勝負パンツ
目が覚めると、俺は揺れていた。
いや、正確には――誰かの腰に巻き付いた状態で上下左右に振られていた。
「……なにこれ。酔う……」
頭を動かそうとしても、頭がない。
手足もない。
あるのは柔らかい布の感触と、腰回りの妙な密着感だけ。
嫌な予感がして、自分の姿を確認しようとした――その瞬間、衝撃の事実に気づく。
俺……パンツになってる。
「ふははは! 今日も完璧な装備だ!」
腰の持ち主は、鏡の前でポーズを決めている金髪の青年。
その格好、見覚えがある……いや、見覚えがあるというか、ゲームやラノベでよく見る“勇者”そのものだった。
「やっぱり、この勝負パンツを履くと気合が入るな!」
ちょっと待て、それ、もしかして俺のことか!?
しかも“勝負パンツ”って何だよ!?
ガチャ、とドアが開き、仲間らしき女性魔法使いが入ってくる。
「キャッ!なんでパンツ一丁?!てかまたそのパンツ?!洗ってんの?!」
「もちろん! 魔王を倒すまでは、このパンツが俺の守り神だ!」
守り神!?
俺、そんな大層な役目背負わされる予定なかったんだが!?
旅の初日。俺は勇者の股間から揺られながら、馬車に揺られ、戦場にも連れ出された。どうやら俺は勇者がズボンなどをはいていてもパンツの高さからの一なら周りを見渡せていた。どういう原理化はよくわからない。
戦闘中、敵の攻撃が股間スレスレをかすめるたびに、命の危険をリアルに感じる。
「ちょ、今の槍、数センチずれてたら俺アウトなんだけど!?」
しかしあるとき、俺は気づいた。
――この布の体、普通のパンツじゃない。
そのとき俺の中に妙なエネルギーが溜まっていくのを感じた。
「な、なんだこの感覚……!」
魔物が勇者に飛びかかってきた瞬間、俺は光った。
次の瞬間――
ドゴォォォォォン!!!
勇者の股間から、ド派手な衝撃波が放たれ、魔物たちが一斉に吹っ飛んだ。
勇者:「おおっ! 俺の股間からビームが!」
俺:「いや言い方!! よりによって股間発射とか恥ずかしすぎるだろ!」
こうして俺は、勇者の股間から世界を救う――という、なんか名誉なのか不名誉なのかわからない旅に巻き込まれることになった。