第23話 -はなび-
辺りに立ち込める火薬の匂い。
小さいころ、一度だけ親の機嫌が良くて連れて行ってくれた花火大会の時に
嗅いだ匂いと同じだった。
〈ドサッ〉
人が倒れる時って、思っていたよりも静かなもんなんだ。
そして静かに赤黒い液体がその周りを囲む。
少ししてそれが、血だと理解する。
体が徐々に冷たくなるのを感じる。
呼吸も浅くなり、視界がぼやける。
視界が血で覆われる。
どんどん広がるそれに、現実味が増して余計に怖くなる。
「澪!!!!!!」
やっとの思いで体を動かし、音がした方へと足を進ませる。
「澪っ!!澪!!?え!?な、んで??」
俺は銃口を向ける人物の方へ目線を向ける。
俺を澪の元へと運んだ運転手の方へ。
「っ悪いのはお前だよ!澪!!!
邪魔なんだよ!!!!お前の存在が!こっちは命がけでこの道で生きてるっつうのに、こんな意味の分からねぇ餓鬼に意味わかんねぇこと言って!
つうか、いっつもお前は意味が分からねぇ!!!
お前と共倒れなんて、誰がしてやるかよ!!!!!!!
いい機会だと思ったんだよ!
ここならだれもお前を助けない!だから願い通り、その餓鬼の前で殺してやるよ!!!」
周りにいる、澪の仲間だと思っていた人たちもニヤニヤと澪を見て笑う。
そうか
こいつが、澪を撃ったんだ。
だから、今、澪は死にかけているんだ。
〈パンッ〉
静かな空の下。
また、火薬の匂いが立ち込める。
やっぱり、花火の匂いだ。
そしてまた、地面に人が倒れ込む。
痛む右手。
見ると、俺の手に握られた拳銃。
「ごめん、澪。手入れしてた澪の銃、勝手に使っちゃった。」
「…ん、いい、よ。」
「澪、このまま死ぬ?」
「どう、だろう。急所は外しているから、今、すぐは、死なないかな。痛い、けどね。」
「そっか。」
そんな話をしていると、倒れた男の仲間がこちらに銃口を向けている。
「やっぱり、このまま死ぬかもね。」
そう言う俺に、くくっと笑う澪。
〈カチャっ〉
後方から、金属音が聞こえた。
振り返ると、綺星さんが俺達の先にいる人たちに向け銃口を向けている。
「ははっ!いくら、あんただってこの人数には勝てるわけが無い!!
他の奴らに見回らせても、あんたの仲間は見つからなかった!本当に、1人で来たなんて笑わせる!!!これは、内部抗争だ!!他の人間がしゃしゃり出てこれねぇはずだ!」
その言葉に、綺星さんは一度こちらを見ると口角を上げ口を開く。
「内部抗争?
俺の組の奴を連れ去り、人殺しまでさせておいて内部抗争。笑わせる。
言っても蒼空は一般人だ。
《《黒崎組》》と一般人巻き込んどいて、お咎めなしなわけねぇだろ。」
森の中に気配を感じ辺りを見渡すと、見知った顔が現れる。
「なんで…報告には誰もいないと…!!」
「報告って、電話でしょー?少し声変わったくらいじゃぁ気付かないよねぇ。」
「んなっ!!」
いつの間にか、そいつの後ろに現れる桜夜さんと
「こんなに近くに来るまで気付かないなんて、お気楽なものですね。」
「そう言ってやるなよ、朔月!こいつらだって、俺たち相手にするのに
緊張してたんだろ。」
朔月さんと海晴さん。
気付けば辺りは、《《黒崎組》》に囲まれている。
「蒼空」
後ろから聞こえる、綺星さんの声。
声を聞いただけで安心してしまうのは、独りじゃない世界を知ってしまったから。
「俺たちと、俺と、帰ってくれるか。」
「…ん。」
だけど。
「だけど、澪を助けたい。」
俺の声は情けないほど震えていた。
「ああ。わかってる。」
本当にこの人は、星みたいに生きる理由をくれる。




