熱発
お馴染みの“月曜真っ黒シリーズ”です。
薄々勘付いてはいたが、出張から帰って来たキャリーバッグの中へ丸めて突っ込まれているワイシャツのポケットの中に、ご丁寧にも“色褪せた長い金髪が結ばれている”パッケージフィルムの切れ端が挿入されていた。
バッグの各ポケットの底まで捜索すると『0.02の表書き』の潰れた箱が現れ、中身のパッケージフィルムはワイシャツから出て来た切れ端と同じ物だった。
この“色褪せた長い金髪”のオンナは……大方、夫からの寝物語で愚痴を聞かされ、全てを知った上でこんなメッセージを私に寄越したのだろう。
夫とその不倫相手からここまでバカにされて全身が怒りに震えたが、思考だけは冷たく動き出す。
夫の方から押し切られ、結婚して6年……今では夫の親兄弟親戚から石女と陰口を叩かれている私は……毎月の“妊活”を夫に対しひたすらお願いし、怠ることも無く続けて来た。
極力、気配が伝わらない様“周り”を気にしながら……
それなのに!!
「今月は3日から10日まで出張だから無理だな!」と言い放たれた。
しかし本当の出張は一体いつからいつまでだったのか??
残りが3つしかないこの箱の中身はどういう事なのか??
そしてこの回数分だけ夫は“ムダ打ち”をした事になる。
夫は私の苦労も気持ちも、全く考え無しに不実を行い続けた!!
一瞬、涙が滲んで、生きて行く気も失せてしまったが……大きな大きなため息と引き換えに踏み止まった。
「なんで、私ばっかり苦労しなきゃならないのか?!!」
「なんで私ばっかり責められなきゃならないのか?!!」
「なんで私ばっかり苦しまなきゃならないのか?!!」
そう、随分昔……中学生の頃に……友達の家で観た『エイリアン』
『子供を産むってこんな感じだったりして……』
そう口走った友達の言葉に
ふたり“ガチ”で震えた。
友達は二人の子持ちになったけど、私の本音は今でも『子供は怖いし好きになれない』
でも私は妊活している。
まるで弾を一発だけ込めたロシアンルーレットの様に
いつか弾を撃ち込まれる事に恐怖しながら……
「平気だね!! みんなよく平気だね!!」
この声も……
いつもどこかの部屋のテレビの音が漏れ聞こえて来る安普請のアパートでは、昼間でも大きく出す事はできない。
そのバカバカしさに笑いがこみ上げて来て、私は“恐怖”の矛先を変えたくなった。
“箱の中の3つ”から1つを切り離して台ふきんの上に置き、マグネット付きケースから出した15号のビーズ針でパッケージごと刺し貫いた瞬間、私の背中も凍り付いた気がした。
でもまだまだ……弾を込めただけだ!
この引き金を誰に引かせるのか、“後腐れの無いオス”など私の交友関係には……
ぐるりと考えて、『サ終』の噂が絶えない過疎ってるゲームのパーティで“会話”しているヤツの事を思い出した。
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「二人だけのオフ会やらない?!」なんてヤバいお誘いに簡単に食い付いた男は、私より若いクセに夫よりくたびれた恰好で居酒屋に現れた。
「ここなちゃん? ゴメンねー待たせちゃって!! 仕事、捕まっちゃって!!」
「エイデンくんにひかれたのかと思って心配したよー ゴメンね! こんなBBAで!」
「んなこと無いよ~!! スッゲーかわいい!!」
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蒸し暑いのをいいことに着て来た、思いっきり開いたトップスの胸元をガン見する様なオトコの考えなどそれのみだろうに……
いざとなるとこのオトコ、妙に腰が重かった。
こちらが“ぶら下げたニンジン”か“据え膳”をやってるのにモタモタモタモタしている!!
お前がチェリーだろうが何だろうがどうでもいい!!
ゲームの時みたいにサッサとロードして撃って来い!!
ただ、生物的、物理的な出し入れでいい!!
気持ちの出し入れなど無くていい!!
気持ちイイだけ求めたい!!
こう願っても……
結局、私の願いは成就することなく、
私は“過疎ゲー”のアカウントを閉じた。
そして、悶々とし続ける心の揺れを閉ざす事はできなかった。
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『やっと授かった一粒種の才輝に、できうる限り高いレベルの教育を受けさせたい!!』
その思いで……“おためし”のつもりで幼稚舎を受験させたのだが……
職業や家柄には貴賤があって……中小企業のしがないサラリーマンの“お家柄”では幼稚舎には袖にされる!!
“袖にされた”のは断じて才輝のせいでは無い!!
だってこの子は他の子供達よりあらゆる面で抜きん出ているのだから!!
まあ、所詮は“おためし”“腕だめし”!!
本当の勝負は6年先の智星中学の受験!!
その時までは、“多様性を尊重できる”様な子に育てるべく公立小学校へ身を隠させた。
とは言っても、才輝の……まさしく名前の通りの溢れんばかりの才気は隠しようが無く、その輝きのお陰で、私は運動会や発表会でのごった返す子供達の中から、才輝を容易に見つけ出すことができた。
しかし珠は常に磨かなければいけない。
その為の塾や“お教室”の費用を捻出すべく、私はフルタイムで働き始めた。
学校へ行っている間でさえ才輝と離れがたい私は身が切られる様な思いだったが……「親がベッタリなのは彼の自立の妨げになる」とひたすら我慢の毎日だ!!
こんな風に私は日々闘っていると言うのに!!
夫は相変わらずで……お小遣いをせびる事を止めない。どうせどこかのメスにつぎ込むだけだろうに!! そのお金があれば!! 私はもっと才輝と居られるのに!!
この男に愛想をつかしながらも……私は離婚などしない!!
才輝が誰恥じる事無く自分の足で立てるようになるまでは!!
後ろ指をさされて、その足を引っ張らせる訳にはいかない!!
夫との問題は、すべてが片付いた後に手を付ければいい!!
しかし、私の胸の内にくすぶる“心の揺れ”はどうしたものだろう……
最初は『レディコミ』をダウンロードしてみた。
そしてダウンロードする物の“過激さ”はマシマシとなったが……
“もやもや”は晴れない。
そしてついに……カーテンの向こうの窓が結露でビシャビシャになった朝……
私はマッチングアプリをダウンロードした。
それから約1時間後、
身だしなみを整えながら勤務先へ電話を入れる。
「小1の息子が“熱発”した」と
それからの私は久しぶりの高揚感をじわじわと味わいながら待ち合わせ場所へと向かう。
今度こそ!!
“スマートな男性”と目的を達せんが為に!!
おしまい
今週もまた酷くて申し訳ございません<m(__)m>
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