夏休み!0日目♪~変な奴がやって来た。
ふんふんふっーん♪
学校終了!
さてさて、今日は何して遊ぼっかなぁ。
学校から出て、商店街を抜け、近所の公園にさしかかる。
子供達の笑い声、辺り一面の木々、雲一つない空。
うーん。そりゃあ自然と鼻歌も出てくるよな♪
ゴゴゴゴゴ…。
うん?何の音だ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
え?
何かだんだん近くなってきてるし…。
周囲を見渡す。
何も異変は感じられない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
うるさいし!!
一体なんなんだ!!
ドォーーーン!!!!!
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彼は高校二年生。
帰宅部。
特技は料理(家に作る者がいないため必然的に上手くなった)。
趣味はTVゲーム全般。
嫌いなものは勉強。
名前は桐島 京。
どこにでもいる、普通の高校生。
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はっ。
気がつくと、日は沈み、夕焼けがこれまた美しい。
どうやら、公園のベンチの上で横たわっていたらしい。
「あああああ!!せっかくの終業式がぁぁ!!」
そう。明日から始まる夏休みを、始まる前から満喫しようとしていたのだ。
「スーパーの安売りの時間も終わっちまうじゃん!」
そうして彼、桐島 京は近所のスーパーへと駆けて行った。
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ガチャ。
「ただいまー…。」
買い物袋をテーブルに置き、料理の支度を始める。
彼は一人暮らしである。
複雑な事情があるらしいのだが、今は伏せておこう。
「さて、何作ろうかな~?」
(肉じゃがとか食べたいなぁ♪)
…は?
先程述べたように、彼は一人暮らしである。
京は周囲を見渡す。女の子の声が聞こえたような気がしたのだ。
「なんだ…。空耳かー。んじゃまあ、肉じゃがでも作るかねぇ。」
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「いただきます。」
その挨拶を境に、京は黙々と食事を始めた。
(おいしー♪)
黙々と食事を続ける。
(ねぇ、ねぇ。おいしーよね!肉じゃが♪)
黙々と…。
(やっぱ、この肉の柔らかさがいいよね♪ところで、何で肉じゃがって料理名なの?)
「さあ?肉とジャガイモを一緒に煮るからじゃない?」
(なるほど!煮ることで一体となった『肉』と『ジャガイモ』が『肉じゃが』に合体進化するんだね!)
「そうそう、そんな感じ…、って誰だおらあぁぁぁ!!」
叫ぶと同時に思わず立ち上がった。
改めて周囲を見渡す。
このマンションはセキュリティがしっかりしている。
不法侵入なんて聞いた事がない。
(ここだよ~)
各部屋を大きな音を立て開ける。
いない。
カレンダーの裏、TVの後ろ、くまなく調べた。
いない…。
「いったい、どこに…?」
(だぁかぁらぁ、ここだよ!ここ!)
?
すると、俺の右腕がゆっくりと動き出す。
力は入れていない。驚く暇もなく、自分の右腕が眼前まで上がり指を指す。
指した先は・・・
俺・・・。
後ろに振り向く。
(誰もいないよ~)
えええええええええ!!
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席について、とりあえず深呼吸。
「で・・・、いったいあなたは何者ですか?」
(話よりも、ご飯食べませんか?)
「いや、そんなことよりも・・・」
(食べようよー!おなか減ってるでしょ!)
「はい・・。」
いまいち現状が把握できない。
しかも、おいしー!とか、肉じゃがってこんなにおいしいんだねえ!とかいちいちうるせえ・・・。
「ご馳走様でした。」
(ごちそうさまでしたー!)
「で・・・、あんた誰ですか?」
(コホン!)
え?なんかまずい事言ったか?
「あのー・・・」
(・・・私は月の精霊。)
は?
目を丸くしている俺の事など、そっちのけて続ける。
(…私は月の聖霊。…あれ?やっぱり星にします。)
おい。
(コホン、私は星の聖霊。あなたのそのうだつの上がらなそうで暇そうな退屈な顔を遠い彼方から見ていました。)
初対面…だよな。
ちょっと言い過ぎじゃないか?
(そんな何時まで経っても変わらないあなたに、私は見るに耐えかねました。
そしてこの私、知恵!芸術!技術!学問!戦術!
全知全能なる女神の私が直接助けに馳せ参じました!)
………言葉が出ない。
正直、何言ってんのコイツ?
ぐらいしか頭に浮かばない。
(…ぷぷぷ、プッフフフ…
なんちゃってぇ~!!
びっくりした?
びっくりしたぁ??)
ああ、激しくびっくりしましたよ…。
そしてわかりました、あなた頭パーなんだね。
「…で、一体なんなんだ?」
(うーん、まあ細かい事はきにせずに~。)
「するわ!
大体、どこにいるんだよ!
音声だけリスナーにお届けか!」
(ぷぷ、リスナーって!
私のリスナーは君しかいないよ?
だって私、君の中にいるんだから♪)
は?
この時この瞬間から、俺の日常は変わってしまった。