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一つ一つをかなり短く切ってあります。
神などろくなもんじゃない。つねづねそう思う。
親はよく私に説いた。神はいつもお前を見ている。決して神を信ずる心を捨ててはいけないと。
まだ純粋だった私は乾いた海綿が水をよく吸うようにその教えを吸い込んで今まで生きた。信心深い母と、呪術師に成りそこねた法外な呪い屋の父。二人のおもちゃであった私は、朝には母の説教、夜には父の実験台としてよくよく活用されていた。
もちろんそんな家の近所に住まうものなどおらず、近所に比較対象などいなかったからそれが当然だと思って生きてきた。
ある時が転機だった。
いつものように父が怪しい紋様を私に描き、その紋様が緑と紫の混じった色で光る。そこまでは日常と何ら変わりなかった。違ったのは、その後の父の様子。父は突如床に伏し、おおよそ人のものとは思えない声で呻き出した。それに怖気づいた私が遠ざかろうとすると、その細腕が剛力で私を引き寄せ、その薄汚れた歯で私の腹を噛みちぎった。痛いだろうな、と思った。実際痛そうだったが私には呪いによる痛覚への刺激はもたらされない。もう慣れてしまったのだ。尚も食い千切られる腹を眺めていると、意識は次第に薄れ、ある時を境に暗転した。