまで大人でここまで悲しく生きてきた事実があること。
蒼空の中では、これが当たり前で俺たちの世界でも、大したことではないこと。
蒼空だから、俺たちは動いたけれど立場が逆になる事なんてあり得ることだ。
俺たちが奪う側になることが。
それに、俺は蒼空の未来を奪った。
だからせめて自由に生きろと言ったが、何も持たない子供にとって自由がどれだけ不自由を与えるか。
「お前が崩れるなよ。」
俺の鼓膜に、桜夜の声が伝わる。
「今回のこと、正直失望してるよ。お前に。」
淡々と続ける桜夜。
俺も黙ってそれを聞く。
「今のお前は全部が中途半端だ。
蒼空のことだってただ、欲しい言葉だけ与えて神様にでもなったつもりか?
組のことだって、ガキ1人取られたくらいで自分で動きやがって。
お前が動くだけでお前につける護衛が、数人増えるんだよ。まぁ、今回は死ねばいいと思って誰もつけていないが、今お前がどの立場にいるのか理解していないとは言わせない。
いつもの傲慢で、適当で全部押し付けてくるお前はどうした?
その方がよっぽど人間らしい。ガキ1人のせいでそこまで崩れるなら、子守なんてやめろよ。
お前が面倒見なくても、面倒見る人間なんてうちには大勢いるんだよ。
”俺”はそんな腑抜けでつまんねぇ奴に、命預けたつもりはない。
ふざけんのもいい加減にしろよ。」
特に感情の起伏もなく、つらつらと発せられる言葉。
ただ、明らかに俺へ投げかけられる言葉。
海晴は運転しながらオロオロとルームミラーで動揺が見える。
朔月は…おそらく笑っているな。後で殺すか。
「随分好き勝手言うな。」
「うん、本当のことだろ?好き勝手言わせるまで気付いていないんだ。
まともじゃないだろ?」
はぁー。
俺はため息をつきながら、煙草に火をつける。
蒼空が来てから、蒼空の前ではほとんど吸っていなかった。
揺れる煙を目で追いかけた。
「お前がイラついてるのは、俺にじゃねぇだろ。」
俺の言葉に、桜夜が舌打ちをする。
「まぁ、お前が言うのも間違いではねぇが一番お前がイラついてんのは、澪にだろ。」
「ちっ、あぁーもうだっるいなまじで。お前も黙ってろよ。くそが、
どいつもこいつも勝手しやがって、ふざけんなよ。」
あまり部下には見せないその姿に、その部下2人は驚いたように目をぱちぱちとしている。
「んー…」
隣で眠る子供が、少し身を動かせばいつも通りの空気に戻る桜夜。
そしてその姿にまた、部下2人は目をぱちぱちさせた。
その姿に思わず、笑えて来た。




