走り続けるパスワード
昔 好きだったミュージシャンが
最近 新しいCDを出していた
懐かしさと 変わらぬメロディーが胸を打ち
アルバム片手にブックレットを眺める
そこにあるのは
昔の面影もない しわくちゃの笑顔と
何の変哲もない シンプルな歌詞
いい歳して
当たり前の事しか言っていない彼等は
成長していないのか?
若いうちは 現代を必死に生きるしかない
だから 昔の俺なら
そう思うだろうな
だが
当たり前の事しか言っていない
その歌詞の行間には
当たり前じゃない
彼等だけの人生が立ちのぼっていた
激しいビートの 熱に煽られた
陽炎みたいに 立ちのぼるんだ
俺も 歳を重ねちまったけれど
今 彼等だけの人生が見える
走り続けた者だけが シンプルな言葉で人生を伝え
走り続けた者だけが 行間の人生を汲み取っていく
走り続けろ
言葉を綴り 魂を乗せ 今日を演じてみせろ
飾りを捨てて 迷いを背中に隠して
笑顔をつくり
信じた道を 真正面に構えてみせろ
走り続けるパスワードは
そこらじゅうに転がっている
研ぎ澄まされた 感覚の熱が
今日も何処かで 数多の陽炎を上げている
走り続けるパスワードを
もっと俺にくれ
走り続けるパスワードを
若いあいつらにもくれてやる