第20話 -あかり-
人って1人で生きていける?
『1人で生きている人間なんていない。
誰しもが知らず知らずのうちに支え合いながら生きている。』
なんて言う人間がいる。
本当に誰もいなかったんだ。
誰にも支えてもらえなかった。
親も、友達も、頼れる大人も。
誰もいなかった。
高校2年の17歳。男。
クソみたいな人生を送っていたはずの人間が、突然触れた人の温もり。
まるで暗闇で灯る蝋燭のような、温かく危うい灯り。
その温もりを、灯りを知ってしまった今、またあの暗闇に独りになったとして
俺は、耐えられるのだろうか。
「きっとあそこで、生きるより。
自由に生きた方が楽に生きられそうだね。
どうすれば、あの人を殺せる?」
俺の言葉に、澪は玩具を買って貰えた子供のように飛び跳ねて喜んだ。
玩具…。
使い捨てはごめんだ。
どうせここまで来たなら、泥水被ってでも生きてやる。
「ありがとう!!蒼空!!!君とは最高の友達になれそうだよ!
行動は早い方がいい!きっとあっちも、君のことを探し始めているだろうからね!
まずは、スマホの電源を入れて?来るときに切らされただろ?
きっと、GPSが入るだろうからここの場所がわかる。
《《黒崎組》》のある場所からここまではどんなに飛ばしても2時間はかかる。
ゆっくり、心の準備をする時間はあるよ!
準備が整ったら、あいつに電話をかけて本当は、”落とし物”の中身を知っている。
でも、この情報が漏れたらきっと大変なんだろ?
もし、俺のことを殺すなら待っている。
と伝えるんだよ。
きっと奴は来るよ。
護衛も連れてくるだろうから、蒼空の近くまではひとりで来るよう伝えるんだ。
そのタイミングで、ボクがあいつの頭をぶち抜くよ!!」
そう言いながら澪は、俺の眉間に銃を突きつける。
きっと本物だろう。
「はぁー、澪。これやめて。冗談でもいい気はしない。」
そう言うと、しょげた子供のように銃を下ろした。
本当に、ころころと表情が変わる人だ。
「そんなに簡単に行くかな。」
「きっと、いかないだろうね!!
もしかしたら、ボクは死ぬかもしれない。きっとうまくいっても、他の奴らにボクは殺されるだろうね!!
でもそれでいいんだ!
ボクは、君の前で死にたいんだよ!
純粋で、無垢で、それでいてどこか冷たい心を持っている君にボクの死に様を見ていてほしい!
想像しただけで、とても興奮するよ!!!
きっと君は、どの結末を辿っても一生それを抱えながら生きていくことになる。
それが嬉しくて、嬉しくてたまらない!!!」
本当に、狂ってる。
そんな道に進んだ俺も、同じようなものか。
「とりあえず、スマホの電源入れるよ。」
画面に明かりがつき、風斗が設定した待ち受け画面が映る。
とても楽しそうに笑っている。
そもそも、それが間違いなんだよ。
電源が入って数分後、俺は迷うことなく電話をかける。
その様子に、澪は興奮しているようで奇声を発しながら、床で転げまわっている。
まるで、死ぬ前の虫のように。
数秒間の機械的な呼び出し音が鳴る。
〈プツッ〉
呼び出し音が止まり、数秒間の静寂が訪れる。
『…無事か?』
数時間しか離れていないというのに、とても懐かしく感じる声。
彼は、何を思っているのだろう。
「……俺さ、死のうと思う。」
俺の口から出た言葉は、酷く、簡潔だった。




