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空を飼い慣らす星の鎖ーステラドックスー  作者: Liar.


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第12話 -ただいま-

「帰ろうか」


日が暮れるまで色々な話をしてくれた桜夜おうやさんが、太陽が姿を隠してしばらくすると

そう、声をかけてくれた。


『帰ろうか』


きっと、なんてことないただの当たり前。

それが俺にとっては、かけがえのないことに感じた。


「…桜夜おうやさん。」

「んー?」

「連れて来てくれてありがとう。」

「んー、いいよぉ。」

「…桜夜おうやさん。」

「うん?」

綺星あやせさんって帰ってるかな。」

「たぶんもう、帰ってるんじゃない?」

「戻ってさ、綺星あやせさん帰ってきてたら、さ。」

「うん」

「その、ただいまって言っていいかな…。」


波の音だけが聞こえる世界に、俺のそんな願望が響いた。

ちょっとだけ、桜夜おうやさんの方が見れない。


「…ふっ、いいんじゃない?

時間とか、関係とか、そういうのじゃなくて、蒼空そらが『ただいま』って言いたい場所に帰るんだから、言っていいんじゃない?」

「……うん。」


これからどうするかとか、全くわからないけど生きてきた17年間で、初めて帰っていい場所を貰えた。

それだけで、嬉しかった。


桜夜おうやさん」

「うん」

「…帰りましょうか。」


そう言うと、桜夜おうやさんは頷きながら笑ってくれた。


-----------------------------------------------------------------


《《黒崎組》》と書かれた門の前に車を止め、「車庫に止めてくる」と言い残し俺を下ろして

消えていった桜夜おうやさん。

その姿を見送ってから、門の中へ歩みを進める。


「遅かったな。」


突然の声に驚き、声のした方向を見ると俺を連れ出した張本人が立っていた。


綺星あやせさん。」

「…………。」

「あの、綺星あやせさん。その、ただいまっ!」


意を決して放った言葉。

あまりの緊張に語尾が震えた気がした。

綺星あやせさんからの反応が怖い。


「…ふっ、おかえり。」


優しく返してくれた言葉。

普通じゃ当たり前かもしれないやり取りが、こんな気持ちになるなんて俺は本当に狭い世界で生きてきたことを実感する。


「楽しかったか?桜夜おうやとどっか行っていたんだろ?」

「うん、海に連れて行ってくれた。初めて見たんだ、海。」

「…海。ふっ、そうか。あいつが海にね…。」

「好きな景色なんだって。」

「そうか」

「すごく綺麗な場所だった!今まで生きてきた中で一番綺麗だった。」


そう話すと、綺星あやせさんがこちらに近づいてきた。


「今日は疲れたか?」

「え?いや、逆にテンションが上がっててソワソワする。」

「そうか、ならもう1か所付き合え。」

「え?」


そう言うと歩き出した綺星あやせさん。

訳も分からず俺はその後を追った。


ついて行くと車やバイクが沢山置かれた場所へ着いた。

そこには、桜夜おうやさんの姿があった。


「あれぇ、2人ともなにしたの?」


俺たちの姿を見つけ問う桜夜おうやさん。

綺星あやせさんは、その言葉を無視して一台のバイクの前へと歩みを進めた。


「お前が随分と、蒼空そらを世話してくれたらしいからな。

少しは俺も世話しないとな。乗れ、蒼空そら


そう言うと、俺にヘルメットを投げつけバイクに乗るよう指示をした。


「え!?俺、バイクなんて乗ったことないよ!?」

「捕まっていれば大丈夫だ、ほら。」


おずおずと綺星あやせさんの後ろへ跨る。


「ふっはは!蒼空そら!帰ってきたらどこ行ったか教えてね!」

「え!?うん、わかった」

「約束だよ!」


その会話を最後にバイクが進み始めた。


「………まさか、綺星あやせがねぇ。」


桜夜おうやさんが何か言った気がしたが聞き取れずにその姿が小さくなっていった。


バイクが走り始めると、車で走るとは全く違う景色の移り変わりがあった。

速さを通り抜ける風で感じ、自分が景色を置いていく感覚。体で重力をもろに感じ、それなのに

全く怖さを感じないのは、綺星あやせさんだからだろう。


全ての感覚に身をゆだねて、俺は過ぎていくものを楽しんだ。


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