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空を飼い慣らす星の鎖ーステラドックスー  作者: Liar.


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第19話 -いばしょ-

綺星あやせside


有明の月だと思った。

夜にも、昼にも居場所が無くて、最後は強い光で消えてしまう。


だから、俺も余計な選択肢を与えたんだと思う。

夜か、昼か。

最後どちらを選ぶのかを知りたくて。

その瞬間を見てみたくて。


自らでは、何もなさないただの子供だと思っていたそいつが、蓋を開けてみれば

そうならざるを得ない環境で、それでも腐らずに、純粋に生きていた奴だと知った。


生きる価値を見出していないそいつに、生きる価値を教えてみたいと思った。


そんな事をすれば、最後はひとりで生きていけなくなることくらいわかっていたのに。

それを17の子供に与えるのは地獄だということくらいわかっているのに。


与えられることを知らない子供が、与えられることを知った後、

どれだけの孤独を持て余すか。


「随分、酷な事をさせているよね。」


桜夜おうやが空を見上げながら言う。


「お前も、僕も、さ。」


どうしても、光を見せたくなる。

こんな闇で生きている人間がそんなことをしても、与えられるのは闇でしかないのに。

まるで、光の下で生きている奴の真似事のように。


「巻き込んだのは俺だ。

どんな結末を向けるとしても、責任は持つさ。」

「もし、お前を殺そうとしても?」


空を映していた目は、気付けば俺を捉えていた。


「そうなったときは、悪いけど僕はお前を救わなきゃいけない。

お前が死ぬときは、”俺”が死んでいる時だ。


わかっていると思うけど、そういう立場なんだよ。お前は。」


「あいつは俺を、救済者だと言った。

そして、死にたくなったら殺して、とも言っていた。」

「だから何?

だから蒼空そらは俺を殺すわけが無いとでも思ってる?」


「そんなことを言っていた、蒼空そらが俺のことを殺すのもまた見物だと思っただけだ。」


そう言う俺に、桜夜おうやは数度頷いた。


「確かに、少し見てみたいかもしれない。

けど、だったらお前が死んでやれ。

お前みたいな奴のために、蒼空そらが殺人犯になるなんて可哀想だよ。


……でも、」


言葉を続ける桜夜おうやが、獲物を見つけた蛇のように妖艶に笑う。


蒼空そらは、どんな風に人を殺すのかな。

どんな目で、どんな感情で、どんな殺し方をするんだろう。」


また、空を見上げる桜夜おうやの目は、大好物を目の前にした子供のように輝く。


「いいねぇ、きっと、美しいだろうねぇ。」


〈コンコンコン〉


襖が鳴る。


「なんだ。」


答えると、外から朔月さつきの声がする。


「すみません、会議後お疲れのところ。」

「どうした、入れ。」


襖が開く。


蒼空そらが消えました。」


静かな空間に、朔月さつきの声が響く。


言葉への理解が、一瞬遅れた。


「送迎に出していた者が迎えに行ったのですが、何度連絡しても繋がらず、学校に聞いても

校内にはいないとのこと。

GPSは、学校から少し離れたところで切られています。」


〈バタバタバタッ――〉


騒がしい足音が近づく。


綺星あやせさん!!」


風斗ふうとだ。


「うるさいぞ、風斗ふうと。おふたりの前だ、わきまえろっ」

「よくそんな冷静に言ってられますね!朔月さつきさん!

蒼空そらがいなくなったんすよ!?

俺が出ても何の役に立たない会議に我儘で参加して、蒼空そら一人にして、行方不明?

他の奴らがUSB目的で攫ったんすか?

俺のせいです、俺が連れ戻してきます!頼みます!俺に行かせてください!!」


俺の目の前に来て、頭を床にたたきつける風斗ふうと

こいつの中では、護衛というか監視対象と監視役以上の関係が出来ているのだろう。


友情


そんな脆くて、危ういものこの世界では枷になるだろうな。


「連れ去りだったらまだいいよ。」


後ろにいる桜夜おうやが口を開く。

その言葉に、風斗ふうとが不思議そうに顔を上げ桜夜おうやを見る。


「自分の意思だったら?」

「っ!?」


そう。

仮に、そうだった場合。


「仮に、そうだった場合。僕たちは、蒼空そらを殺さないといけない。

風斗ふうと。お前に、その役目が全うできるか?」


あからさまに動揺する風斗ふうと


こいつも、蒼空そらと同じ17。酷なことだが、この世界にいる以上避けて通れない。

裏切者は死。


朔月さつき、3時間以内に蒼空そらの居場所を探し出せ。」

「はい。」

桜夜おうや、「わかってる。」」


俺が言い終わる前から連絡をする桜夜おうや


海晴かいせい、人数集めろ。いつでも動けるようにしとけ。」

『はい。』

「あぁ、あとお前のところの下の奴がこっちに遊びに来てるよぉ。

回収しといてね。」


受け止めきれない現実に打ちのめされている風斗ふうとを見ながら桜夜おうや

海晴かいせいに指示を出す。


空気が動き始める。


……蒼空そら


俺は、お前のこと嫌いではなかったよ。

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