第25話 -おもい-
「俺、本当に死んでもいいと思ってた。」
色々な処理を他の人たちに任せ、綺星さん・桜夜さん・朔月さん、そして俺は海晴さんが運転する車で、《《黒崎組》》の家まで帰っていた。
車内ではだれも、俺には何も言ってはこなかった。
だけど、普通に俺も会話の中にいてとても不思議な感覚だった。
その中の話題の一つとして、俺は気持ちを伝えた。
その一言に皆が、俺に意識を向けてくれるのがわかる。
「死んでもよかったんだ。本当に。
本当は、澪が綺星さんを撃つとき間に入ろうと思ってた。
まぁ、うまくいくとも思っていなかったけど。」
「なんで、死にたいと思ってたの?」
桜夜さんがいつもみたいに興味本位ではなく、優しく諭すように聞いてくれる。
「死にたいわけじゃない。死んでもいいんだよ。
俺の中では、ニュアンスが違くてさ。
好き好んで死にたいわけじゃないけど、俺にとって死んでもいいやって思った時に死にたい。
その時が、澪に綺星さんを殺したいって言われた時だった。」
俺の一言一言に、車内の皆が呑み込まれ溶けていく。
「今後、俺と関わりを持ってくれた誰かが死んだり、その誰かに捨てられたとしたら
俺はまた独りになる。
今まで、独りが耐えられてきたのはその世界しか知らなかったから。
でも、今は違う。
どんな関係だとしても、独りじゃない瞬間を知ってる。
今までの人生の中で味わったことのない温かさとか、楽しさだと知ってしまった。
俺はきっと、もう独りでは生きていけない。
だったら、いつか独りになる前に、この気持ちのまま死んだ方がきっと楽だと思った。」
「それは、僕たちが止めたり悲しんだりするってことは思わなかった?」
桜夜さんの優しい声に少し喉の奥が痛くなる。
「だって、俺は元々は”落とし物”を拾ったただのその辺の人間だし、それを返した時点でここでの存在意義は終わっている。
綺星さんが気まぐれで拾ってくれただけだし、そんな奴いなくなっても
そんな気にするほどの価値はないでしょ?」
素直に答えた俺の言葉に、その場の皆が少し表情が変わった気がした。
「今まで俺に存在意義が無かったから、誰からも必要とされずに親にすら捨てられてきた。
それは、仕方がないことだと思う。
だって、俺に価値が無いのが悪いんだから。
でもそれは、ここにいても同じこと。
何も秀でているものが無くて、誰かの何かの天秤にかけられるとしたら命くらいしかなくてでもその、命にさえ何も価値が無い。
そんな奴、ずっとここにいれるわけもない。
だからと言って頑張って価値を見出そうとしいても、その手段がわからない。」
そう言って黙り込む俺に、誰も肯定の言葉も否定の言葉も言わないでいてくれる。
「蒼空」
そんな空間を震わせる、声。
俺をこの光の下に連れ出した人。
俺の名前を呼んでくれるけど、その目を見ることすら怖くなる。
「蒼空?」
もう一度読んでくれる声は、森の中で呼んでくれた時と同じくらい安心する優しい声。
でも、俺はこの声を裏切った。
生きる理由を、くれたのに。




